三軒茶屋 別館 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2010-05-04

[][][]第20回世界コンピュータ将棋選手権に鬼将会登場

ハチワンダイバー 9 (ヤングジャンプコミックス)

ハチワンダイバー 9 (ヤングジャンプコミックス)

まともな将棋なんて一局もないっ!これはっ…

鬼将会は”切れ負け”に追い込んで勝ってる…

お互いたった2分という持ち時間…

三沢九段は…時間が切れて負けている

持ち時間が切れたら秒読みナシで即負けというルールでは真剣師ならではの別の将棋が出現する

将棋が強いのは三沢九段 常に優勢なのは三沢九段

ところが真剣師はギリギリで受ける ただ受ける ムダに受ける

もっさりした筋悪な受け

攻める方が攻め疲れて1秒でも2秒でも多く時間を使って考えればそれで十分

将棋は優勢なのに”2分切れ負け”という括りの中で

プロが負ける

(『ハチワンダイバー』9巻p120〜122より)

 2010年5月2日から4日にかけて、第20回世界コンピュータ将棋選手権が開催されました。

第20回世界コンピュータ将棋選手権

 そのコンピュータ将棋選手権に稲庭将棋というソフトが参加したのですが、そのソフトの指し方があまりに斬新で話題となりました。なんとこのソフト、徹頭徹尾相手を切れ負けに追い込んで勝つことをコンセプトとしているのです。

1.概要

 世界コンピュータ将棋選手権において、対局での勝利は以下のように分類される.

  a.相手の投了

  b.相手玉の詰み

  c.正当な入玉宣言

  d.相手の時間切れ

  e.その他(相手の反則など)

 本将棋プログラムは”d.相手の時間切れ”による勝利を積極的に目指したものである.

「アピール文章 稲庭将棋」(注:PDFです)より

 ただし、コンピュータ将棋選手権は25分切れ負けのルールで行なわれています。なので、切れ負けルールとはいえ、2分切れ負けの場合とは異なり通常であれば時間もたっぷりあることですし、切れ負けなどせずに勝ち切ることができると思われるかもしれません。実際、人間同士の対局であればそのとおりでしょう。しかし、コンピュータ将棋の場合には少々事情が異なります。

山本 ところで、対コンピュータ専用の「不敗戦法」をご存知ですか?

片上 不敗……必勝ではなく?

山本 あくまで「不敗」です。

片上 はあ。

山本 その名も「丸山スペシャル」、2005年に行なわれた第15回将棋選手権予選で▲丸山将棋△磯辺将棋戦で総手数1057手! という対局がありまして、そのとき丸山将棋が用いていた戦法です。ちなみにその対局は磯辺将棋がダウンして丸山将棋が勝っています。この丸山スペシャル、コンピュータ将棋界ではプログラマ間の口伝で知られる戦法です。

片上 どのような戦法なんでしょうか。

山本 七段目の歩を突かないまま、全ての歩に対して2つ以上の利きで守る。これだけです。

(「将棋世界」2010年3月号「コンピュータは七冠の夢を見るか?」p162より)

 具体的には以下のような陣形が紹介されています。

f:id:sangencyaya:20100504125302g:image

 確かに、とりあえずの隙はすべてカバーされています。ですが、「コンピュータは〜」内で指摘されているように、桂馬や飛車の利きを一点に集中させればこんな陣形ひとたまりもありません。人間なら真っ先に思い浮かぶ攻略方法でしょう。ところが、コンピュータにはそれが難しいというのです。というのも、このような人間がまず組まないであろう陣形と相対した場合においてはデータが不足しているために、コンピュータが攻めの手を作るのは非常に困難だというのです。そのため、この丸山スペシャルと対峙するソフトは有効な手を指すことができずに時間切れとなってしまい、切れ負けルールなら負け、そうでなければほぼ永遠に指し続ける、ということになります(千日手になる可能性もありますが、丸山スペシャル側が千日手回避のプログラムを組んでたらと考えると……)。

 この丸山スペシャルの考え方を、こともあろうに積極的に導入して今回のコンピュータ将棋選手権に出場したのが稲庭将棋です。稲庭将棋は以下のような陣形を組みます。

f:id:sangencyaya:20100504125303g:image

 丸山スペシャルとは少し陣形が異なりますが、中央に玉がいない分、より相手ソフトが手を作るのが難しいのでは?という考えかもしれません。この陣形を組んだ後は飛車や金をほぼノータイムでちょこちょこと動かして相手が攻めてくるのを待つだけです。しかも、画面には相手の残り時間が表示されるのみという徹底振りです。実に見事な仕様です(笑)。ただ、この稲庭将棋、幸いにも(?)千日手回避のプログラムは組まれていなかった模様で、千日手*1による引き分けもあったのですが、それでも4勝3分という好成績で1次予選を突破。その日の話題をさらいました。

【参考】毎日がEveryDay!

 無敗のまま1次予選通過。ほぼコンセプトどおりの結果が得られたことで2次予選の戦いぶりに注目が集まりましたが、そこは強者揃いの2次予選。1勝6敗2分と惨敗に終わりました。今のコンピュータ将棋はどれもホントに強いです。データのないところからの手作りもすっかりこなすようになってきて……。ただ、2次予選シードで決勝に駒を進めて2位になった習甦というソフトを破るなど存在感を示すことはできました*2。それに、相手が無理な仕掛けを敢行したために有利な局面を迎えた場面もありました。なので、稲庭将棋のコンセプトにもまだまだ可能性が残されているように思います。本当にいろんな将棋があるものですね。

【関連】

コンピュータ将棋選手権、一次予選、稲庭将棋 - merom686の日記

角交換振り飛車とか コンピュータ将棋選手権やってるのね。 てか稲庭将棋ww

小宮日記

第20回世界コンピュータ将棋選手権 2日目|Thinking every day, every night

角交換振り飛車とか 稲庭将棋、第20回コンピューター将棋選手権の全棋譜


 ちなみに、丸山スペシャルもしくは稲庭将棋の指し方は対コンピュータ専用の戦法ですが、人間同士の将棋でも待機戦法があります。特に極端なのが風車と呼ばれる戦法です。

f:id:sangencyaya:20100504163129g:image*3

 発案者は伊藤果七段です。「飛車が自陣内を動く様子がくるくる回る風車を連想させ」*4ることから風車と名付けられましたが、この陣形、ご覧の通り隙がなくて受けには強い反面どこから攻めればいいのか分かりません。つまり「先手でも千日手歓迎」で、相手が動いてきたところでカウンターを狙うのがこの戦法の骨子なのです。

 とはいえ、やはり「千日手は嫌」ということで発案者の伊藤果七段自身が指さなくなってしまったのですが(笑)、持ち時間が少ない切れ負けルールで指されることが多い『ハチワンダイバー』であれば、もしかしたらこれから先の展開で指されることがあるかもしれませんね。

将棋世界 2010年 03月号 [雑誌]

将棋世界 2010年 03月号 [雑誌]

*1:5秒で千日手、という人間には理解不能な攻防もあった模様。相手も時間切れ負けを回避するためにほぼノータイムで指した結果でしょうが、いやはや何とも……。

*2:ちなみに優勝ソフトは激指でした。おめでとうございます。

*3『消えた戦法の謎』(勝又清和/MYCOM将棋文庫)p78より

*4:『消えた戦法の謎』p78より

投稿したコメントは管理者が承認するまで公開されません。

スパム対策のためのダミーです。もし見えても何も入力しないでください
ゲスト


画像認証

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/sangencyaya/20100504/1272964616