SF時事ネタ大喜利! とり・みき『時事ネタ』
- 作者: とりみき
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2009/02
- メディア: 文庫
- 購入: 3人 クリック: 11回
- この商品を含むブログ (15件) を見る
取り扱っている題材は1996年からという今から13年前のネタ。
「笑い」が共通認識とのズレによって発生すると言う性質上、通常、旬を切り取ることで笑いに転化する時事ネタというのは
*1
とあるようにギャグマンガの瞬発力を上げる一方で時間がたてば風化し、一発屋芸人にも似た「ああ、あったなぁ・・・」という哀愁を含んでしまいがちです。
それに対抗するのは、いしいひさいち『大問題』や、ギャグではありませんが爆笑問題など、時事ネタを題材に風刺を加え面白おかしくネタにするという方法が一般的ですが、本作『時事ネタ』は、さにあらず。
時事ネタをネタに、SFギャグを一本描くという、まさに「SF大喜利」に仕上がっています。
例えば、最初の題材は1996年「セアカゴケグモ」。
もうこの名前だけでも「あー、あったなぁ」と「あるある」気分に浸れますが、これをとり・みきは
*2
クモ部長にアレンジ。
他にも、人工孵化したトキが巨大化したり「ロスタイムマン」が人生の様々な局面に無理矢理ロスタイムを作って妨害したりと、もはや時事ネタ関係なしです(笑)。
とはいうものの取り上げている事件や事象はここ10年の流れを感じさせる資料になりますし、ギャグは他のとり・みき作品の色そのままです。ある意味、一粒で二度おいしい作品なのかも。
ギャグだけではなくしばしば風刺も入っています。
個人的にはロスタイムマンが日韓ワールドカップについてゴニョゴニョするネタが最高だと思ってます(1998年のネタなのに!)。某北の国の偉い人のクローン人間ネタを天丼するなど、まぶされた毒や棘が一層の面白さを引き出します。
とり・みき好きの方は買って損はない一冊だと思いますし、「「失われた10年」に思いを馳せるもよし、「そういえばこんなことあった!」と自分だけの大事件を見つけ出すもよし。」という紹介文に惹かれたかたはご一読をオススメできる一冊だと思います。
【関連】『DAI-HONYA』の源泉 とり・みき『冷食捜査官』 - 三軒茶屋 別館