『銀河にひそむモンスター』

福江純
光文社知恵の森文庫
ISBN4-334-78370-8
銀河中心核にあるブラックホールに関連していくつかのことが書かれた科学エッセイ。
一応の流れとしては、活動銀河の研究を通してその活動の原因としてのブラックホール降着円盤が解明されていく様を描いた研究史概略、であり、良くいえば、科学エッセイとしてそれなりといえばそれなりだろうから、そういった類の天文学エッセイ、あるいは雑学本で良ければ、読んでみても、という本か。
ただし、問題点としては、本書には、こうだからこうだ、というような解説が余りない。用語説明は、スペクトルとか電子・陽電子対消滅とか、割と初歩のものから付いてはいるのだが、これらの用語を知らないような人が読んで本書を理解できるのかは、結構疑問に思う。少なくとも、何かを説明しているような本を、期待すべきではないだろう。
天文学に関する言葉がだらだらと書かれていて、それで楽しめる、という人向け。元は岩波書店の本らしいから、初心者がふらふらと手に取るような本ではなかったのだろうが、本書を楽しめる層は、かなり限定的だとは思う。
それでも良ければ、というところ。
メモ1点。
・水素原子の基底状態励起状態との間を電子が遷移する際に生じる輝線や吸収線スペクトルをライマン系列、第一励起状態とそれよりエネルギーの高い状態の間に生じるものをバルマー系列、第二励起状態の場合をパッシェン系列と呼んでいる。