増殖したがる「ミーム(Meme)」

このブログでの最近の話題は、「ミーム(Meme)」です。
「社会」や「文化」や人々の「価値観」を知る上で、
私は「ミーム(Meme)」をとても重要な切り口だと考えています。

ミーム(Meme)」とは、ウィキペディアによりますと以下の通りです。

ミーム(meme)とは、人々の間で心から心へとコピーされる情報のことであり、
社会・文化を形成する様々な情報として分析される。
例えば、習慣や技能、物語といった、人から人へコピーされる様々な情報である。

 
「情報」は、誰かに伝えるためにあります。
つまり「誰かの頭の中に、自分のコピーを作成する」ことが、
「情報」の「そもそもの存在意義」なのです。
そうした潜在的性質を有しているので、
「情報」はAさんからBさんに伝わって終了ではなく、
更にBさんから、CさんやDさんに、自分のコピーを作成しようとします。
 
そうすると「情報」=「ミーム(Meme)」は、遺伝子「ジーン(Gene)」と同様に、
有限の人間の脳という「資源」を奪い合って、「競争」を始める訳です。
勝ち組の「ミーム(Meme)」は、あっと言う間にたくさんの人間の脳に伝播しますが、
物質的実体を持たない「ミーム(Meme)」は、
ジーン(Gene)」よりも変化のサイクルが速く、
次々に生まれる新たな「ミーム(Meme)」にすぐにとって代わられます。
また、突然変異のスピードも速いです。
先日挙げた「口裂け女」の発祥が整形手術のない古い時代だったのに、
いつの間にか整形手術の失敗が口裂けの原因となった事例のように、
ミーム(Meme)」は環境に合わせた変化を容易に成し遂げます。
 
このように突然変異を繰り返す「ミーム(Meme)」は、
熱帯雨林のように多様性を極めますので、
現在様々な種類の「ミーム(Meme)」が、この世界に存在するのです。
 
今日は「伝導ミーム」と呼ばれる「ミーム(Meme)」の種類をご紹介したいと思います。
ウィキペディアによりますと、

他者にも伝えようという呼びかけが含まれているもの。

が「伝導ミーム」です。
すぐに思いつくのが「宗教」ですが、
他にも以下のような「ミーム(Meme)」がいます。
 
情報化社会の黎明期、
メールがビジネスツールとして浸透してきた頃、
チェーンメールというものが流行りました。
例えば、こんな内容です。

当たり屋グループが来た。気を付けて運転すること。
下記ナンバー車と接触事故を起こした場合は、
その場で示談せずに直ちに警察に連絡すること
警察が到着する前に、自分の勤務先や氏名、電話番号は絶対に言わないこと
このコピーを車内に備えておくこと
友人、知人に知らせること
要注意ナンバー(30台 - 36台が箇条書きに掲載。)
このナンバーの車が前を走行している時は、
急に車が止まっても当たらない車間距離を保つこと
サイドブレーキを使用するのでブレーキランプはつかない)。
○○(地名)ナンバーの他、△△(地名)方面の車にも気を付けること。
運悪く事故を起こした場合は、警察に連絡すると同時に
この資料をチェックするだけで逃げていくケースもあるそうだ。

こんな内容のメールが当時勤めていた会社に届き、
総務部から各社員に社内メールにて周知されました。
 
ですが、これはチェーンメールという拡散を目的に作成されたデマでした。
(このチェーンメールについて詳しくは、
 「当たり屋グループ」のウィキペディアをご覧下さい。)
 
上記のウィキペディアによると、
当たり屋グループとは、交通事故を起こさせ、
法外な要求をしてくると考えられているグループのことです。
確かに、そんな集団がいてもおかしくないと思います。
しかし、リストに掲載された車のナンバーを警察が実調査したところ、
既に廃車になっていたり、存在していなかったり、
記載されている車種と実際の(車検証登録の)車種が異なったり、
といったものばかりだったといいます。
そのため警察は単なる「ウワサ」「デマ」であると判断し、
「これらの車が当たり屋であるという事実はない」
「当たり屋グループの情報に惑わされないように」と注意を呼びかけているようです。
 
このように「伝導ミーム」と呼ばれる「ミーム(Meme)」は、
ミーム(Meme)」自身に「拡散」する仕組が施されています。
 
その「拡散」の仕組としてよく使われるのが、「危険」です。
人間の脳は、「危険」に注意を払う傾向があります。
上記当たり屋グループの「情報」も、まさに「危険情報」です。
私達は、人間に進化する前の猿の時代から、
「危険情報」を積極的に仲間と共有していたのだと思います。
 
例えば怪談話で、この話を聴いたら○日以内に×人の人に話さないと、
その幽霊が自分の所にも現れるという類のものがありますが、
これも「危険」を利用した「伝導ミーム」な訳です。
 
そして「宗教」も、
「信じなければ地獄に堕ちる」というロジックを利用するものが複数あります。
これらも、「危険」を利用して増殖する「ミーム(Meme)」と言えるでしょう。
 
「伝導ミーム」は、
「侵入」「複製」「指令の発信」「拡散」という、
自然界のウィルスと同じような振る舞いをすることから、
その感染の仕組を「マインド・ウィルス」と呼ぶこともあります。
 
・・・という訳で、どうでしょうか?
「情報」達の生命力溢れるどう猛な一面を、お見せすることができましたか?
単なる「情報」と侮ることなかれ。
ISISの例を見てもわかるとおり、
ミーム(Meme)」は、人の「命」までも残虐に奪う力を秘めているのです。