『西田幾多郎−本当の日本はこれからと存じます−』ほか

『西田幾多郎−本当の日本はこれからと存じます−』大橋良介/ミネルヴァ書房/3360円)
書簡・日記・短歌から浮かび上がる内面史と日本近代の激烈な現実。
 
冬人庵書房―山岳書蒐集家の60年

冬人庵書房―山岳書蒐集家の60年

『冬人庵書房−山岳書蒐集家の60年−』(野口冬人/山と溪谷社/2100円)
電子化が進む現代の図書業界で、山岳書蒐集にかけた濃密な60年を振り返る。これだけ本が売れない時代、紙媒体より電子書籍と言われる時代に、山の本への愛着が強く、「偏執狂的」な書籍蒐集愛好者がその半生を振り返った読みもの。
 
唯幻論大全

唯幻論大全

『唯幻論大全−岸田精神分析40年の集大成−』岸田秀/飛鳥新社/2940円)
"私"、国家、歴史、神、セックス……全ては幻想である。「人間は本能が壊れた生命体である」たった一つの原理から、人間のすべての文化と愚行を説明し尽くした。戦後最大の思想が、いま再び、閉塞した世界を切り開く。
 
兵器と戦術の日本史

兵器と戦術の日本史

『兵器と戦術の日本史』(金子常規/原書房/1680円)
古代から現代に至る2000年の歴史に重要な役割を演じた代表的戦闘を、殺傷力・移動力・防護力の三要素に分類してとらえた兵器の戦闘力と、それを運用する戦術・戦略の観点から分析し、従来の日本史にいままでにない新たな照明を投げかける好著。
 
中央アジア (朝倉世界地理講座―大地と人間の物語)

中央アジア (朝倉世界地理講座―大地と人間の物語)

『朝倉世界地理講座−大地と人間の物語−5 中央アジア』立川武蔵/監修 安田喜憲/監修/朝倉書店/17850円)
中央アジア南コーカサスの今を,新疆とアフガニスタンも含め,多角的・総体的に捉え理解する。
 

『イスラムとは何か。』ほか

ペンブックス20 イスラムとは何か。 (Pen BOOKS)

ペンブックス20 イスラムとは何か。 (Pen BOOKS)

『イスラムとは何か。』(ペン編集部/編/阪急コミュニケーションズ/1680円)
いまから約1400年前、一介の商人を預言者として突如勃興したイスラムという教え。単なる宗教としての枠を超え、イスラム諸国においては、国家や社会のあり方をも規定する、物差しのような存在だ。しかしながら、おそらく大半の日本人は、「メッカ」や「コーラン」など断片的な知識しかもち合わせていないのではないか。そして、未知ゆえの恐怖感が、イスラムを見つめるわれわれの目を曇らせているのではないか。土地の大半を砂漠に覆われたアラビア半島で育まれた宗教が、洋の東西を大きく超えて世界規模にまで広がった背景には、何が隠されているのだろうか。そこには、初めて目にするであろう、新鮮な驚きと発見があふれている。どこか不思議な魅力を湛えた、イスラムの真実を知る旅へ、いざ。
 
幻想の敬語論―進歩史観的敬語史に関する批判的研究

幻想の敬語論―進歩史観的敬語史に関する批判的研究

『幻想の敬語論−進歩史観的敬語史に関する批判的研究−』(福島直恭/笠間書院/2310円)
「敬語」とはいかなるものか。ほんとうに存在するのか。当たり前とされている敬語システムは、日本文化の優越性を唱えた近代の想像上の産物にすぎない。システムの存在を前提とした敬語史研究の問題点を明らかにして、言語の歴史的研究の、学術的・社会的意義を問いかける書。
 
巡礼ツーリズムの民族誌―消費される宗教経験

巡礼ツーリズムの民族誌―消費される宗教経験

『巡礼ツーリズムの民族誌−消費される宗教経験−』(門田岳久/森話社/5880円)
パッケージツアーに取り込まれ、商品化された聖地巡礼は、宗教の衰退した姿でしかないのか? 四国遍路の巡礼バスツアーへの参与観察から、「現代の/我々の」宗教的営みが持つ可能性を探る。
 
世界不思議大全〈1〉

世界不思議大全〈1〉

『世界不思議大全 1巻 増補版』(泉保也/学研パブリッシング/3990円)
古代遺跡、超古代文明、、オーパーツ、宇宙考古学、神話・伝説、神秘学、魔術、……世にあまたある謎と不思議を網羅。雑誌ムーで好評連載中の「世界不思議大全」が、連載200回を記念して書籍化。これはまさに不思議世界の百科全書である。
 
立花隆の書棚

立花隆の書棚

『立花隆の書棚』立花隆/中央公論新社/3150円)
知の巨人、立花隆驚異の蔵書を書棚ごと撮影して紹介。どんな本がどのように並べられているのか。蔵書にまつわる興味深い話も満載。
 

『大崩壊「邪馬台国畿内説」』ほか

『大崩壊「邪馬台国畿内説」』安本美典/勉誠出版/2940円)
卑弥呼が魏からおくられたとされるホケノ山古墳出土の「画文帯神獣鏡」は、中国北方の魏系の鏡ではない。土器には、西暦年数に換算できるような確実な年代的指標はない。 数々の科学的・歴史的データを駆使し、「畿内説」の論拠を徹底的に検証する。
 
レニングラード封鎖: 飢餓と非情の都市1941-44

レニングラード封鎖: 飢餓と非情の都市1941-44

『レニングラード封鎖』(マイケル・ジョーンズ/白水社/3990円)
第二次世界大戦中、ヒトラーのドイツ軍に九〇〇日間包囲攻撃されたレニングラードでは、一〇〇万人の市民が犠牲になった。空襲や疫病による死者も多いが、餓死者は八〇万人と推定されている。なぜ大都市は包囲されたのか? なぜ食糧はたちまち底をついたのか? 包囲が始まるのは、ドイツ侵攻開始から三ヵ月後の一九四一年九月上旬。本書は、攻撃側のマンシュタインらドイツ軍、防衛側のスターリンやジダーノフらソヴィエト当局、そして数多くの一般市民の視点から、時系列に沿って展開する。とりわけ市内の状況が最も絶望的だった、四一年十二月中旬から四二年二月中旬までの三ヵ月間について詳述される。その間、パンの配給は滞り、肉やその他の食品は闇市場でしか手に入らなかった。市民は飢え、壁紙の裏の膠を煮出して飲み、革ベルトを小さく切って煮て食べた。電気、水道、暖房はすでに停まっていた。市内で大量の餓死が始まる。さらに疫病が蔓延し、墓地に運びきれない死体があふれる。人心の荒廃と飢餓はカニバリズムを生み、凄惨な証言に言葉を失う。包囲下の極限状態で生と死を分けたのは何か? それは、生きる希望を持ち続けること、守るべき者(家族、子供、友人)をもっていたことだったと、新史料や生存者たちへの取材によって明らかとなる。
 
邪悪な植物―リンカーンの母殺し!植物のさまざまな蛮行

邪悪な植物―リンカーンの母殺し!植物のさまざまな蛮行

『邪惡な植物』(エイミー・スチュワート/朝日出版社/1890円)
ネズミを丸呑み、人まで殺し、戦争さえも引き起こす。本当は怖い“邪悪な植物”を、驚きの事件や隠れた史実、美しいイラストとともに解説。植物界の罪な側面に震える一冊! 毒殺や矢毒に使われてきた草木や、裁判に使われてきた猛毒の実。ソクラテスを殺したドクニンジン、魔女狩りを引き起こした麦角。うっかりバーベキューの串に使っただけで死者を出した枝もある。ペットにとってはキケンなもの、とにかく発火しやすいもの、なかにはマンゴーやチューリップ、トウモロコシなど、一見「どこが邪悪なの?」というものも。園芸家・ガーデニング好きも必見! さあ、あなたはどの植物がいちばん怖い?

 

時刻表でたどる新幹線発達史 (キャンブックス)

時刻表でたどる新幹線発達史 (キャンブックス)

『時刻表でたどる新幹線発達史』(寺本光照/JTBパブリッシング/1995円)
新幹線は青森から鹿児島までがつながり、名実ともに日本の大動脈として機能している。しかしここに至るまではそれぞれに歴史があり、もちろん順風満帆ではなかった。それらひとつひとつの歴史のトピックを時刻表という最大の資料とともに検証しながら紐解いていく。また本書では新大阪駅の建設過程や新幹線唯一の未成線となってしまった成田新幹線の話題、最近の新幹線における並行在来線の処遇など、各種のコラムも織り交ぜながら展開していく。本書の著者・寺本光照氏は弊社キャンブックスでは初の単独著書となり、本人のこだわりや豊富な知識、資料に裏打ちされた正確な文章の展開など、個性を十二分に発揮してまとめあげている。
 
加賀乙彦 自伝

加賀乙彦 自伝

『加賀乙彦自伝』加賀乙彦/ホーム社/2100円)
小説家・精神科医の二つの人生を生きた、著者初の語り下ろし自伝。2・26事件の記憶、陸軍幼年学校時代の思い出から大河小説『永遠の都』『雲の都』の完結まで、80余年に及ぶ自らの人生を知られざる様々なエピソードも交えて生き生きと描く、語り下ろし自伝。
 

『マンホールの博物誌−水と道路と人々との交差点−』ほか

マンホールの博物誌

マンホールの博物誌

『マンホールの博物誌−水と道路と人々との交差点−』(G&U技術研究センター/編著 中川幸男/監修/ダイヤモンド社/2940円)
都市の地下空間と地上を結ぶトビラ=マンホールの蓋。その過去、現在、未来を「歴史」「文化」「技術」の視点から解き明かす。
 
岩波ホールと〈映画の仲間〉

岩波ホールと〈映画の仲間〉

『岩波ホールと〈映画の仲間〉』高野悦子/岩波書店/2520円)
1968年、神保町の一角に生まれた小さなホール。「良いものはきっと受け入れられる」との信念のもとに、興行という立場から映画芸術を育ててきた著者。こぼれ話とともに、映画の作り手たちとの温かい交遊や、ホール裏でのスタッフの奮闘ぶり、女性映画人たちに力を与える活動の数々を、万感の思いをこめて綴る。
 『小津も絹代も寅さんも−城戸四郎のキネマの天地−』升本喜年/新潮社/2415円)
「小津ちゃん、君の映画は、 どうして客が来ないんだろうねえ」。「活動写真は薄汚い。大松竹の名に瑕がつく」。“演劇の松竹”で映画にかけた一人の若者は田中絹代で初のトーキー『マダムと女房』を生んだ。地味な作風の小津安二郎を信じ、『愛染かつら』も寅さんも大ヒットさせた。泥まみれとなって日本映画を築き上げた松竹の大プロデューサー城戸四郎を描く、波乱の映画ビジネス戦記。
 
香の文化史―日本における沈香需要の歴史 (生活文化史選書)

香の文化史―日本における沈香需要の歴史 (生活文化史選書)

『香の文化史−日本における沈香需要の歴史−』(松原睦/雄山閣/2940円)
古くから時の権力者に求められてきた沈香。現代もなお、類稀なる香として人々を魅了しつづける沈香の歴史を分かりやすく紹介する。
 
武士道とキリスト教 (新潮新書)

武士道とキリスト教 (新潮新書)

『武士道とキリスト教』(笹森建美/新潮社/714円)
牧師にして日本屈指の剣術家が説く! 武士の切腹は宣教師の殉教に通じる。「義」は「愛」に呼応する―人の生き死にを真摯に問う二つの「道」を極めて得た、いま日本人に必要な智恵。
 

『プリニウスの博物誌 1(第1巻〜第6巻) 縮刷版』ほか

プリニウスの博物誌〈第1巻~第6巻〉

プリニウスの博物誌〈第1巻~第6巻〉

『プリニウスの博物誌 1(第1巻〜第6巻) 縮刷版』プリニウス/雄山閣/6510円)
「第1巻」―巻頭に、のちにローマ皇帝となったティトゥスに献じた序文、及び2巻以降の内容の目録と典拠作家の一覧。「第2巻」―宇宙の構成、諸惑星の運動、太陽、月、彗星、風、雷、地球、地震、島、湖、海、火山など、当時の学問の総まとめ。蝕による地球・月・太陽の大きさとその関係、惑星の運動、潮汐現象などの記述は相当水準が高い。また気象や天体の変化をどう占ったかなど興味深い知識に満ちている。「第3〜6巻」―西はスペインから地中海周辺、北はイギリス、南はナイル上流、東は黒海カスピ海周辺、中央アジア、アラビア、ペルシャ、インド、中国に及ぶ広範囲な地域の、都市、種族、山、河、海、湖沼、島などについての詳細な地誌。特にローマの支配圏についての記述は精緻である。日本翻訳出版文化賞受賞作。
 
プリニウスの博物誌〈第7巻~第11巻〉

プリニウスの博物誌〈第7巻~第11巻〉

『プリニウスの博物誌 2(第7巻〜第11巻) 縮刷版』プリニウス/雄山閣/6510円)
「第7巻」―重要な手紙4通や同時に口述したカエサルの精神力、ポンペイウスやカトーの業績、不幸な晩年を送ったアウグストゥスの運命など、数々のエピソードをまじえながら“人間”そのものを探求した巻。出産、天才、偉人、運命、寿命、死について、また文字や武器、時計の発達、ひげそりの風習などの克明な記述から当時の生活が浮び上がってくる。「第8〜11巻」―陸棲動物、水棲動物、鳥類、昆虫、人間の体の構造と器官について詳細に記している、特に人間と関係の深いゾウ、ライオン、イルカ、イヌ、ミツバチなどの記述は微細で、当時の動物の扱い方、考え方がわかる。またガチョウの肝などのぜいたくな食物、カタツムリやウナギの養殖、染料をとるムラサキ貝、真珠とそれにまつわる話などは今日でも興味深い。日本翻訳出版文化賞受賞作。
 
写真集 アルメニア共和国の建築と風土;Out of the Frame

写真集 アルメニア共和国の建築と風土;Out of the Frame

『アルメニア共和国の建築と風土』(篠野志郎/写真・文/彩流社/2940円)
ロシアからペルシャ湾への南北の軸、アジアから地中海への東西の軸、「文明の十字路」に育まれたもう一つのキリスト教アルメニアに遺る中世のキリスト教建築に内包された時を越えて静まり返る信仰の空間を甦らせる。
 『磯崎新建築論集 1 散種されたモダニズム−「日本」という問題構制−』磯崎新/岩波書店/3780円)
日本の建築界はいかなる過程を経て、モダニズムを受容したのか。代表的な建築家たちの格闘の軌跡を分析することで、日本の近代建築の問題点を浮き上がらせるとともに、近代を相対化し、「日本的なもの」を乗り越える著者自身の建築に対する姿勢を明らかにする。21世紀の今日的視線から描き直す磯崎版「日本近代建築史」。
 
建築家、走る

建築家、走る

『建築家、走る』隈研吾/新潮社/1470円)
世界中から依頼が殺到する建築家、隈研吾。悩みつつも疾走する日々とは? 話題の歌舞伎座建て替えは、アメリカでの発見や東京での挫折、地方での本領発揮、怒濤のコンペ参加など紆余曲折を経ての集大成。ぐだぐだ悩みながら、ぐるぐる世界を回ってる――年始から6ヶ国を世界一周チケットで回り、地球のいたる所で打ち合わせを重ねる生活。自らを「競走馬」に喩え、挑戦し続ける建築家の生の姿がここにある。
 

『思い出テレビ60年−TV 60th Anniversary NHK−』ほか

ステラMOOK 思い出テレビ 60年

ステラMOOK 思い出テレビ 60年

『思い出テレビ60年−TV 60th Anniversary NHK−』(NHKサービスセンター/編/NHKサービスセンター/1400円)
2013年は、日本でテレビ放送が開始されてから60周年となる節目の年です。これを記念し、NHKの番組情報誌『ステラ』では、貴重な資料や放送博物館所蔵の図版や写真を掘り起こし永久保存版の1冊を発売いたします。大河ドラマ連続テレビ小説紅白歌合戦を中心に、NHKのテレビ番組60年分を紹介します。
 『思い出の省線電車−戦前から戦後の「省電」「国電」−』沢柳健一/交通新聞社/840円)
現在のJRの前身「国鉄」のさらに前の「鉄道省」が管理・運営していた「省電」。小学生だった昭和初期、池袋電車区を訪問したのを皮切りに電車への興味が深まっていく著者。鉄道の中でも「電車」に興味を持ち、鉄道ファンとして約80年、車両の研究・撮影を続けてきた。木製車ばかりだった電車に半鋼製の電車が登場したこと、戦争による物資不足による鉄道への影響、空襲による車両の罹災や燃料不足による運行本数の減少。そして戦後、連合軍専用車(白帯車)の登場により、その整備のために腕を競い合った各地の車両工場は、皮肉にも戦後の鉄道の発展に大きく貢献することとなる。現在、JR東海の「リニア・鉄道館」やJR東日本の「鉄道博物館」に展示されている車両の保存に関わった裏話や、「鉄道友の会」の母体となった「荻窪会」の設立秘話も紹介している。
 
職業,コピーライター。

職業,コピーライター。

『職業、コピーライター−広告とコピーをめぐる追憶 SINCE 1966〜1995−』(小野田隆雄/バジリコ/1890円)
「ゆれる、まなざし」 「夏ダカラ、コウナッタ。」 「恋は、遠い日の花火ではない。」 資生堂サントリーの広告を中心に数々の名コピーを世に送り出してきた宣伝文案制作者(コピーライター)が回想する広告とコピーの時代。
 
図説 世界史を変えた50の植物

図説 世界史を変えた50の植物

『図説世界史を変えた50の植物』(ビル・ロー/原書房/2940円)
植物の興味深い物語を美しい写真とともに紹介。人類の発展に大きく貢献し、生活様式に多大な影響を与えた植物と人間とのかかわりを幅広い視点からとらえる。
 
テレビという記憶: テレビ視聴の社会史

テレビという記憶: テレビ視聴の社会史

『テレビという記憶−テレビ視聴の社会史−』(萩原滋/編/新曜社/2730円)
放送のデジタル化の進展によって21世紀にはワンセグ放送やオンデマンド放送といった新たなサービスが本格的にスタートした。この他にも放送局は、さまざまな形で番組のインターネット配信の道を模索しているし、放送と通信の融合・連携が進んで放送事業者以外による新規の番組制作や配信サービスも実現している。多メディア・多チャンネル化の流れが加速して番組の伝送経路が複雑化するとともに視聴様式も多様化し、どこまでを「テレビを見る」という行為に含めてよいのか分かりにくい状況が出現しているのだが、テレビを通じて世代内、世代間で共有される社会情報が質量ともに減少し、これまでのように広範な集合的記憶が構築されにくくなっているのではなかろうか。 こうした問題意識に基づいて私たちは、慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所を母体に世代内・世代間での記憶の共有という視点を基軸としてテレビの社会的役割の変遷の様子を検討するための共同研究プロジェクトを2008年から継続してきた。本書は、その5年間にわたる研究成果を1冊にまとめたものである。
 

『孤独な群衆 上』ほか

孤独な群衆 上 (始まりの本)

孤独な群衆 上 (始まりの本)

『孤独な群衆 上』(デイヴィッド・リースマン/みすず書房/3360円)
個人と社会、時代との関わりを論じた不朽の名著、改訂訳版で登場。全2冊。上巻は第一部「性格」。初版(1950年)から20年後に書かれた新たな「まえがき」を付す。この本でとりあつかうのは、社会的性格と、ことなった地域、時代、集団にぞくする人間の社会的性格の相違についてである。われわれは、いったん社会のなかにできあがった異なった社会的性格が、その社会での労働、あそび、政治、そして育児法などのなかに展開してゆく仕方を考えてみたいと思う。そしてとりわけ、十九世紀のアメリカの基調をなしたひとつの社会的性格が、まったく別な社会的性格にだんだんと置きかえられてきている事情を、この本では問題にしてみたい。なぜ、こうした変化がおきたのか。どんなふうにこの変化はおきたのか。
 
孤独な群衆 下 (始まりの本)

孤独な群衆 下 (始まりの本)

『孤独な群衆 下』(デイヴィッド・リースマン/みすず書房/3360円)
個人が「群衆のなかの孤独」から脱する道筋を真摯に模索する。 不朽の名著、改訂訳版で登場。全2冊。下巻は第二部「政治」第三部「自律性」。ギトリン「解説」、加藤秀俊「『孤独な群衆』をめぐる半世紀」を付す。
 
中国絶望工場の若者たち 「ポスト女工哀史」世代の夢と現実

中国絶望工場の若者たち 「ポスト女工哀史」世代の夢と現実

『中国絶望工場の若者たち−「ポスト女工哀史」世代の夢と現実−』福島香織/PHP研究所/1470円)
いま、中国には1980年~90年代生まれの「第二代農民工」(新生代農民工、新世代農民工)と呼ばれる若者たちがいる。親が出稼ぎ農民として都市部に来た世代で、子供である彼らは都市に住みながら「農村戸籍」のため、差別と不遇をかこっている。その数、なんと約1億人。彼らの不満や鬱屈があるとき反日デモストライキに至ることは、2012年の反日暴動で証明された。中国ビジネスを行なう日本企業にとって、また体制崩壊の不安におびえる中国共産党にとって、いま「第二代農民工」とどう付き合うかは最大の問題である。著者はこれまで調査されなかった「第二代農民工」の現地ルポを敢行。工場で働く若い男女の「日系企業に対する愛と憎しみ」や「将来の夢」、「なぜ日系企業ではストライキが多いのか」を赤裸々に伝える。「絶望工場」とまで称される中国の生産現場では、どのような人生が繰り広げられているのか。その目でぜひ確かめていただきたい。
 
妖怪たちのラビリンス  西洋異界案内

妖怪たちのラビリンス 西洋異界案内

『妖怪たちのラビリンス−西洋異界案内−』(菊地章太/角川学芸出版/1785円)
妖精やドラキュラなど、ヨーロッパの「妖怪」たちはなぜ生まれたのか? 聖痕(スティグマ)などの怪異現象はなぜ起きるのか? 宗教観や人々の持つ深層心理などから様々な生(せい)を見つめる。価値ある写真も満載。
 
レディーの赤面―ヴィクトリア朝社会と化粧文化

レディーの赤面―ヴィクトリア朝社会と化粧文化

『レディーの赤面−ヴィクトリア朝社会と化粧文化−』(坂井妙子/勁草書房/3150円)
観相学の流行をバックに作り上げられたヴィクトリア朝の「理想の女性」像とは。文学作品、服飾、化粧品などの資料から描き出す1冊。