羽海野チカ原画展に行ってきました。

ハチミツとクローバー 1 (クイーンズコミックス)

ハチミツとクローバー 1 (クイーンズコミックス)

 『ハチミツとクローバー』『3月のライオン』などでお馴染みの羽海野チカの原画展が大阪で開催されると聞いたので、仕事の合間を縫って行ってきました。
羽海野チカ原画展 〜ハチミツとライオン〜 追加開催決定!!(3月のライオン公式HPより)
 場所は梅田大丸百貨店の15階。平日の昼間でしたが、かなりのお客さんでした。客層はやはり20〜30代の女性が多かったですが、春休みということもあり親子連れの姿も目立ちました。
 場内写真撮影禁止でしたので、文章のみになりますが以下、レポートを。
 入ると作者近影の大きなぬいぐるみがお出迎え。パステルカラーの壁紙がマッチしています。
 入り口はいってすぐに羽海野チカが手がけてきたお仕事一覧。ハチクロ3月のライオンはもちろん、集英社版『赤毛のアン』、森博嗣のエッセイ『MORI LOG ACADEMY』や大槻ケンヂのエッセイ『神菜、頭をよくしてあげよう』などなど、イラストのお仕事もけっこうされてるんだなぁ、と感じたり。
 そして著名人の方々から今回の原画展のお祝いメッセージ(色紙)が。
 漫画家、歌手、声優などさまざまで、3月のライオンつながりで棋士先崎学八段や渡辺明竜王もお祝い色紙を寄せていました。
 あずまきよひこが「例の件」を謝っていたり、木皿泉(脚本家)がグッとくる一言を書いていたり、色紙を見ているだけでも飽きません。そして、お祝いメッセージには羽海野チカ先生のすばらしい作品や創作に対する真摯な姿勢に対する賞賛のコメントが多々みうけられ、彼女の実直で真摯な人柄が浮かび上がってきたような気がしました。
 そしていよいよ原画ゾーンに入ります。
 雑誌表紙を中心とした「ハチクロ」コーナーは、圧巻の一言。
 描線そのものも温かみのありますが、カラーになるとより「すごさ」がわかります。パステルや水彩絵の具を基調とした暖かなタッチは、「原画」になるとその絵の具や色鉛筆の息吹が直接感じられます。まさに「絵画」という印象を受けました。観ていて気持ちが暖かくなりますし、観覧者たちが一枚一枚足を止めて観ている様子が非常に印象的でした。
 「ハチクロ」コーナーでは原画のほかにも、そこかしこに原作を再現した小道具が展示されていました。竹本が自分探しの旅に出たときに乗った自転車などはその汚れやぼろぼろさも見事に再現されていましたし、10巻ラストシーンのサンドイッチの包みなどは見ただけで条件反射で泣きそうになってしまいました。
 また、コミックス未収録のハチクロ番外編のマンガ(の原稿)も展示されており、これは4/4以降に別バージョンが展示されるそうです。内容は伏せますが、とあるサブキャラのお話なのですがこれもまた良かったです。
 ここまででもかなりのボリュームですが、まだ半分も行かず。
 次はイラストコーナーということで、マンガ以外のイラスト(『赤毛のアン』やキャラ原案をしたアニメ『東のエデン』)が展示されていました。
 そして次のコーナーは、これまた圧巻、作者の取材写真が壁一面にぶわあっと貼られていました。3月のライオンの舞台である月島や将棋会館のある千駄ヶ谷人間将棋天童市などなど。これらの写真から原作の風景が生まれてくるわけで、写真と作品の対比もまた面白かったです。「作者取材のため休載」という言葉がウソの代名詞として定着している昨今ですが(笑)、「いやあ、これだけ取材するんだったらそりゃ休載必要だわ」と変な感想を抱いてしまいました。
 メッセージノートや東日本大震災プロジェクトのコーナーがあり、次は作者の創作プロセスのコーナー。
 自らコメントで「火事があってもこれを持って逃げる」と言っているネタ帳、ネームを何度も何度もブラッシュアップしている工程など、普段見ることのない創作のプロセスに感動。同時に、作者の創作に対する真摯でストイックな姿勢を文字通り肌で感じることが出来ました。
 そして最後は「3月のライオン」コーナー。こちらも生原稿やイラスト、原作の再現(和菓子など)コーナーもあり見ごたえがありました。しかし「ハチクロ」のあとに「3月のライオン」コーナーに来ると、絵柄を意図的に変えているというのもあるでしょうが、ピリピリとした鉄火場の雰囲気とそこで戦う男たちの男臭さに溢れていますよね。それこそ、3姉妹の華やかなイラストでも脱臭できないぐらいの雰囲気(笑)。まあ、それがまた『3月のライオン』の魅力なのですが。
 出口にはお約束のグッズコーナー。とりあえずポストカードとまだ買っていなかった初期短編集『スピカ』、インタビューが掲載されている雑誌「QuickJapan」と「ダ・ヴィンチ」などを購入しました。

 全体を通しての感想は、とにかく「大満足」の一言。
 アナログで暖かい絵柄は原画を直接観るとより美しさがわかりますし、線の一本一本、色のひと塗りに作者の想いがこめられているような印象を受けます。
 削って削って、精査して精査して、ブラッシュアップしてブラッシュアップしてと彫刻を彫るかのようにどんどん贅肉をそぎ落とし完成させていく創作プロセスもそうですが、やはり何度も言っていますが作者の創作に対する想い、そして想いを形にする真摯でストイックな姿勢は、印刷を介さない「原画」でよりダイレクトに伝わってくる気がします。
 原画展を観てあらためて羽海野チカという漫画家の良さ、すごさを感じると同時に、「よし、自分もがんばるか」という元気もいただいた気がします。
 「過去最多の原画」と言っているだけあってかなりのボリュームで、早足でも1時間、じっくり観ると2時間はかかると思います。
 4/9までと短い期間ではありますが、羽海野チカの漫画が好きな人なら是非ともオススメする展覧会です。いやあ、大満足でした。