精神科医の本音日記

2016-06-28

がん放置療法の波紋

f:id:satochan8:20160628211916j:image:medium:left 去年は近藤先生のがん放置療法が話題になりましたが、先月、その近藤先生の信者(子宮癌、49歳女)が精神科に入院して来た。3年前に癌が見つかった時は手術を勧められたが、拒否。今年2月にメタメタで近くのホスピスに入院したんだけど、そこで「スタッフの態度が気に入らない」と騒ぎ出し、でも、家族が退院を拒否して、僕の知らない精神科開業医が「躁鬱病の躁状態」と診察して、当院に送って来た。同僚のM先生が担当し、「癌の治療や手当は何もしない」という事で入院を引き受けた。でも、子宮からの出血が続いて、貧血(Hb5.4)。当然全身倦怠感で、「苦しいので助けてくれ」、「せめて輸血でも」と本人、家族が言いだした。「治療拒否を撤回するから助けて」とスタッフにすがるが、「今さら何を」とM先生(多分意地になってる)。患者の姿は、所謂癌性の悪液質(カヘクシー)で中世の絵巻に出てくる餓鬼状態で、何かヘドロのようなニオイもする。精神科診断の適否は別にしても、可哀そうで哀れで見ていられない。そういや僕が学生だった頃、○○サナトリウムでこんな人々がいた事を思い出した。癌放置療法はやっぱりヤ・バ・イ・ぞ!!。中村仁一先生などあちこちで「死ぬなら癌で」と言いふらしているが、それは、年取って、「加齢現象としての癌は」、ということだと思う。僕は絶対引き受けないことにしましたね。

2016-06-22

夫婦で入院

f:id:satochan8:20160618205916j:image:medium:left 夫は躁鬱病50歳で妻は統合失調症45歳。20年前に結婚し2人で支え合って生きて来た。今まで再発が夫4回、妻3回。片方が再発した時は片方が保護者になって医療保護入院なんて事もあった。今年1月に夫が躁状態で再発し、任意入院したけど、1週間で夫が「退院する」と言いだして妻はしぶしぶ承知した。その後2人とも消息不明になって心配していたら、4月に来院し、実は夫の実家の近くの精神科病院(夫が初発時に入院していた)に2人で入院していたのだという。外来で入院を勧められた時、夫が「妻も入院するなら入院を承知する」と言いだして、妻はしぶしぶ承知したのだと言う。病棟は別であったが、お互い面会は自由であったと言う。妻は「ご飯の支度しなくて済んだ」と言っていたが、そんなおとぎ話のような事が有るものか、と僕は疑って、その病院に問い合わせたら、ホントの話で、その病院では時々そういう裏ワザを使うのだ、と笑っていたが、電話口のその先生のやさしい声(たぶんその土地の方言)が印象的であった。その話を当院非常勤のU先生(72歳男)にしたら、「昔はそういう事は時にやったよね」、「今じゃ法律でがんじがらめ精神科病院だけど、あの頃は自由だったよな」なんて懐かしそうに話してくれた。へー?

2016-06-14

休職者多発の原因

f:id:satochan8:20160614224401j:image:left 統合失調症45歳男、独身。2回再発後、ずっと寛解状態で、20年間服薬しながら働いていたが、ちょっとした人間関係で躓いて、「自分でも少し考えすぎだとは思う」と言ってはいたが、その後落ち込むことが多くなり、「少し会社休みたい」というので、1週間位のつもりで入院して貰ったのが1年前。状態が少しも改善しないまま、傷病手当金も出なくなり、会社の人はとうに諦めて面会にも来なくなった。促されて行く作業以外は、ベット周りに一人ですごしている。隣のベットの10年来の長期入院中の慢性患者と全く違いはなくなってしまって、「何時でも働けるけど、もう少し入院している」と妙な自信。同僚は「うつ病の併発ってことも」と。若い先生は「PTSDみたいなトラウマが潜んでいませんか」と。某大学の教授に診て貰ったら、「まあ、無為自閉。統合失調症の慢性化」とツレナイ。・・実は、数年来、僕の患者で他にも、ずっと働けていた人達が休職→退職となるケースが続いているのだ。精神病患者だけでなく、神経症の患者も、また、飛び込みで休職の診断書貰いに来る「新型」うつ病患者にもいる。僕の考えは、「日本の労働者労働環境の急速な悪化」が起こっているのではないか、と言う事だ。アンマリ大風呂敷すぎて、匿名でしか言えないけど、結構本気で信じているのだ。僕の労働環境が悪化してるだけなのかも知れないケド。↑の表に示したのは、公務員長期休職者だけど、実際民間の会社でも増えている。何でも個人の病理のせいにするのは精神科医の悪い癖だと思う。

2016-06-07

老衰のハズが・・

f:id:satochan8:20130212213025g:image:medium:left 躁鬱病81歳女性。心筋梗塞大腸癌で手術後。「最近食事量が落ちてきた、うつが再発したのではないか」と家族。確かに表情も優れず、動きも鈍い。維持で飲んでた坑うつ剤を増量したら返って動きが悪くなり、終日臥床となってしまったので、とりあえず入院してもらったのが去年の春。点滴しながら坑うつ剤をスイッチしてたら、急性肝炎になってしまって、坑うつ薬を中止せざるを得なくなった。すると、Hさんは食事も取らずに只管寝てるだけ。3か月で認知症状が顕在化し、夜間せん妄も出現するようになってしまった。老人科Drに相談したら、「これは老衰だろう」という話になった。家族の同意を得て、そのまま500ccの点滴1本の見送り体制になって、2週間後、「お腹が空いた」と言い出した。その後食欲も出て、身体は急速に回復したが、急速に認知が進み、1か月のうちにみるみる重度の認知症者になってしまった(CTでも梗塞像はなく、年齢相応の委縮のみ)。躁鬱病者はボケるのが早いと言われてはいるけど、こんな患者初めて。認知症は奥が深い。

2016-05-31

本居宣長の本音/建前

f:id:satochan8:20160531204642j:image:medium:left 彼は江戸時代国学者で、「天照大神は太陽であり、彼女が現実世界を作った。その神の子孫が統帥するのが日本であるから、世界の国の中では日本が一番偉い。外国の人の信じる、天帝とか仏とかは天照大神の世界創生の話が間違って伝わっただけだ」と言っていたらしい。上田秋成が、「日本は余りに小さい。外国には外国人の崇める神があり、どっちが偉い、という事はないのではないか」と反論したが、それは「学問が浅い」と窘められて終わった(日の神論争)。当時の日本の世論では宣長が主流で、その後の日本も宣長の流れで進んでいったようだ。でも、宣長の仕事はお医者さんで、これは儒教の世界。そして彼のお墓は浄土宗のお寺。当時は天皇ですらお寺にお鎮まりになったようだから、今の常識で物を言うのはオカシインだろうけど、「言ってる事とやってる事が違うのではないか」と思ってしまう。彼は本気で太陽が神だと信じていたのだろうか? 自分が死んだら何処へ行くと思っていたのだろうか?現代日本の国家主義者の第1代がこの本居宣長ではないか、と思うのである。