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ササクレ屋

2012/11/17(土) くらいの日記

創英角ポップ体の思い出

04:12

◆この2日ほど創英角ポップ体に対する呪詛(なんで流通の人はあれが好きなんだよーもー的なのとか滅びれとか)が繰り返し流れてきてちょっとおもしろかったんですけど、年配の者として調べもせずてきとうなことをいうと、ポップ体のポップはpop musicとかpop artのpopじゃなくてPOP広告のことだと思うんですよね。

◆… 念のためウィキペディアさんを見るとちょこっとポップ体のことも書いてありましたのでやはりそのようです。創英角ポップ体に関してはPOP向けに作られたフォントというより「POPによく使われてた手書き書体を元に作られたフォント」ということになると思います。その経緯を考えると流通の人がやたらこのイケてないフォントを指定してくる理由はセンスというのとはちょと違うかもなあと思います。

◆以下、これまたよく調べもせず書きます(ソースはわたしの思い出)。

◆店頭POPにも流行り廃りはもちろんあります。創英角ポップ体フォントのモデルになったであろう手書き書体的なものは、1983年に三菱POSCAが発売されたあたりですでにひとつの大きい流行りの波となっていたように思います。現代でも「オサレカフェの前に出てる黒板っぽい書体」とか「創作料理もあるこじゃれた居酒屋の本日のオススメお品書きっぽい書体」など、ある程度誰にでも共通に認識される特徴のある書体、「っぽい字」というのがありましょう。ともかくああいう字がかつて日本中どこの量販店でも普遍的に見られた「いかにも店頭POPっぽい字」だったのです。

◆パソコンがなかったころ、店頭POPは基本的には平筆+ポスターカラーかこういう形のペン先の太字のペンで手書きです(筆描きするしかなかったものがペンでも済むようになったという点でPOSCAは神です)。読みとりやすくインパクトがあり重要な箇所(主に価格)にふさわしく、かつ「素早く手書きできる」文字を模索した結果、POPに特化&最適化されていった書体というのがあったのだと思われます。

一般的に普及している複数のフォントで同じ文字列を同一サイズで並べてプリントしたものを用意し、いろんな距離から見たとします。おそらく一番遠くから判読できるのが創英角ポップ体のはずです。いわゆる視認性が良いというやつですね(最近覚えた言葉)。

素早く手書きできるということについては、創英角ポップ体ふうの文字を試しに書いてもらえばたぶんわかります。あの書体、平筆かペン先が斜めった太字ペンでほぼ一発書きできます。

◆店頭POPの最近の歴史というか流れでいうと、かつてPOPは流通小売現場で店員のうちちょっと器用な誰かが業務として書かされていました。手書きPOPのハウツー本やら通信教育までありましたので手書きPOP専属みたいな感じの人もいたかもしれません。ワープロが普及し始めても、自由な色使いで遠目にも判別しやすくインパクトのある書体とサイズの文字を、低コストで素早く大量に書くなら、結局手書きが手っ取り早いという時期がまだまだ続きます。

◆PCが普及し始めて、ようやくはっきりと手書きよりもメリットが出始めます。PC導入の際「今まで手書きしてたものをパソコンで代わりにやる」のが動機なので、「当時の手書きPOP書体的なもの」と同等かそれ以上の効果の出せるフォントが必要とされます。

ここでいう効果とは、10メートル先から見たとき何がいくらで売っているのか瞬時に判別できるかどうか、みたいなことです。もちろん美的であることより「(安さ・商品名が)わかりやすい」ほうが偉いとされます。ワープロがずっと負け続けてきたこともあって「活字」だからというだけで手書きよりありがたいものだという感覚はたぶん現場にはあんまりなかったと思います。活字はラクだけどダメなものであって今まで手書きしてたものがベストなので、パソコンのほうが手書きをマネして近づいて来いという感じです。その記憶がいまだに流通の人の選択に影響を与え続けているような気がします。

◆現在はポップ体にもいろんなのがあるのですが、創英角ポップ体は「手書き時代に上手だと考えられていた手書きPOP書体に一番近い」のと「遠目に見て判別しやすい」という点では抜きん出ているのじゃないかと思います。あとはやはり流通でPCを導入する動機になりやすかった年賀状ソフトとかに付属してて入手しやすかったので「いいフォント」として多くの人に強く記憶されやすかったとかなのかな(推測)。

◆ダサいとか安っぽい印象を受けるのも確かですが、創英角ポップ体好きの流通の人としてはその「安さ」は「リーズナブル」につながる良きもので、デザイナーさんからするとその「安さ」は「チープ」に思えてしまう、というような「安さ」の解釈違いみたいなのもあるのかもしれません。

◆まあそういった経緯があって、流通の人があれを好むのには、センスではなくて経験則というか集合知みたいなのに基づくそれなりの理由がある(あった)といえるのではないでしょうか。すでに無意識かもしれませんし、媒体は店頭POPとは限らないし速く書けるかどうかはもはや関係ないからあれじゃなくてもいいようなものの。

 

◆あ、ぜんぜん話変わりますが店頭POPで思い出したできごと。随分むかし深草界隈のスーパーで、当時CMでやるようになったばかりの「プチシャワー・セペ」を売り出していたのを見かけました。どういう物語があってそういうことになったのかわからないけども「実演販売!」と書き添えられたPOPで、えっココで!?何時から?と一瞬どうしようかと思いました。どうもしなかったですけど。

◆帰るまえにもいっかいそこ通ったら実演販売!は二重線で打ち消されてましたのでいろいろ大丈夫でした。