これにて、幕引き! 有川浩『別冊図書館戦争II』

別冊 図書館戦争〈2〉

別冊 図書館戦争〈2〉

 『図書館戦争』の外伝的存在である『別冊図書館戦争』のIIが発売されました。
 Iは堂上と笠原のイチャイチャバカップルぶり満載の一冊でしたが、今回は大きく分けて3つの物語が書かれています。
 「もしもタイムマシンがあったら」は、緒方副隊長のお話。本編では暴走する玄田隊長を陰から支える良識派キャラでしたが、そんな彼の過去の苦いエピソードです。「いま明かされる緒方副隊長の過去!」とでも言いたくなるほど驚きの過去だったのですが*1、今の彼を貫いている信念が当時の経験に基づいているのだな、と感じました。ビターなお話ながらも、含みを持たせたラストも清々しい読後感を与えます。
 「昔の話を聞かせて」は堂上と小牧の馴れ初め(笑)のお話です。「図書館戦争」での手塚と笠原の位置づけは、そっくりそのまま昔の小牧と堂上の位置づけでもあります。堂上が笠原を(いろいろな意味で)気になるように、小牧も手塚に対し様々な助言をしてきましたが、当時の自分と手塚を重ね合わせていたのかもしれません。
 「背中合わせの二人」は3話の連作短編ですが、手塚と柴崎の「その後」を書いたお話です。あとがきでも書かれているように柴崎は「一番のびしろのない」キャラだったのですが、それは他の登場人物と異なり「弱みを見せない」という彼女の精神に起因するものと思われます。「他人に頼らない」というのはある意味彼女の「弱点」だったのですが、今回の話ではまさにそこを突かれた格好になっています。作中で起こる事件ですが、あとがきで作者の夫が「後味があまりにも気持ち悪くてラストまでに相殺できんのでもうちょっとシアワセな描写を足してくれ」(p284)と言っているとおり変にリアリティがあり読んで若干不快感を感じました。確かにこの流れで最後「乾杯」で締められたら「図書館戦争シリーズ」の幕引きとしては甚だ欲求不満が溜まるものだったかと思います。そういう意味では最後のシーンはロマンスでありながらもベタ甘にならず、ある意味堂上と笠原よりも不器用な二人に相応しいエピソードだったと思います。
 ネタバレなしで語るのは大変苦しいですが(笑)、とにかくこれで「図書館戦争」シリーズも終了。別冊IIはIと異なりラブ要素は控えめでしたが(というよりむしろIが濃すぎた)、苦い過去あり、知られざるエピソードあり、不器用な恋ありとバラエティ豊かで楽しめました。若干ビターな1冊に仕上がっていますが、ミントのように爽やかな読後感が味わえ、「図書館戦争シリーズ」の余韻を存分に味わえる1冊でした。大満足です。

*1:自信ないですが、本編ではそういった記載って一切なかったはず