映画『ベルセルク』感想:「面白かった!」を前提に不満点列挙

2月4日から上映が始まった映画『ベルセルク 黄金時代篇I 覇王の卵』(←長いw)を観てまいりました。本当は来週あたりに観る予定でしたが、どうせなら早いほうが良いだろうということで、新宿バルトナイン22時35分の回に。終映時間が深夜ということもあり、観客は自分を含めて20人もいないくらいでしたかね。ゆったり映画観たいときは平日昼と深夜帯はマジ狙い目。

肝心の映画の内容はというと、良いところと悪いところが非常にハッキリしていて、その辺割り切って観れればかなり満足のいく出来だったと思います。合戦シーンの物量感、アクションシーンの見応え、ストーリー、音楽、どれをとってもゴージャスに作られていました。原作のストーリーをわりと丁寧に踏襲してくれるので、原作未読の人でも楽しめると思います。面白い原作をわりと忠実に映像化しているので、当たり前のように面白いです。興味がある人はじゃんじゃん観にいくと良いと思います。儲かったお金で続編にもっとお金がかけられるようになるし、此度の三部作の続きも映像化されるようになるかもしれないですしね!
そんなわけで、「全体としては当たり前のように面白かった」という前提の上で、次回以降の改善を願い、ハッキリ「良くなかった」と感じた点について書きたいと思います。そんなわけで、まだ映画を未視聴でこれから観にいく予定の方で、視聴に向けてのテンションを削がれたくない!という方は、申し訳ないですけど、とっとと本編を観てからまた来てください><
  
今作の特徴として登場人物の甲冑などが積極的にCGで描かれていることが挙げられます。作画とCGのミックスがそこかしこで行われていて、わりと独特な雰囲気に。合戦シーンでは甲冑だけでなく、モブ・メインキャラ全部がCGで描かれ、物凄い数のキャラがグリグリ動いていて迫力がありました。矢や投石が画面せましと飛びまくってたのも臨場感ありましたね。ただ、CGで描かれた人物はメインキャラであっても、アップで映されるとわりとバリバリ違和感を感じました。モブに至っては顔に全く生気がなく、もうちょっとだけ頑張れなかったのだろうかと思うこともしばしば。…まあ、難しかったのでしょうが。グリグリ動かせるのが利点というのは分かるので、そこは一長一短なのでしょう。
一長一短なのだと割り切れば、アクションシーンはそういうものとして楽しめるんですが、どうしても気に食わないのが、さりげない立ち絵や、作画で描いてもそんなに大変そうではないシーンでいちいちCGのモデリングを使い回していること。テレビアニメでも『ストライクウィッチーズ』や『ラストエグザイル 銀翼のファム』なんかでそうした表現を見かけましたが、あれは本当に苦手。キャラの質感がコロコロ変わるので気が散ってしかたがないです。一つ一つのモデリングの質がもっとずっと向上すれば違ってくるのでしょうが、少なくとも現状でそうしたCGの使い方で成功してるのは超限られた作品だけです(『タイバニ』とか)。こうした演出が違和感なく見れるようになるにはまだまだ技術的な問題があるのでしょうね。お金をかけまくったり、図抜けて優秀なスタジオが手がけたりすれば現在でも見れるレベルで作れてますけど・・・。
ストーリー的な部分での不満はほとんどありませんでした。ひとつだけ言うと、尺の問題もあったのでしょうが、『黄金時代編』の前に、「黄金時代編後のガッツ」の様子を入れて欲しかったな、という所。原作はガッツがグリフィスと決別して「黒い剣士」となる未来が事前に描写されていたからこそ、期待を膨らませながら読めたので。尺があと20分…いや、10分でもあれば……!しかし、描かずにいこうというのもひとつの決断ですからね…。個人的にはあったほうが、もっと早期に映画版ガッツに感情移入できたと思ったというだけです。
散々不満点を列挙してしまいましたので、ここら辺で良かった点も書かなきゃ。えっと、音楽が凄く良かったですね、やはり。最初に平沢進の楽曲に合わせたOP映像が流れるんですが、これがめちゃくちゃ格好良かった。本編のBGMは鷺巣詩郎が作曲。鷺巣さんの曲はエヴァ新劇場版のBGMを彷彿とさせるスケールの大きなもので、ベルセルクの世界観にかなりマッチしてました。本編では二、三ヶ所、音楽との相乗効果でものすごく盛り上がりを感じましたね。その一つが一番最後のクライマックス。…これについては映画の演出についてネタバレになる部分があるので後述。
さて、改めて良かった点も挙げました、そろそろ一番悪かった点も書いてしまいましょう。悪かった…というか最低!というか…、久々に映画を観ていて頭に来ました。ラストシーンはまずまず納得の行く内容で(本当は納得行かない部分もあるんですが、ネタバレを含むので後述)、エンドクレジットでは本編に引き続き鷺巣さんによる早大な楽曲が流れます。なかなか良くできた本編に、鷺巣さんの楽曲が乗ったエンディングで私的には結構な満足感に浸っていたのです。ところが!なんとなんと、スタッフロール後にエンドクレジットが一旦リセットされ、突如AIさんのエンディングテーマに合わせて延々流されるTwitterアカウント名。「なんのクレジットだよこれ」状態。どうやら事前の企画でTwitterアカウントが募集されたらしいですが、申し訳ないけど企画した人の頭は相当残念。映画の余韻がぶち壊しです。猛省してくださいマジで。

本編の最後に公式サイトで実施中の「鷹の団」キャンペーン上位者のツイッターアカウント名が掲載されます。
AIさんの映画エンディングテーマ曲・訳4分とともに流れますので、お楽しみください!

NEWS - 映画『ベルセルク 黄金時代篇Ⅰ 覇王の卵』2012年2月4日ロードショー(c):2011 三浦建太郎(スタジオ我画)・白泉社/BERSERK FILM PARTNERS

「タイアップで宣伝用にAIの起用が決まったけど、本編、エンドクレジット共に使う場面が無い!どうしよう><→そうだ!Twitter企画と連動させて無理矢理…」って流れでしょこれ絶対。あまりに酷い。そんなに使いたければCMでだけ流せば良いじゃないですか。それか開き直って『ゲド戦記』の「テルーの歌」みたく本編でキャスカにでも歌わせればいいじゃん。いや、本編に無理矢理入れなかったってことはですよ、音楽は平沢&鷺巣で世界観の統一を図ろうとしたってことじゃないですか。だったらなぜ無理やりエンディングで使おうとしたのか。いや、AIさんは別に好きでも嫌いでもないですし、エンディングで流れたAIさんの曲自体、ベルセルクで流れてもそんなに違和感がないものだったと思いますよ。だからこそ、なんであんなこすいやり方で無理やりエンドロールにぶち込んだのか、納得できないのです。まあ、大人の事情なんでしょうね。ホント、なんだかなー。
 
そんなわけで後味が悪かったんですが、全体としてはわりと満足でした。とりあえず黄金時代編として三作が作られる予定ですが、この調子で次作も観にいきたいと思います。願わくば次回以降はわけのわからないエンドクレジットはやめてもらいたいです。マジで。
以下、ちょっとだけネタバレ感想。
 
 
今作のクライマックスは自作への「繋ぎ」も兼ねてるんですが、単体の「映画」のクライマックスとして十分な盛り上がりだったのですよ。それだけに、最後の最後に「シャキーン!」みたいな効果音と共にグリフィス、ガッツ、キャスカの顔が画面分割でカットイン→次回予告、という流れには編集した人のセンスを疑いました。いや、一発ギャグとしては面白かったですが。それまでは「映画」を観てる気分だったのに、突然テレビ的な演出来ちゃった!みたいな。演出意図としては「ラストの一番格好良い瞬間」「自作への重要な引き」だったと思いますので、そんな重要なシーンで声をあげて吹き出してしまったことは、近くに座ってた人たちに申し訳ないことをしたと反省してますん><
・・・いや、だって笑っちゃうでしょそこ。シャキーン!ですよ。その後の鷺巣さんのエンディング曲も壮大で、映画の締めくくりに相応しいものに仕上がっているのに、シャキーン!とEDの前にバタバタと慌ただしい予告編を入れてしまうし。予告はクレジットの後に流せば良かったんじゃないかと思わずにはいられません。シャキーン!の直前まではストーリー的なクライマックス感もあって、BGMと合わさってかなりのものだったのに…。そんなわけで、せっかく内容は及第点だったのに、「シャキーン!」「予告編バタバタ」「Twitter連動企画(・ω<)テヘペロ」の三連コンボでなんとも言えない後味でした。いや、シャキーン!は「強いられているんだ!」的に笑えたからまだ良かったんですけどね。
 
  
追記:2章を観てきたので感想書きました。
映画『ベルセルク』2章感想:一番の不満点が解消されてたしとても楽しめた! - さめたパスタとぬるいコーラ