『素数が奏でる物語 2つの等差数列で語る数論の世界』

西来路文朗・清水健一
講談社ブルーバックス
ISBN978-4-06-257906-3
整数論に関して書かれた数学本。
面白いことは面白く、数学書の好きな人はこういうのを楽しめるのだろうなあというのは分かる本だが、かなり難しいので数学本の好きな人向け。それでよければ、という本。
個人的には、難しいというだけで理解できないほどではなかったので、なんとかなった。一つの証明について十分くらいボーっと考えているとようやくうっすらと分かる感じか。
a=bだから、などと書かれていても何故a=bなのかを最初から考えなければいけないのは、全部やってはいられないのだろうとはしても、もう少しなんとかならないものだろうか。
数学本の好きな人なら、これでよいのかもしれないが。
それでよければ、という本だろう。

以下メモ。
・pを素数とするとき、pが2または4n+1の素数であることと、x^2+y^2=pを満たす整数x、yが存在することは同値である。(フェルマーの平方和定理)
・x^2-y^2=(x+y)(x-y)と因数分解できるので、複素数の範囲まで広げれば、x^2+y^2=(x+yi)(x-yi)であり、4n+1の素数ガウス素数 x±yi に分解できる。
(2の場合、1-i=-i(1+i)なので、ガウス素数素因数分解すると2=-i(1+i)^2)
・pを4n+3の素数であるとする。仮にpがあるガウス素数a+biで割り切れるとすると、単数でないガウス整数(c+di)に対してp=(a+bi)(c+di)となるが、共役複素数をかけて、
p^2=(a+bi)(a-bi)(c+di)(c-di)
  =(a^2+b^2)(c^2+d^2)
となるから、素数pの二乗が2つの整数の積となるのは、(a^2+b^2,c^2+d^2)=(1,p^2)(p,p)(p^2,1)。
a^2+b^2=1のとき、(a+bi)(a-bi)=1となり、a+biは、単数となるので、ガウス素数ではない。
a^2+b^2=p^2とすると、c^2+d^2=1でc+diが単数になるので矛盾する。
よって、a^2+b^2=pだが、フェルマーの平方和定理により、a^2+b^2=pとなる素数pは2または4n+1の素数であり、4n+3の素数ではない。
したがって、4n+3の素数を割り切るガウス素数a+biは存在せず、4n+3の素数pはそのままガウス素数となる。