精神科医の本音日記

2017-03-21

高齢者の運転

f:id:satochan8:20170321214610g:image:medium:right S氏は76歳躁鬱病男性、単身生活。片道2時間かけて自分で運転して当院に通院していた。この前来院した時、受付で転んで起きれなくなった。入院も勧めたが、「どうしても帰る」と言うので、皆で介助して車に乗せた。もう車での通院は無理だ、と皆思った。地域の包括支援センターに相談したら「実は地元でも困っている」との事。人身事故には至らないが、車でもあちこちでぶつかって、歩いても転倒するのだという。誰が説得しても聞き入れないので、「何とかなりませんか」と反対に頼まれたけど、彼の躁鬱病寛解状態で、認知もない。唯の頑固者として扱うしかないのだ。その彼が突然死した。地域の民生委員死後2日の彼を自宅で発見したらしい。病名は脳卒中と言う事。運転中じゃなくて良かったね。
f:id:satochan8:20170321214918j:image:medium:left 道交法改正認知症の診断を医師することになった。医師会は「かかりつけ医が引き受ける」と強気の姿勢。で、「手引き」と称するものを見てビックリ。診断は問診+HDS-R(長谷川式認知症テスト)だけなのだ。「HDS-Rを認知症の重症度の診断に使ってはいけない」、と作った長谷川先生も言ってるのにね。ゲームセンタードライブゲームの方がナンボかましじゃあないですか? それにしても精神科医の影の薄いこと。精神科医って政治には無力なんだよね。患者には威張るのに。

2017-03-14

福島原発から22kmの高野病院の話

f:id:satochan8:20170307204335j:image:medium:right 高野病院原発事故後も福島県双葉郡で唯一、入院医療を続けていた精神科病院)で唯一の常勤医だった高野英男院長(81)が去年12月火災で死亡。その高野病院の存続に向け、全国から町に寄付金が寄せられている。町はボランティア医師の交通費や宿泊費を支給するため、ふるさと納税を利用した寄付を募集したところ、翌日には三百万円を超える寄付が集まった。支援する会の会長も務める遠藤智町長は「高野病院が存続し、被災地医療体制を崩壊させないよう、全力で取り組みたい」と話している・・・と、新聞で読む限り、心の温まるニュースである。でも、事情を知るW氏は、「マスコミ情報操作している」と手厳しい。院長の死は、当直中のダバコの火の不始末が原因らしく、娘(理事長と事務長兼務)婿は医師であるのに、別の病院で働いていて、しかも院長の死後も高野病院を継ぐつもりはないらしいのだ。W氏は病院存続云々問題は、実は「良くある家庭内の不和なのだよ」と断言した。だとすると美談でも何でもなく、返って醜聞よね。2月から2か月限定で院長をしていするのは、36歳の外科医らしいけど、なんか、入院中の患者が可哀そうな気もしますけど。。。

2017-03-07

親の病気、子知らず

f:id:satochan8:20170307215630j:image:medium:right Nさん56歳女、夫が死亡後3か月。「様子がおかしい」と親戚に連れて来られて初診。支離滅裂でそのまま入院。どうも長年の統合失調症のようなのだが、「親族も、近所の人も、おまけに子供(30歳男)までが「今までは何でもなかった」と言うのが不審だ」と担当の若いM先生は言っていた。その全容が判明したのは2年後。患者本人が、「実は結婚直後同じ様な事が有って、ダンナが何処かから薬を調達してきていて、それをずっと飲んでいた。ダンナが死んで薬がなくなって、で、今回の事が起こった。ダンナが他人にはナイショにしろ、と言うので今迄誰にも言わなかった」と自白したらしい。M先生は僕がその時どうして「長年の」と分かったのか不思議がっていたが、だって、56歳初発は有り得ないでしょう。それに、親の精神病は子供には分からないものなのだ。若い先生にちょっぴり見直されたようで、少し嬉しくなりました。年上の同僚はおだてて使うのがコツですよ。

2017-02-28

病前性格

f:id:satochan8:20170228205602p:image:medium:right 精神病の原因は、教科書的には「不明」だけど、患者さんの発病前の性格が関連する、と言う「迷信」は根強く残っている。この前、某大学の教授も大勢の聴衆の前で、「うつ病には、成りやすい性格ってのが有るんですョ」って言っていた。確かに昔は、執着気質、とか、メランコリー親和性性格、とか言われていたけど、統計的には証明されていないのに…。その教授は「ドイツでは人格的に低レベルの人がうつ病になるってのが常識です」って続けていた。うつ病現役の僕としては、確かに自分の性格的な欠点が発病に関係していることは認めざるを得ない。でも、人格的に低レベルっていうのはアンマリの気がする。「世間があって、世間に適応出来ない人が精神病」とは定義だから認めるけど、その世間が正常なのかどうか、という問題はあると思う。ヒトラー東条英機は当時は精神病とはされなかったけど、当時の世間は間違いなく異常だったのだ。世間が異常な時に、その犠牲者として、誰かが精神病になるって事があるのではないか? 時代がおかしな時は、マトモな人から率先しておかしくなって行くのではないか?とも思う。ホロコーストで生き残った人達は皆「マトモな人は皆死んでしまった」と言っているし、実際生き残った人がイスラエルでやった事は、マトモじゃない。じゃあマトモな時代、マトモな世間なんて何処にある?と言われちゃうと、返す言葉はない。やっぱ、生物として生まれたからには、どんな環境においても、「適応してナンボ」なのは間違いない。でも、「うつ病になる」ことが生き残る手段なのかも知れないとも思っているのですね。

2017-02-21

時給300円

f:id:satochan8:20170221203519j:image:medium:right びっくり。初めに聞いた時には何かの冗談だと思った。統合失調症65歳で定年後の再就職で、ハローワークで初めに紹介された会社がブラックで、1日10時間も休みなしで働かされるので3か月で辞めて、「1日5時間で働く仕事がある」と言うので働き始めたと言う。ハローワークに確認したらホントの話で、「障害者雇用の枠で、本人もそれは承知してるハズ」との事であった。障害者は時給300円位が相場そうな。仲介業者がいて、その業者との連絡の為にスマホが必要と言われて、月1万数千円スマホの契約をさせられて、その日の朝に仕事場と集合場所の連絡が有ると言う。うちのソーシャルワーカーに聞いたら、高齢者は、普通の条件では若い人に敵わないから、ブラックでも言われる通り働くか、そうでなかったら、半分ボランティアのような、時給の低い仕事しかないのが常識、と言われてしまった。でも、今迄普通に働けていた寛解患者が定年後とたんに障害者ですか?!