ゾンビ、カンフー、ロックンロール このページをアンテナに追加

2010-08-09

ジャッキー・バック・トウ・オールド・スクールベスト・キッドジャッキー・バック・トウ・オールド・スクール「ベスト・キッド」を含むブックマーク

ベスト・キッド」鑑賞。

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現在、一般的に“カンフー”というと中国拳法の総称として使われている事がほとんどだろう。だが、本来は練習だとか訓練の積み重ねという意味だ。「バーチャファイター」のおだんごヘアのパイに敗北すると「あたなには功夫が足りないわ!」と言われる。これはフォースにおけるミディクロリアン的な“カンフー”の不足を指摘しているワケじゃなくて、修行が足りてないという意味だ。

ブルース・リーが「燃えよドラゴン」劇中で弟子に稽古をつけるシーンでの名言「考えるな!感じろ!」(Don't think ! Feeeeel!!)も「ロスト・インタビュー」などの『水になれ』発言と合わせて、戦いの場におけるインプロビゼーションの推奨のように思われるが、実際は『パンチを撃つ!』と考える頃にはパンチが自然と出ているようになるまで修行しろ!という意味だ。

ベスト・キッドオリジナル高校生ダニエルが転校した先でカラテ教室コブラ会”メンバーによる執拗イジメを受ける。仕返しにイタズラを敢行するもつかまって半殺しの目に会いかけ、アパート管理人の老人ミヤギに助けられる。いきがかり上、カラテ大会コブラ会と対決をする事になったダニエルはミヤギの元で修行と称し、車のワックスがけやペンキ塗りなどさせられる。しかし実はその作業こそがカラテの重要な動きの反復練習になっていた。っというのが大筋。

リメイク版の物語もほとんど一緒。高校生ダニエル小学6年生の黒人少年ドレに、転校先が中国に、ミヤギさんは中国人のハンさんに、そして習うのがカンフーになっているのが違い。

この違いがかなり素晴らしい。

師匠の役どころだが、ミヤギさんはミステリアスで素性のよく解らない人物として描かれていた。アパート管理人をしつつ、日本家屋の豪邸に車を何台も持っててカラテの達人。超然的な人物像はキャラクター面白さこそあれ、安定しきっていて広がりがあまり無い。

一方ジャッキー演じるハンさんはカンフーの達人なのだが、どうやら街で一番のカンフー道場の師匠確執がある。また、小学生くらいの子供には何か思うところがあるらしい。そういった謎が物語の進行につれ、つまびらかにされていくのだが、それが“修行”の進行によって明らかになっていく。

拳法の修行なので、進んでいくと技が増えて強くなっていく。ドレがお調子者で自信過剰に大口をたたくのは、実のところ不安を隠すためのふるまいだったのだが、修行により強くなる事で真の自信を得ていく。つまり精神的な成長を“修行”で視覚化しているのだ。また、弟子ドレの成長に引っ張られるように師匠のハンさんも成長し、その相互作用で2人が絆を深めていく様子は感動的である。そして、ドレの成長は過去ジャッキー作品「酔拳」や「笑拳」で成長していったジャッキー自身と重なっていく。数十年かけてジャッキーの成長を見守ってきた我々にとって、師匠として少年を鍛えていく姿は非常に感慨深い。

また、日常の作業から拳法の型を覚えていくという設定はオリジナルでもあったが、カンフー場合少林寺三十六房」や「少林寺列伝」などで飯炊きや水汲みから基礎を築いていくアニミズムっぽい修行に通じ、ニヤリとさせられる。

クライマックスカンフー大会が凄まじい。一応ポイント制なのだがフルコンタクトで小学生同士が拳やハイキックをバチバチ当てて戦っていく様子は、唐突に命の値段がダンピングされたようで驚喜してしまう。またライバル役の少年の面構えが心底憎らしくて素晴らしい。

全体的な印象としては常套的な展開のスポ根モノなのだが、カンフーと奇天烈な修行の相性の良さ、そしてその師匠ジャッキー・チェンである事。それらをしっかりしたキャラクター作りと物語の展開で見せている事などで、オリジナルを超えたリメイクになっている。

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