精神科医の本音日記

2016-05-17

覚醒剤の話

f:id:satochan8:20160517224555j:image:medium:left K原さんで話題の覚醒剤のはなし。数年前に入院治療した人は、「外車販売のセールスマンの原因不明の錯乱」という触れ込みで入院してきて、数日間は「爆弾が落ちてくる」とか「拳銃で撃たれる」とか言って汗びっしょりで保護室にいたけど、その後は、スッと大人しくなって、2週間で帰って行ったけど、見舞に来る人々が明らかに裏社会の人達なので、すぐバレた。彼は覚醒剤販売人で、「覚醒剤は用法・用量を間違えなきゃ、実に安全であり、数日間の徹夜仕事や、ダイエットに有効。売る方だって上手に使って貰って、長い間、の上連になって欲しいからね」と言っていた。彼の上司(組の親分)に確認してみたら、「薬局で売ってる風邪薬よりも安全です。先生も要りませんか?」と言われた。でも、その売人は結局覚醒剤中毒で離脱症状身内で手に負えなくなって、当院に入院してきたんだから、ア・ヤ・シ・イよね。生活保護なのに、指輪とかネックレスの派手だった事・・。も1つ、これは10数年前のはなし。路上で全裸の女子大生が保護されて、挙動不審で外来に。瞳がこれ以上ないッテ位拡大していて、髪の毛振り乱して、「きゃー」とか「おー」とか叫んでいた。結果急性覚せい剤中毒だったけど、まあ、動物的な美しさ、というか、見ていて眩しくなるような裸を見せて貰いました。次の日の彼女は普通の人になっていた。ついてきた男は「初めてだったんで使う量を間違えた」とか弁解してましたっけ。

2016-05-10

トイレで死す

f:id:satochan8:20160510203649j:image:medium:left熊本地震で、避難民の突然死が注目されている。その中で、「トイレで死んでいた」という人がいたけど、僕の経験でも、トイレで見つかる死者は少なくない。若い頃は、「トイレで死ななきゃいけないなんて、さぞ苦しかったのだろう」とか「苦しくで、でも、Nsには助けを求めないで、取り敢えずプライバシーの保てる場所を求めて・・」などと同情したものだ。でも、どうしてトイレなのか、ホントの所は良く分からなかったけど、ある時、トイレで死にそうになっていた人を蘇生出来たことがあって、蘇生後、彼女の言う事には、「突然の尿意を催してトイレに行こうと思った所までは覚えている」ということであった。彼女は、多分不整脈で脳虚血でショックになって、それを「尿意」と意識したんだろうと考えられた。彼女の言うには、「苦しいとは思わなかった」と。起立性低血圧で失神した時の症状を「吐き気」「便意」と表現する人は少なくないが、失神なら、むしろ快感であろう。で、それ以後は「トイレで死んだ人も、布団のなかで眠るように死んだ人と同じように、苦しむことなく死んでいったのだ」と思う様になって、後ろめたさから解放されたのでありました。
P.S.:また、若い先生なんかで「餓死は苦しいもの」と信じてる人も少なくないけど、これも餓死途中から生還した人達の話では「少しも苦しくなく、むしろ幸せな気分」なのだそうです。

2016-05-03

救急は3日待ち

f:id:satochan8:20110210214521g:image:left この頃のアメリカ精神科救急の待ち時間は平均3日だと言う。アメリカ精神科ベッド数は10万人対11。これが1日以内になるには10万対40〜60のベッドが必要だ、とFuller Torrey先生が書いていた。3日待て、と言われても、その間誰が面倒見ているのか、調べたけど、良く分かんなかった。そういや以前、救急の待合室で待ってる内に死んじゃった人が居たよね。日本じゃ、1時間も待たせれば大騒ぎだ。ウチは最悪の場合は東京の病院にお願いするけど。。ちなみに日本は千人対2.8。2ケタ違うんだヨネ。で、入院出来たとしてもアメリカでは5日が精々で、入院費も1日5万円オバマケアで保険加入者は増えたらしいけど、標準的な保険では未だに精神科入院治療は受けられないままである。これはやっぱり病院減らしちゃまずいと思ってしまう。ちなみに脱・精神科病院の先駆者のイギリスは4週待ち、この頃評判の高いフィンランドでも3週待ちである、、という現実を大多数の日本人は多分知らない。

2016-04-26

空腹精神病?

f:id:satochan8:20160426203751g:image:medium:left K君(統合失調症、45歳)が夜中に徘徊するようになった。元から疎通が困難なので、どうしてそうなったか、全く見当がつかず、睡眠薬を増やしもダメ内科や、泌尿器の先生に診てもらっても、ダメ。昼間の言動には変化はない。そんな徘徊が3週間ほど続いたある日、夜勤のスタッフが持っていたお菓子を勧めてみたら、喜んで食べて、その後は良眠であった。で、以後寝る前にお菓子を少量食べて貰ったところ、これが見事に効いて、その後は徘徊がピタッと治った。うれしくなって、その後K君以外の夜間徘徊者にお菓子療法を何人か試してみてもらったが、効果はゼロ。患者の治療には個人差があるのが痛感しました。
PS:これでは字数が物足りないので、追加の本音。精神科病院ではカロリーの管理が簡単に出来るけど、同じカロリー摂取でも、痩せてく人、太る人がいる。1600でも太る人、2600calでも痩せてく人がいるのだ。これは体質だと思う。あと、オランザピン等で体重が増えるのは、カロリー摂取とは別の機序が有るのでは、と疑う人が多いけど、でも入院中に太る人はまずいない。太るのは、皆退院後。だから僕は、オランザピン等は唯食欲亢進作用があるだけだ、と信じているんです。

2016-04-19

えっ?!

f:id:satochan8:20160419211704j:image:medium:left 結構面倒見の良い家族と思っていた母が、K君(45歳男)のECT電気けいれん療法)に難色を示した。ECTの評判が世間ではイマイチだから不安なのだろう、と思って会って話して見たら、「KがECTで良く成って、退院なんて事になったら実に困る。もう家にはKの居場所はない」との事。暫くこの母が何を言ってるか理解出来ず、10秒後に何を言ってるかは分かったが、僕が聞き違えた(この頃耳が遠くなった)と思って、2回聞き返した。母は恥じらう事もなく、はっきりと、f:id:satochan8:20121023221750j:image:small:left真剣な表情で、断固とした決意で、同じ話を2回繰り返した。家には次男夫婦が同居していて、その嫁との約束で、Kは退院させないという事になっているらしかった。「良くなっても家族に相談せずに退院させることはしない」と約束した後に、K君はECTを受ける事になった。で、その3か月後、本人もイヤがる様子はないし、暴力的な所は軽減したので、病棟スタッフにも好評でしたが、残念ながら「退院」には程遠い状態でした。K君の母は、アンマリ効果のなかったK君を、ウレシそうに外泊に連れて行ったのでありました。親の愛って複雑ね。