白い侵略者側の視点

「議論しないのはあまりにも横柄」

大阪のチンピラ府知事が共謀罪についてこんなことを言っていた。

維新だって十分に横柄なんですけど〜。

アメリカ人の物語1 青年将校ジョージ・ワシントン』(西川秀和
 悠書館)読了。

アメリカという国を作り上げた人々を、歴代大統領を中心に据えて
描く人物群像なのだそうだ。初代大統領であるジョージ・ワシントン
だけも5巻ある。

本書はその第1巻。ワシントンの少年期からレキシントン・コンコードの
戦いまでを描いている。

この大タイトルなので塩野七生ローマ人の物語』と同じような感じかと
想像していたのだが、まったく違った。大変申し訳ないが、描かれている
人物の魅力がよく分からない。

物語の中心となるワシントンに対して、初代大統領にして奴隷所有者で
あり、差別主義者との先入観があるからなのかもしれない。それに加え
アメリカ史と言えば、白人視点の主流の流れではなく、インディアンや
黒人奴隷側からの歴史ばかり読んで来たからかもな。

ワシントンに心酔しているらしい著者の「伝えたい」との情熱は分かるの
だ。本書には参考文献は掲載されていないが、残された手紙や日記等、
膨大な資料を読んでいなけば書けない内容なのだろうとは思う。

ただ、文章や構成が気持ちに追いついていない感じがした。「ワシントン
従軍記」みたいのが延々と続く箇所は、「ここまで詳細に書く必要はある
のだろうか」と思ってしまう。

結局は白人視点の歴史なんだよね。いきなり第1章のワシントン家の話か
ら始めるより、何故、イギリスが新大陸に入植したかをダイジェストでいい
から前章として欲しかった。何もクリストファー・コロンブスから描けとは
言わないけれどね。新大陸はイギリス本国の犯罪者の流刑地でもあった
のだから。

インディアンの描写については釈然としない部分が多かった。彼らの話し
合いが長いのは合議制だからし、もてなしの酒に目がないのは元々白人
が持ち込んだものだしね。

誰の所有物でもなかったインディアンたちの土地に勝手に線引きして、
同じように入植して来たフランスと領有地争いしているのは壮大な兄弟
喧嘩みたいなものだし、イギリス本国に対しての独立戦争は親子喧嘩。
巻き込まれたインディアンたちは本当にお気の毒。

後々、ワシントンは「インディアンも狼も生贄となるべきけだものだ」と言い、
インディアン絶滅政策を取るのだが、以降の巻でこういう場面がどのよう
に描かれているのかは気になった。

おまけ。本書では「郷紳」との言葉が多用されているのだが、これは中国・
明の時代の一定の階層を指す言葉ではないのかな。他の国でも使って
いいのかな。