『科学史から消された女性たち ノーベル賞から見放された女性科学者の逸話』

大江秀房
講談社ブルーバックス
ISBN4-06-257502-7
何人かの女性科学者たちの列伝。
ざっくりといえば割と普通の列伝読み物だと思うので、女性科学者の列伝で良ければ、読んでみても、という本か。
サブタイトルにもあるように、ノーベル賞に届きそうで届かなかった女性科学者たちを主として集めたものだが、ノーベル賞云々というのは、そういうものを期待した私の見解では、余り期待しない方が良い。そういうものが含まれていることは確かだが、一応生涯全体を描いているので、主題的にはかなりぼやけてしまっていると思う。
寧ろ、著者としては、女性科学者の生涯全体を描くことで、女性科学者が女性に対する差別や偏見とどのように戦ってきたか、ということを描きたかったのだろう。それが成功しているかどうかは、余りよく分からないが。少なくともテーマとして論じられている訳ではないが、良くいえば、そういう事例の積み重ねではある。
ということで、テーマ的にはやや問題含み。科学的事項の説明も、知らない人には多分分かりやすくはないと思う。
ただし、列伝読み物としてそれなりといえばそれなりなので、女性科学者の列伝で良いのなら、悪いということはないと思う。
強くお薦めする要素はないが、読まないよりは読んだ方が、という、結構微妙な出来の本。女性科学者の列伝が読みたければ、読んでみても、というところではないだろうか。
メモ1点。
・エミー・ネーターは、次のことを証明した(ネーターの定理)。
物理法則が時間の転換によって不変である時、エネルギーは保存される。
物理法則が座標の転換によって不変である時、運動量は保存される。
物理法則が回転によって不変である時、角運動量は保存される。