日本史日誌

いまは旅行記で精一杯だけど・・・

伝・頼朝像論/佐多芳彦/日本歴史(700号)

700号記念特集『日本史の論点・争点』のテーマのひとつ。論争の経緯や現状、そして今後の展望などをまとめたものなので、論文ではないですが、とりあえず[論文]にカテゴライズ。


当テーマは言わずと知れた神護寺三像の像主比定に関する論争に関するもの。論争の内容については、以前にだいたいのところを言及しているので、そちらをご参照下さい。


さて、この論争において保守的な立場を取るのは美術史家なのですが、彼らの反論について痛烈な批判を展開しています。

米倉説*1への反論の多くが、像主を「源頼朝」「平重盛」「藤原光能」に比定すること、そして一二・三世紀の作品、という「前提」で展開されているのである。「検証」という作業では作業仮説が必要となるが、最初から時期や人物比定について前提を決めてしまう姿勢とそこから導き出される作業仮説は、行論を前提条件にすり合わせするようなものとなることは避けられない。

神護寺三像をめぐる論争は、美術史における伝統的な方法論と、米倉氏の提示した新しい方法論との対峙による摩擦により生じているとも言える。そして、それが意表をつく像主比定に対する拒否反応のようなかたちに集約されているように見える。

おー、感じていたもやもやを全部指摘してくれました。スッキリ(^-^)
この論争に限らず、保守的立場からの反論は、得てして通説に拠りがちで、そうなるともう論点はずれてしまう、ずらされてしまうので気を付けなければなりませんね。


ところで、甲斐善光寺の木造源頼朝坐像を基に肖像画として復元するプロジェクトが紹介されていて、今夏には完成するとあったのですが、どうなったんでしょうか?どうなってるんでしょうか?ちょっと興味アリ。

*1:神護寺三像の像主を「源頼朝」「平重盛」「藤原光能」とする通説を否定し、「足利直義」「足利尊氏」「足利義詮」に比定し直した。