『軍神 近代日本が生んだ「英雄」たちの軌跡』

山室建徳 著
中公新書
ISBN978-4-12-101904-2
近代日本で軍神とされた人々が生まれてくる過程を追った本。
日露戦争における廣瀬武夫中佐から、殉死した乃木希典、爆弾三勇士や、太平洋戦争時の英雄まで、近代日本において軍神とされた人々が、戦死(殉死)し、その後顕彰されていく過程を描いたもの。
歴史研究としてはいささか突っ込みが足りないような気がするし、軍神が生まれてくる過程という一側面だけを捉えたものではあろうが、歴史読み物としては多分それなりの本、というところか。
いろいろと興味深い部分もあったので、興味があるのならば、読んでみても良い本だと思う。
突っ込みが足りない、というのは、何というか全体的に、保守的に能天気、という感があって、例えば、一次史料として新聞記事や学生の感想文なんかが使われているのだが、それらは、当時の、軍神を顕彰する空気を知るには良い素材ではあるだろうものの、史料批判抜きに使用するには、ちょっと恐いのではないだろうか。結論(後述メモの最後)の導き方も、論理的に弱いし、ややいろいろと傷がありそうには思う。
ただ、歴史の一側面を描いたものとしては、興味深かったので、読み物としては、一応それなりの本ではないかと思う。興味があるならば、悪くはないのではなかろうか。
興味があるならば、読んでみても良い本だろう。
以下メモ。
・軍神とされた人々は、その行為等が日本精神の現れだとされた。
・初期の軍神である廣瀬中佐や乃木大将は、士族の出身であり、勇敢な行為だけではなく高潔な人格が賞賛の的となっていたが、普通の庶民の出である爆弾三勇士は死を厭わない自己犠牲の精神が専ら賞賛され、それは後の特攻攻撃への先駆けともなった。
・軍神が示す戦争観では、こうした戦死者たちは、後に残された者のため、後に続く者のために死んでいったのであり、(彼らに続くことなく)敗戦を受け入れ生きる道を選んだ日本人やその末裔との間には、深い断絶が存在するだろう。
(尚、著者名の徳は旧字である)

ボーっとテレビをつけていたら、

今フジテレビで凄いドラマやってるのな。
牧場に来ている若い美男美女が(俳優だから当然だが)、過疎化がどーとか、私はこの町が好き、とかいっちゃうやつ。
いや、どう考えても、過疎化の問題は、芸能界にデビューできるような若い美男美女程田舎には残らない、ということと共振していると思われる訳で。
何をしようとも寒いドラマにしかならないような気がする。