精神科医の本音日記

2017-05-23

アメリカの認知症者の介護問題

f:id:satochan8:20170523210619j:image:medium:right アメリカ認知症者は現在530万。全て自己責任のお国柄アメリカ。国民保険がようやく出来たと思ったら、それも元に戻ってしまった。そのアメリカでは国の主催する介護保険などは当然ない。で、ナーシングホームはまるめで、年800万位かかるらしい。メディケイドには色んなサービスがあるらしいが、貧乏でないと入れない。で、財産を隠してメディケイドに申請する不正行為が氾濫しているらしい。でも、アメリカでは不正(アンフェア)は通用しない。となると、出番は弁護士だ。カリフォルニア弁護士はみな、「全ての財産を他人の名義にして、5年後にメディケイドに申請すれば受理間違いなし」とやっている、という話がある雑誌に載っていた。これは不正にはならないにしても、眉唾だ。認知症発症5年前にそれを予知することなど出来はしないハズだ。多分、「後見人を私にすれば・・」という話が後に続くのだろうね。アメリカでも日本でも老人は金持ちが多い。その金にたかるのは、日本では福祉さんで、アメリカでは弁護士さん、という落ちなのだと思いますヨ。

2017-05-16

親父殿の近況

f:id:satochan8:20170515215748p:image:w360:right 僕の親父殿90歳は、脊椎圧迫骨折でただ今入院中。4人部屋のベッドで終日寝かされている(もしもの抑制には同意した)。81歳母が毎日面会に行くのだが、お互い耳が遠いので、大声での会話になってしまったようで、ある日、同室の患者さんに「ウルサイ」と注意されてしまった。それで親父が思いついたのが、伝声管昔の軍隊では、周りがうるさくて会話が出来ない時はそれを使って会話したのだそうな。何のことかと思ったら、ただ新聞広告を丸めただけのもの。でもこれで夫婦で心ゆくまで会話が出来る様になったのだと言う。で、一人になった後、その伝声管を眺めていると、「今まで如何に自分が妻に苦労を掛け続けてきたか」の思いが胸に溢れて、涙が止まらなくなったのだと言う。それで、自ら名付けて「愛の伝声管」。これからの病院の必需品ですかね。

2017-05-09

ギャンブル依存・再び

f:id:satochan8:20110906205611j:image:medium:right2011.9.6にも書いた話。依存という言葉は曖昧だ。人間は常に何かや誰かに頼って生きている。水や空気や家族や文化。お金や警察。初めは「〇〇依存で治療が必要だ」と言われれば言われた方はビックリして少しは自分の生き方を反省したかも知れないかったけど、でも、今や「ギャンブル依存」は立派に世間通用する病名となってしまったようだから、ビックリ効果は消滅してしまった。そのビックリ以外にその病名に何か意味が有るのかというと、多分、何もない。精神科医療の現状はお寒い限りで、いつものお題目(早期発見・早期治療)を唱えるだけである。昔の慢性アルコール中毒が病名が変わって、アルコール依存になった時、世界中にアルコール専門外来が出来、専門の入院病棟までできたけど、結局大した成果が上がらずに現在に至っている。治療1年予後は、断酒成功2〜3割、死亡2〜4割とお寒いままのようだ。タバコ禁煙外来とか称して、これも世界中に専門外来が出来たけど、上手く行かない。覚せい剤も、鎮痛剤も、依存者は増える一方だ。僕に言わせれば、依存は生きてる証拠だから、治らない・治せない。では依存を法律で取り締まれば、という意見も出るが、それは実験済み。昔のアメリカ禁酒法では、見事に失敗した。「法律でも医療でもどうしようもない」と書くと絶望的に見えるが、「それが本能ってもんだ」と居直れない訳でもないと思う。人生は四苦八苦なのだ。

2017-05-02

統合失調症の予後

f:id:satochan8:20170502211222j:image:w360:left 後進国先進国のウソ。WHOでは大分前から、統合失調症予後後進国の方が良いと主張している。地域コミュニティー雰囲気が回復的に作用するのだそうだ。で、治る病気なんだからと早期発見・早期治療を薦める。でも、治療薬もハロペリドールフルフェナジンクロルプロマジンだけで、月1回のNsの訪問と、年に数回のGPの診察じゃ、服薬指導だって出来はしない気もする。「そんなもので治療になるものか、初発の理想は入院だ」とも思うけど、そんなこと言うとWHOの建前が崩れるから言えないんだろう。
後進国一見予後良好に見えるのは、重症患者は地域からはじき出されて、居なくなる(死んじゃう)からだと僕は思う。重症の患者が地域でどうなって行くか、アメリカでの最近の50年を見れば良く分かる。患者は地域から排除され、ホームレスになるか、施設か刑務所に行くかの3択を余儀なくされたのだ。人権尊重の国ですら受け入れられないものを、どうして後進国が受け入れようものかね。ちなみにアメリカでの統合失調者の平均寿命は56歳。そして、初発の精神病状態の患者さんの1年後の死亡率は2%で、一般人口の24倍(Michael Schoenbaum)らしい。統合失調症患者さんは、後進国で生まれても、先進国で生まれても、どっちでもお先は真っ暗、という悲しい現実。でも、日本で入院中の統合失調症患者さんは長生きしてますね。

2017-04-25

うつ病の予後

f:id:satochan8:20170425213544j:image:medium:rightうつ病は治りにくい」といわれる様になった。昔は「うつ病は3ヶ月位で治って、その後再発はするにしてもその都度治るもの」だった。それが、何時の間にか3が6に、6が12に、12が24になって、この頃は「うつ病は治りにくい。慢性化しやすい病気だから、治っても予防的に治療を続けた方が良い」という話になっている。治癒の基準が高くなっているのだ。期待される能力が、「最低のノルマの達成」でなくて、「自己実現」になってしまっている。そんなの、発病前から出来やしなかったと思うけど、患者本人が、「いや、本当の自分はこんなレベルではない」といわれると、否定はできない。「この挫折が患者さんの人生にとってポジティブな意味を持つまでが治療」とか言い出す医者も出てきて、患者は自分の目標レベルがますます上がって行くのだ。薬屋さんのインボーも有るんだろうけど、実際、欧米の精神科医の中には、「抗うつ剤にも依存があるのだ」と断言する人も出てきた。フィンランドのデータで、2008年に2.6万人が抗うつ剤を処方されたが、5年後45%の人が薬を続けていたという。アメリカ議会委員会では、抗うつ薬の処方を受けた、2013年の540万人の1割程度が依存であると結論した。現代の精神科医が、何でもかんでも病気に仕立て上げて、「治療します」と大風呂敷を広げたまでは良かったけど、その架空の病気が患者の身体を蝕むようになってしまって、現代の精神科医手に余り始めているいるようだ。その精神科医にすれば自業自得だけど、被害の患者は哀れだよね。