『バンテージ・ポイント』

主演のデニス・クエイドをはじめ、フォレスト・ウィテカーウィリアム・ハート、シガニー・ウィーヴァーと、やたら渋めのキャスティング。どれもいい俳優だけど、この面子でサスペンスアクションというのは、ちょっと地味すぎじゃないかと。そもそも、年齢的にも肉体的にも、デニス・クエイドにアクションものでヒーローをやらせるのは無謀でしょう。実直で正義感が強いキャラにはピッタリだけど、とにかく動きが重い重い。頑張ってはいたけど体のキレが悪く、華麗なアクションからは程遠いパットしない絵面になっちゃってました。ハリウッドって、何故か運動神経の鈍そうな俳優にアクションやらせるの好きですよね。ハリソン・フォードとか、ハリソン・フォードとか、ハリソン・フォードとか(苦笑)。
でも、大統領暗殺という一つの事件を、シークレットサービスや観光客、大統領本人、首謀者側と、様々な視点から何通りもの描き方をしていく中で、徐々に真相が明らかになる過程はサスペンスタッチで面白く、グイグイひきこまれました。それだけに、ラストのクライマックスが、あまりにもお粗末かつアッサリ終わってしまったのが何とも拍子抜け。前半から中盤までのあの緊張感と盛り上がりが、最後で一気にしぼんだ感じです。結局、犯人たちが何の目的であの事件を引き起こしたのか。何をしたかったのかがよくわからないままに終わってしまった。そもそも、フォレスト・ウィテカーに散々意味ありげな前フリをしておきながら、結局のところ話の筋にはあまり関係なく、単なるサスペンス要素の駒として扱われただけのキャラだったし。ましてシガニー・ウィーヴァーなんて、結局なんだったんでしょ?後々事件に関わってくるのかと思ってたのに、たったアレだけのご出演とは・・・。存在そのものが見事なフェイント。*1ある意味、やられました(苦笑)。
とにかく全体的に、登場人物があくまで物語を複雑に見せるための小道具として使われていたため、ストーリーに深みや感動はありません。その代わり、謎めいた展開とスリル溢れる映像はなかなかの迫力で、ドキドキ感は十分に味わえます。ま、気軽に見れるサスペンスアクションって感じですね。

評価 ★★★☆☆

*1:なんて贅沢なキャスティング