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2009-04-29

[][]漫画が表現する「音楽」

以前も記事に書きましたが、最近は音楽を題材にした漫画が増えてきて嬉しい限りです。

音楽サークル漫画のグラデーション - 三軒茶屋 別館

それぞれの漫画が表現する「音楽」を分類してみると面白い結果になったので、自分メモとしてちょっとまとめてみることにしました。

視覚情報のみで構成される漫画という媒体で、聴覚情報である「音楽」を表現するためには、やはり音楽も「視覚化」する必要があります。というわけで、漫画で表現される「音楽」を4つのパターンに分類してみました。

1.音符

これが一番良く使われる手法だと思います。普通の漫画においても音楽を表現するのに音符は使われますよね。例えば、『ONE PIECE』の一シーン。

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このコマを一目みただけで「音楽が演奏されている」ことを理解できますし、あたかもBGMのごとく「主役となる情報」の邪魔をしていません。漫画上の「音符」とは、「音楽が流れている」ことを表現する「漫符」の一種なのかもしれないなぁ、と思います。

2.擬音

音楽漫画で多いのはこの表現。トランペットなら「パーン」という音をそのままトランペットから発します。

この表現の便利なところは、「音の良し悪し」が視覚化できるところ。例えば、

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上記2コマでは、あたかもビフォアアフターのごとく、「下手な音」「上手い音」を表現していますが、音が良くなるにつれ「擬音」そのものも美しくなっています。

3.画面効果

音符や擬音など漫画上で「音」を一切発しなくても音楽を表現している漫画があります。

例えば、『のだめカンタービレ』。

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演奏によって生まれる空気を画面効果として表現することで、「どのような音楽が奏でられているか」を読者に感じ取らせることができます。この表現がもっと度を越すと柏木ハルコブラブラバンバン』のように「スタンド化」します。

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これはこれでまた独特で面白いです。

4.聴く側のリアクション

『のだめカンタービレ』では、演奏に対し聴く人がモノローグのようなかたちで解説をする場合があります。上記3つの表現だけでは伝わらない細かいニュアンスを表現、説明するには非常に有効だと思います。

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音楽と同じように漫画で伝えることが難しい「味覚」、すなわち「料理漫画」においても、食べた側の「感想」というものが非常に重要になってきます。『美味しんぼ』において「まったり」という表現が定着したように、的確な表現は読者に新たな語彙を与えることができます。

料理漫画では美味しさの表現を表すために「リアクション芸」が用いられる漫画もあります。

ミスター味っ子』を祖とし、『焼きたて!!ジャぱん』や『中華一番!』なんかが有名ですね。リアクションで地球温暖化を止めちゃうぐらい。

柏木ハルコ『ブラブラバンバン』も結構それに近くて、「上手い演奏」だと主人公の芹生百合子が欲情しはじめます。

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ここまではやりすぎだとしても(笑)、過度なリアクションというのは今後音楽漫画で増えていく表現なのかもしれませんね。


無音である「漫画」という媒体でどのようにして「音楽」を表現するか。大雑把に4つに分類しましたが、もちろんこれらを複合させ、より「読者に臨場感を与える」表現として機能していると思います。なかには「音楽漫画ならでは」の表現方法もあるので、漫画が表現する「音楽」そのものを注意してみるとまた新たな発見があるかと思います。

この記事もサンプルが少ないと思っていますので、「この他にもこういう表現方法があるよー」などの目撃例があればコメントなどで情報いただけると非常にありがたいです。(ぺこり)

*1尾田栄一郎『ONE PIECE』50巻、P152

*2宇佐悠一郎『放課後ウインドオーケストラ』1巻、P100

*3:同、P167

*4二ノ宮知子『のだめカンタービレ』1巻、P178

*5:柏木ハルコ『ブラブラバンバン』3巻、P93

*6:二ノ宮知子『のだめカンタービレ』1巻、P91

*7:柏木ハルコ『ブラブラバンバン』3巻、P95

taku_007taku_007 2009/05/01 01:54 はじめまして。

無音系の元祖は上條淳士の「To-y」って言われてますね
俺はメタル、ハードロック系(が好きな作家)とギターロック系(が好きな作家)の作家の視点の違いに興味しんしんです。
メタル系の作家はガチガチのうんちくたれで、楽器の解説とか、作品の設定(音楽以外も含む)にメチャ紙面を費やす(「バスタード」の萩原一志や「コータローまかりとおる」のバンド編描いた蛭田達也、「特攻の拓」の佐木飛朗斗など)。
対してギターロック系はそこらのうんちくは控えめで思春期青年期的な世界との戦いが前面に出る(「BECK」や「To-y」、「アイデン&ティティー」など)
もっとサンプル増やして調べてみたいなあって思ってます。

フジモリフジモリ 2009/05/01 08:18 >taku_007さん
コメントありがとうございます。
フジモリが読んでいたのはどちらかといえば「吹奏楽部漫画」ですが、音楽漫画のなかの「バンド漫画」では確かに「音符」などは使われてなかったような気がします。(音石明のぞく(笑))挙げられたマンガ読んでみますね。情報ありがとうございます。参考になりました!

こんにちはこんにちは 2009/05/03 13:02 『BECK』は音が出ている表現(漫符)がないのに、観客の心情や興奮振りで本当に音楽が聴こえてきそうな迫力がありますね。
さそうあきら作品は逆に淡々としていて『のだめ〜』に近い感じでしょうか。
ロック、クラシックといったジャンルの違いもあるでしょうが、異なる表現方法を採用した作品が、どちらも傑作と呼ばれているのですから、漫画の可能性はすごいものだと思います。

フジモリフジモリ 2009/05/03 20:29 >こんにちはさん、こんばんは。
音が無い媒体において「音」を表現できる、それはすなわち作者の筆力であり、「音が聴こえるようなマンガ」というのはそれだけでスゴイと思います。特に音楽マンガは、有名な曲ならともかく、オリジナルの曲や読者が知らない曲でもその迫力を伝えられるのですから、仰るとおり「音楽の可能性」を十分に感じられる作品たちですよね。

ぽ 2009/05/06 23:25 手塚治虫『ルードヴィヒ・B』や、正木秀尚『ガンダルヴァ』などはどちらも聴覚・嗅覚を絵画的に表現した作品です。
物体的なものではなく序破急の音の『流れ』、『発生と消失』として絵画的に表現する術がこの二つの作品では特に顕著に表されているのをお伝えしたかったので思わず書き込みしてしまいました。やや古めの作品ではありますが、なかなか面白い作品ですよ

フジモリフジモリ 2009/05/06 23:30 >ぽさん、コメントありがとうございます。
嗅覚の表現ですか、おもしろそうですね。どちらも入手難しそうですが、チェックしてみます。

サトサト 2009/05/08 08:39 音楽の表現といえば「コータローまかりとおる」という漫画に印象深いシーンがありました。
人並み外れた声量を持つロックのボーカリストの歌い出し、第一声のシーンです。
声というより衝撃波が響くような、格闘漫画の空気の震えるような描写があってとてもインパクトが強かった覚えがあります。(元々格闘漫画で、バンド編として音楽のシーンがあったのですが。)
このシーンは"3”の表現でしたが、作中の他の音楽シーンでは"3"か"4"が使われていました。

フジモリフジモリ 2009/05/09 18:25 >サトさん、コメントありがとうございます。『コータローまかりとおる』は柔道編しか読んでいませんです。バンド漫画は画面効果で音楽を表現する方法が多いのでしょうかね。『NANA』とかどうなんでしょ?バンド漫画はあまり読んでいないのでいずれ分析したいところです。情報ありがとうございました。

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