文学少女に送る「楽して書ける読書感想文」

昨年の隠れヒット記事に、アイヨシの「読書感想文で何を書くか?」があります。「読書感想文 書き方」などでググって来られた方も多いようで、意外とニーズがあることにびっくりしました。
アイヨシの記事は読書感想文論といいながらも実のところネット上の書評分類論と置き換えが可能な内容で非常に面白かったので、フジモリも顰に倣いフジモリなりの読書感想文論を書きたいと思います。

目的

本記事は、「いかに楽に読書感想文を書くか?」の方式論です。
もっとも、「読書感想文」という課題を一番手っ取り早くクリアするのは「ネット上からのコピペ」でしょう。しかし、これは「著作権侵害」という「やってはいけないこと」です。楽をするのがいけないのではなく、「法律を破ること」がいけないことです*1ので、この方法は除外します。
また、次に楽なのは「代筆」でしょう。実際当サイトの某氏は中学校時代に読書感想文の代筆で小銭を稼いでいましたが(笑)、ひとまずこの方法も省きます。確かに楽は出来ますが、バレる可能性が高いということと、代筆を依頼した人に「貸し」が出来てしまいますのでコストとベネフィットのバランスが悪いのであまりオススメはできません。
というわけで、当記事はだいたいのところ、
「読書感想文を書いている時間があったらもう一冊本を読みたいわ!まったくもう!」と考えている文学少女
向けにお送りしたいと思います。*2

なぜ読書感想文を書かされるのか?

それでは、まず始めに「なぜ読書感想文を書かされるのか?」を考えてみましょう。
提出相手(多くは担任の先生)の意図をつかむことにより、プレゼン相手のニーズに遡及できる文章が書けるからです。
フジモリは読書感想文の目的は大きく分けて二つだと思っています。*3
1.本を読むこと
2.伝えたいことをロジカルにまとめる能力を訓練すること
1の「本を読むこと」については、本読みには当たり前のことかもしれませんが、普段本を読まない人にとっては苦痛以外の何者でもありません。しかしながら自己申告で「読んだ」と言ってもそれが真実であるか当人以外判別できません。つまり、「読書感想文」が「本を読んだこと」の証明となるのです。したがって、読書感想文には「その本を本当に読んだ」という事柄をこれでもかと盛り込めば、まず第一段階はクリアです。
2の「伝えたいことをロジカルにまとめる能力を訓練すること」ですが、これはいわば「小論文」の練習のようなものです。本を読んで「面白かった」の5文字でまとめても良いのですが、読書感想文は「なぜ面白かったのか?」を「他人(この場合提出相手の先生)がわかるように」伝えるための訓練と置き換えても良いと思います。
あなたを知っている人なら「なぜあなたがその本を読んで面白かったのか?」を理解できるかもしれませんが、提出相手は赤の他人です。赤の他人が理解できるような文章で書くこと、これで第二段階もクリアです。

読書感想文の構成

「読書感想文に求められていること」を書くことで、必然的に書く内容も決まってきたと言えます。
先ほどの2点の目的を踏まえ、全体の構成をまとめてみます。
1.本との出会い
2.あらすじ
3.感想
4.なぜその「感想(感情)」を抱いたのか?
5.締めの文
ざっとこんな感じですかね。各項目の比率は課題となっている原稿用紙の枚数によりけりでしょうが、(1+2):(3+4)=4:6ぐらいが適当かもしれません。

あなたが本を読んだことを証明しよう

まずは、あなたがその本を読んだことを証明しましょう。不在証明ならぬ、本の有在証明ですね。
本を読んだ証明として、手っ取り早いのは以下の3つです。
1.なぜその本を読んだのか?(出逢ったきっかけ)
2.本のあらすじ(あなたの言葉で)
3.引用文(感想と結びつけて)
なぜあなたがその本を読んだのか。
これは他の人には書けない、立派な文章になります。タイトルが気に入ったから、売れてるから、表紙が小畑健だったからなど、理由は何でもかまいません。着飾る必要もなく、正直に書きましょう。
次に、本のあらすじです。
実はこれが一番難しいと思います。フジモリも書評の際にあらすじを書く場合がありますが、一番時間がかかる場合があります。Amazonなどで本の裏表紙をそのまま記載した文章もありますが、それでは「短く」「中途半端」です。
まあゼロから書いても良いですが、裏表紙記載のあらすじやwikipediaのあらすじに肉付けするのが楽だと思います。
この際注意するのは、後ほど書く「感想」に関連する場面やシーンを厚めに書くことです。
例えばシンデレラだったら、「シンデレラがいじめられているシーン」「魔女が変身させてくれるシーン」「舞踏会のシーン」「王子様が追いかけるシーン」「王子様と結ばれるシーン」「結婚式で継母たちが鳥に目をえぐられるシーン」など様々ありますが、あとで感想として言及するシーンを厚めに書くことにより、よりロジカルな構成と思わせることが出来ます。いわば「伏線」ですね。
さらに、印象に残った言葉やシーンを引用すれば完璧です。
引用については著作権法というものがありますので、

著作権法において正当な「引用」と認められるには、公正な慣行に従う必要がある。最高裁判所昭和55年3月28日判決[1]によると「引用とは、紹介、参照、論評その他の目的で著作物中に他人の著作物の原則として一部を採録すること」である。
一般に、適切な「引用」と認められるためには、
1. 文章の中で著作物を引用する必然性があること
2. 質的にも量的にも、引用先が「主」、引用部分が「従」の関係にあること。引用を独立してそれだけの作品として使用することはできない。
3. 本文と引用部分が明らかに区別できること。例『段落を変える』『かぎかっこを使用する』
4. 引用元が公表された著作物であること
5. 出所を明示すること(著作権法第48条)
が必要とされる。(wikipediaより)

とあるので、例えば

「『任務は遂行する』『部下も守る』「両方」やらなくっちゃあならないってのが「幹部」のつらいところだな」(荒木飛呂彦ジョジョの奇妙な冒険集英社53巻、p62より)

などのようにすれば良いと思います。引用する言葉が長ければ長いほど原稿用紙が埋まりますので、主従が逆転しない程度に目一杯引用しましょう。

(あなたの言葉で)感想を書こう

出会い、あらすじを書いた後は、本の感想です。「面白かった」と一言で終わらせないために、以下の事柄を掘り下げてみましょう。
1.感想・感情
2.なぜ、その感想を持ったか?
3.どのシーン(セリフ)が印象に残ったか?
まずは、この本の感想です。
まあ、読書感想文というぐらいですから感想がないと始まらないというのも事実です。
感想というのは「思ったこと、感じたこと」ですので、「その本を読んで湧き上がった感情」をそのまま書けばよいと思います。泣いた、笑った、感動した、グっときた、やれやれだぜ、勉強になった、などなど。いっそのこと、「面白くなかった」でも良いかもしれません。
ともあれ、大事なのは、「あなたがどう思ったのか」ではなく、「なぜそう思ったのか」です。
あなたがその感情を抱いたのには絶対に「理由」があるはずです。誰かが死ぬシーンでは近しい人の「死」を思い出したから、だとか、現況の困難を打破するための「勇気」をもらった、などなど。多くは自身の経験と照らし合わせて、その「感情」が抱いてるかと思いますし、「なぜその感情が湧いたかわからない」のであればそのまま書いても良いでしょう。「人の死に理由なく涙するのは人間の普遍的な感情であろうか」などと哲学的な内容に昇華できる可能性もあるからです。
さらに先ほどの「引用」の話を参考に、印象に残ったセリフやシーンを混ぜればリアリティがアップします。
これで原稿用紙のほとんどが埋まったかと思います。

締めの文

どーでもいいです。そりゃ、「今後の人生に活かしていきたいと思います」などと優等生回答を書けば満点でしょうけど、読書感想文を書くことが目的であればそこまでサービスする必要はありません。
それこそ、様々なネット書評の締めの一文を参考にしてください。
ちなみに、当サイトでは「オススメです」が最も多いかと思います(笑)。

終わりに

というわけで、アイヨシの記事とは違った観点から「読書感想文の書き方」について綴ってみました。
読書感想文なんてコンクールに応募するのでなければ基本的に苦行でしかないと思いますが、「本を読むことが苦行」ではなく、「何を書けば良いかわからないから苦行」という方には若干参考になったのではないかなぁ、と思います。ちなみにフジモリは昔、読書感想文で山本弘『盗賊たちの狂詩曲』を取り上げTRPGの良さについて滔滔と語りましたが今にして思えば痛痒い思い出です。うわーきーこーえーなーいー
とりあえず現在読書感想文で悩まれている方々は、後の黒歴史にならぬよう淡々とこなされるのが吉かもしれません。たくさんの本と出逢う、良い夏休みをお過ごしください。

*1:「大学生から小学生まで「ネットでコピペ病」蔓延」という記事がありましたが(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080720-00000001-jct-soci)、著作権の視点から書いた記事ではなかったのがちょっと不満でした。

*2:別に文系男子でもかまいませんが

*3:まあ、3つ目に「苦難・修行を与える」というネガティブな目的もあると思いますが、今回の記事では無視します。