日本の「ヒール(悪者)」

国や社会というものは、どんな体制であっても、
ある二つの要素に還元することができます。
それは、「既得権益者」と「それ以外の者」です。
 
封建主義であれ、共産主義であれ、資本主義であれ。
 
共産主義であっても、国政トップが「既得権益者」となります。
以前のブログにも描きましたが、
共産主義というのは、ネットワークビジネスみたいなものです。
一見平等に見えて、その仕組みを構築した者が甘い汁を吸い、絶大な権力を手に入れる。
自国民に対する大虐殺という意味では、
共産主義国家の右に出る体制はありません。
 
カンボジアポル・ポトソ連スターリン、中国の毛沢東
 
皮肉ですね。
人類が初めて自分達の「幸せ」のためにデザインした夢の国家体制は、
最も人類を傷つける凶器にしかなりませんでした。
 
人類の長い歴史を見ても、
既得権益者」が「それ以外の者」のために配慮する社会なんてあり得ないことがわかります。
だから、「既得権益者」には「道」が求められるのです。
中国の「君子」論や、
イギリスの「ノブレス・オブリージュ」(富める者には社会貢献を行う義務があるということ)
等、「既得権益者」はこうあるべきと声高に牽制されてきました。
 
しかし、「保身」に「強欲」。「既得権益者」は自制しない。
 
日本においても、「既得権益者」の社会に与える弊害は、様々に出ています。
今、話題の原発再稼働もそうでしょう。
原発の安全性を守る目的で官僚によってつくられた外郭団体は、こんなにあります。
 
 独立行政法人原子力安全基盤機構
 独立行政法人日本原子力研究開発機構
 独立行政法人原子力環境整備促進資金管理センター
 財団法人原子力安全研究協会
 財団法人原子力安全技術センター
 財団法人原子力国際技術センター
 財団法人日本原子文化振興財団
 原子力委員会(JAEC)(内閣府
 原子力安全委員会NSC)(内閣府
 原子力安全 保安院(NISA)(経済産業省) 
 原子力発電環境整備機構(NUMO)
 (社)日本原子力産業協会(JAIF)
 (社)日本原子力学会(AESJ)
 (財)原子力安全技術センター(NUSTEC)
 (独)原子力安全基盤機構(JNES)
 (社)日本原子力技術協会(JANTI)
 (財)原子力安全研究協会(NSRA)
 (独)日本原子力研究開発機構(JAEA)
 (財)原子力研究バックエンド推進センター(RANDEC)
 (財)日本原子力文化振興財団(JAERO)
 (財)原子力発電技術機構(NUPEC)
 (社)火力原子力発電技術協会(TENPES)
 (財)原子力国際協力センター(JICC)
 (社)原子燃料政策研究会(CNFC)
 (財)原子力環境整備促進・資金管理センター(RWMC)
 
しかしその実体は、税金や電気代から「富」をかすめ取る天下り団体。
天下りの受け入れという役割ばかりに注力して、
本来の原発事故を防ぐという役割は、全く果たしませんでした。
それなのに、責任追及もされずに、のうのうと存続し続けています。
そして、これら「原発利権」を養うためなのか、
日本の電気代はアメリカの実に2倍という破格のお値段となっています。
 
さてさて、原発がなくなると困るのは、一体誰だと思いますか?
国民でしょうか?
それとも、せっかく用意した天下り先がなくなってしまう官僚の方でしょうか?
 
ところで、こういった自身の存続と発展を目的とする国家のような組織の機能論は、
生物の細胞のあり方に通じるものがあります。
例えば、人間の胃の細胞は、
胃酸を出して食べ物の消化を助けることを目的とした細胞です。
しかし、その本来の役割から外れて、
与えられた養分を自己の増殖に使ってしまう細胞は、癌細胞と呼ばれます。
人体においても社会組織においても、
癌という病気は、外敵の脅威排除よりも、はるかに治療が困難な病気です。
 
そう。「既得権益者」は「癌化」しやすい。
この「癌化」した「既得権益者」を、社会の「悪」と呼ぶのです。
 
もちろん、人体には「癌細胞」を攻撃する「キラーT細胞」のような様々な仕組みがあります。
人体の癌に対するスタンスは、
「癌化が起こるのは仕方がない。ならば、それが大事にならないうちに未然に処置しよう」
というものです。
 
組織においても同じだと、私は考えます。
どんな組織も、いずれはパワーを持つ部位が「癌化」してしまう。
人に「欲望」がある限りは。
 
さて、日本の社会において「キラーT細胞」となる存在はあるのでしょうか?
政治家と言いたいところですが、政治家は官僚の言いなり。
そうではなくて、私たち有権者こそが「キラーT細胞」なのだと思いますよ。
もちろん、マスコミも「既得権益者」。当てにはならない。
 
今回の原発継続の是非の議論は、
賛否両論入り乱れて何が何だかわからなくなりますが、
シンプルに「組織論」として考察すべきだと私は考える次第です。
 
日本社会という組織の中で、
本来の役割を忘れて自己増殖に突っ走る「癌細胞」に「No」を出さなければ、
日本社会という生命体は、いずれ死を迎えるでしょう。
日本という国の「命」という大きな問題に比べれば、
電力不足問題なんて小さな問題だと私は考えます。
 
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