Hatena::ブログ(Diary)

さめたパスタとぬるいコーラ

2016-07-29

『シン・ゴジラ』ネタバレ感想 まさかの超高濃度庵野秀明

| 11:53 | 『シン・ゴジラ』ネタバレ感想 まさかの超高濃度庵野秀明を含むブックマーク

TOHOシネマズ新宿にて、7月29日午前1時上映の『シン・ゴジラ』を観てきました。

f:id:samepa:20160729005246j:image:w360

ロビーにスタッフサイン入りポスターが。左下にお馴染みの庵野監督サイン

まずネタバレを書くと、本作は映像の編集があまりにも庵野印でした。これが最大のネタバレと言っても過言ではないと思う。確かにゴジラ自体の魅力や怪獣対策に当たる人々のドラマも抜群に良かったですが、それよりもまず編集術にびっくりします。映像が常に異様なハイテンポでキレッキレです。なぜこれがネタバレかというと、鑑賞時の感触が通常の劇映画とは別ジャンルに分けてしまいたいほど異なるからです。ゴジラシリーズという大舞台にも関わらず、反則スレスレの魔球を投げている。キャスト陣が様々なインタビューで証言している通り、本作では登場人物たちが異様なまでの早口で喋りまくります。現実の官僚たちの早口な喋り方を再現する意味合いもありますが、これがハイテンポなカットの切り替わりに乗って、そのまま作品のテンションに直結していきます。開始後すぐに連想したのは、庵野監督の初実写長編作品『ラブ&ポップ』でした。

D

『ラブ&ポップ』では撮影に家庭用のコンパクトなビデオカメラを使用することで、「着替えをする女子高生の一人称視点」「電子レンジに置かれた皿の視点」といった珍しい画面が多用され、編集もかなりのハイテンポでした。『シン・ゴジラ』でも「海難救助隊員の視点」「会議室のキャスト付きの椅子視点」等々、奇抜なアングルが多発します。このスタイルでゴジラ映画をやるということがまず衝撃でした。

【7月31日追記】 7月27日発売の「特撮秘宝vol.4」に掲載された編集・VFXスーパーバイザー担当の佐藤敦己さんのインタビューによると、『シン・ゴジラ』では全編分のプリヴィズが制作されていたとのことです。プリヴィズとはCGで組んだセットをバーチャルカメラで撮影した映像とかで作った仮映像のことで、それを元に本番の撮影がされていったそうです。『シン・ゴジラ』の映像の切れ味は間違いなくこの工程があったからですね。ちなみにプリヴィズの制作に入る前には脚本準備稿を元にプリレコ(声優さんに庵野さんの望むスピードでセリフを読んでもらう)をして、庵野さんと佐藤さんの2人で、劇場アニメでよく作られるライカリール的な“プリヴィズの準備稿”を作ったとのこと(シーン番号とト書きだけがあるものだったらしい)。 追記ここまで

D

参考までに『アイアンマン3』のプリヴィズ。プリヴィズは「アニマティック (Animatic) 」などとも呼ばれる

 

また、庵野監督といえば熱烈な岡本喜八作品のファンとして知られています。例えば庵野監督はこちらの岡本監督との対談で、

テンポは岡本さんの影響を直撃してますね。あれこそアニメに向いてると思うんですけどね、あのテンポ。カットを割る時の面白さです。カットの内容じゃなくて、カットが切り替わる瞬間の快感というのが、岡本さんの写真にはすごくあると思うんです

庵野秀明監督と岡本喜八監督の貴重な対談 - 1年で365本ひたすら映画を観まくる日記

と明言しています。『シン・ゴジラ』を鑑賞する前に予習として岡本監督の『日本のいちばん長い日*1と『激動の昭和史 沖縄決戦』を観ましたが、特に『日本のいちばん長い日』は『シン・ゴジラ』が気に入った人は関連作として押さえて損は無いと思います*2。同作ではポツダム宣言が受諾される1945年8月14日〜15日にかけての天皇政治家、軍関係者、放送局職員の緊迫したやりとりがドキュメンタリー風に描かれますが、カット割りのテンポに限らず、『シン・ゴジラ』や『エヴァ』でも見られる会議シーンを山場とする庵野演出のルーツが感じられます。また、『シン・ゴジラ』のスタッフロール(と以下のツイート)を見て驚いたのですが、『シン・ゴジラ』に出てくる、『劇場版パトレイバー』の帆場暎一的な役回りのキャラクターとして、岡本喜八監督が写真出演していたようです。完全に影の主役だこれ(笑)。

シン・ゴジラ』は単体で観て面白い傑作ですが、あえて関連作として『ラブ&ポップ』『日本のいちばん長い日』をオススメしたいですね。もう1作加えるなら1954年公開の初代『ゴジラ』しょうか*3

とにかく、『シン・エヴァンゲリオン』を後に回してまで作られただけある作品で本当に良かった。冒頭のゴジラが予想外な可愛さでびっくりしたので、今週中にあと3回は観にいきたいですね。

*12015年に製作された映画ではなく、1967年版です。念のため。

*2:【7月31日追記】 「特撮秘宝vol.4」に掲載された准監督・特技統括を担当した尾上克郎さんへのインタビューで、「庵野監督は岡本喜八監督が好きということですが、影響があると思いますか?」との質問に対し「少なくともこの映画は岡本監督の『日本のいちばん長い日』と『沖縄決戦』の雰囲気を目指すと言ってましたから、少なからず受けてるんじゃないかな」という逸話が明かされていました。試験のヤマ当たった気分です(笑)。

*3:7月中は予習として国内で製作されたゴジラ映画全28作品、ハリウッドで製作された1998・2014年版の『GODZILLA』、岡本喜八監督の『日本のいちばん長い日』『激動の昭和史 沖縄決戦』、庵野監督の実写長編作品『ラブ&ポップ』『式日』『キューティーハニー』を観ました。逆にこれを観てないのは勿体無い!という作品がありましたらアドバイスほしいですね。本当は実相寺作品とかも観たかったんですが、ちょっとそこまで手が回りませんでした……。

佐藤佐藤 2016/07/29 12:14 日本のいちばん長い日 は、昭和版の方ですよね?昨年上映された方では無く。名称が決まってないから混乱しました。笑

samepasamepa 2016/07/29 12:20 ですです。いちおう脚注にて追記しておきました!

BigHopeClasicBigHopeClasic 2016/07/30 08:56 個人的にはこれを機会に84ゴジラがもっと見られたらなあと思っています。テーマ的にはかなり共通のところもありますし。

みやびのみやびの 2016/07/30 22:55 失礼します。
今日シン・ゴジラを見てきましたが、偶然にもその数日前に「日本のいちばん長い日」をみていました。NHKのBSでやっていたのですね。何の気もなしに見始めたのですが、あのスピーディなカットやテンポ、玉音放送の録音と飛行基地からの特攻機の出撃を見事に対比させるなど、とにかく衝撃的で三時間弱みいっていました。

この時点ではもちろん。シン・ゴジラを見ているときも岡本監督との関連性にはきづかなかったのですが、
キャストロールで「岡本喜八(写真)」の一行を見たとき、すべての線がつながって、そういうことかと思わず膝を叩きました。
とにかく圧倒されました、同じ一週間でこんな思いを二度もできるなんて、ありがたいことでした。