新城カズマ『15x24イチゴーニーヨン link four 「Riders of the Mark City」』集英社スーパーダッシュ文庫

新城カズマの青春群像サスペンス(←勝手に命名)『15×24』の第4巻です。
本書は全4ヶ月刊行の3ヶ月目、6分冊の4冊目であり「起承転結」の「転」にあたる作品という位置づけなのかもしれませんが、フジモリ的には「嵐の前の静けさ」という言葉が最も相応しいと感じた一冊でした。
link one 「せめて明日まで、と彼女は言った」書評
link two 「大人はわかっちゃくれない」書評
link three 「−−−裏切者!」書評


15x24』は全6巻構成なのですが、この構成についてふと邪推をしてしまったので前段としてこっそり呟いてみます。
新城カズマ氏が尊敬し影響を受けていると思われる作品、『指輪物語』。*1
この『指輪物語』は、映画などでは3部作になっていますが、もともとは6部作にしようとしていたそうです。

第5部・第6部に対する『王の帰還』という題について、内容を知らせすぎるとしてトールキンは難色を示していた。トールキン自身はこの部分に対し「指輪戦争」を提案していたが、出版社に退けられた。トールキンがもともと6部構成につけようとしていた題は次のとおりである。
* 第1部「影の帰還」 The Return of the Shadow
* 第2部「指輪の仲間」 The Fellowship of the Ring
* 第3部「アイゼンガルドの反逆」 The Treason of Isengard
* 第4部「モルドールへの旅」 The Journey to Mordor
* 第5部「指輪戦争」The War of the Ring
* 第6部「王の帰還」 The Return of the King
3巻構成版が非常に広く流通しているので、作品はよく『指輪物語』三部作と呼ばれるが、一つの小説として構想され書かれたので、これは厳密には正しくない。
wikipedia『指輪物語』より)

15x24』が全6巻構成になっていることも全くの偶然ではないのでは、と思います。
そういった考えでこの巻を読むと、離散しそれぞれの旅をしている仲間たちの個々を描き、「ああ、これからどうなるんだろう?」という不安と期待がないまぜになった感情が、『指輪物語 二つの搭』を読み終えたときのそれと重なることに気づきます。
そうなると指輪はピンクのケータイか?はたまた「トクナガ・ジュン」か?
・・・などと深読みをしてしまう構成かな、と思いました。



閑話休題。書評に入ります。
3巻でいくつかのチームに分断された主人公たち15名(実際は13名)ですが、今回はそれぞれのチームの色合いがはっきりと出てきます。
組み合わせの妙というべきか、化学反応というべきか、「ええ?こいつとこいつの組み合わせでこう動くの?」という様々な驚きが発生しました。
3巻まででこの壮大な物語の「ルール」がおぼろげながら示され、4巻ではそれまで敷かれたレールに沿ってジェットコースターが徐々に登っていく印象。
「これから否応なしに物語は動いていくぞ!」という緊張感と期待感。
笹浦と<ファブリ>の対決の結末は?
徳永はどこに行ったのか?
本当の裏切り者は誰なのか?
そして、<17>とは誰なのか?
役者は揃った。物語の概枠も俯瞰できた。
あとは、12月の完結を待つのみです。
長い一ヶ月、作者のさまざまなプロモーションを楽しみながら、この「お祭り」を楽しむことにしましょう。
新城カズマ『15x24』ネットでのプロモーションまとめ - 三軒茶屋 別館
(以下、既読者向けに「4巻時点での」個別のキャラ感想などを)

*1:あとがきでも言及されていますね。

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