きっかけから増殖開始まで


 そんなわけで、突然レビューから始めてしまいましたが、書き手の話もひとくさり。

 2005年の夏、京都で買った和風柄のアロハが気に入り、アロハ=ウクレレという単純な発想で一本目を買いました。といいつつ、弦楽器は実質初めてに近く(中学の頃数ヶ月だけフォークギターに触ったきり)、ちゃんと弾けるか、飽きないかなど不安だったので、一本目はAriaの初心者用セットを1万円で購入。当時は「ウクレレに5万なんてとんでもない!」という感じでした。実際、この頃まではウクレレの演奏を意識して聞いたこともなかったのですから、かなりひどい話です。

 果たして一本目の楽器を、女房への迷惑も省みずカキ鳴らしているうちに、どうやらこの楽器は、自分の好みに非常に合っていることに気づきました。

・音が小さい。→時間を気にせず弾ける
・音が柔らかい。→フォークギターは自分にはうるさいので
・楽器が小さい。→持ち歩きに苦痛がない
・一人でコードが出せる。→合唱歌手には夢のような話
・弦の数が少ない。→知人曰く「人間の指の数に合っている楽器」だとか

 しかし、因果なものですが、ハマり始めたとたんに気になるのが、楽器の音程です。最初に買った楽器で、まだヨチヨチ状態で楽器の音程のことなど判るわけもないのですが、この楽器はどう聞いても1フレット、2フレットあたりを押さえた時の音程がやたら高いのでした。なまじっかコーラス経験が長く、和音の響きやらスケールやらを習い覚えていたおかげで、気になり始めるとどうにもなりません。ネットで調べてみると、どうやら安い楽器というのはこういうものなのだそうです。

 そして、運が良いのか悪いのか、私の会社は神田の神保町でした。つまり、お茶の水まで徒歩数分圏内なのです。会社から一番近い楽器店「おちゃのみず楽器」に足が向くまでに、数日とかかりませんでした。

 ここで、クロサワ楽器の名物店長、松田さんにばったり出くわします。考えてみれば、この出会いが自分の「国産趣味」をほぼ決めました。まだ右も左も判らない楽器ビギナーに、松田さんは「国産楽器の良さ」を熱く語ります。「他に音楽をやってる人なら、国産の音程がちゃんとした楽器を買ったほうが良い」と、勧めてくれた楽器は、T'sのSD-100でした。

 長いこと合唱をやっていたこともあり、「日本人には日本の音が一番」と思う根拠は十分で、断る理由はありません。唯一の(当時の)問題は、その楽器の5万円近い価格だったのですが… 結局、気合一発、クレジットでこの楽器を購入することを決めました。この瞬間が、後に続くウクレレ泥沼への第一歩だったわけです(笑)。

 この買い物は、後から考えても非常に良い買い物で、現在はコオラウ・ゴールドを張られ、未だに気に入りの一本の中に入っています。

 しかし、耳年増な素人というものは恐ろしいもので、買って帰って3日ほどで、どうもG#あたりの音程で響きが悪いのが気になり始めました。いわゆるデッドポイントで、大なり小なりどんな楽器にもあるものだ、とか、弦を変えればそれなりに気にならなくなるものだ、と気がつくのはだいぶ後です。

 この「気になる」が高じて、プチ・コレクターへの道を歩み始めることになったのでした。未だに完全にはこの道を逃れていません。とほほ。