精神科医の本音日記

2016-08-30

ビビった

f:id:satochan8:20120501212538j:image:medium:left アル中老人(71歳男)が自殺企図(首吊り)で、失敗後徘徊中に警察に保護されて、当院に任意入院した。「本当に死のうと思った」と言うが、首に紐の跡もなく、そのきっかけも彼女(65歳女)に振られた、とナサケナイ。3日して取り敢えず酒が抜けて、本人の希望通り退院になったが、その後、「家族からクレームが入って、事務では対処しきれない。家族は主治医との面談を希望している」となって、息子に会ったんだけど、この息子がピカピカのヤクザ。チンピラ3人従えて診察室にご登場となった。広島弁で「アル中だからってちゃんと治療しないんだったら許さんぜヨ」と始まった。何をインネンつけられるのかと思って、久しぶりにビビった。でも、その後は普通のアル中家族の悩みの相談で、「若いもんに見張らせていても、いつの間にか逃げ出して、ツケで酒を飲むので、何とかならないか」、との事。で、アル中の家族の会を紹介して、終わりになったけど、いつもは、アル中家族には、「身内の者が隔離拘束しても誰も文句は言いませんョ」と言うんだけど、今回は怖くて言えませんでした。

2016-08-23

認知症治療の治療ガイドライン?

f:id:satochan8:20101215204847g:image:medium:left 認知症に伴った精神症状、いわゆるBPSDに対しての、最近のガイドラインは全て、先ず薬物療法だけ、を行う事になっている。そして、非薬物療法効果のない時に限って、慎重に、効果とリスクを十分検討し、本人とその家族に十分なインフォームド・コンセントをした後に、なるべく少量を短期間使うこと、となっている。認知症を含む精神病患者の隔離拘束が社会問題化し、「行動制限は治療ではない」と言われだし、今度は、患者への向精神薬投与までも標準的な治療とはされないような時代になってきているようだ。
しかし、ガイドライン推奨の非薬物療法、と言うものの中身は、要するに上手な看護介護に尽きてしまっているようであり、だったら初めから病院などに来るな、とすれば良いではないか、と思ってしまう。ガイドラインの解説などには、「患者の怒りは周囲の不適切な刺激に対する反応である」などとあるけど、適切な対応をしているのにもかかわらず興奮するから問題になっているのであり、現場の問題現場の人間の問題に摩り替えるのは宜しくないのではないか? と思う。大体、ガイドラインは「認知症の治療」というけど、認知症は「治療できる病気」ではなく人間の必然の運命なのではないか? 「老人ににやさしく」に異論はないが、医者に「薬を使うな」と意見する前に、「人間は何時か死ぬものだ。死ぬ前には歩けなくなり、食べれなくなって、ボケてくるものだ。人間の寿命は医者には変えられない」と先ず、これらガイドライン冒頭に書くべきではないだろうか。
 

2016-08-16

近頃の老人は・・

f:id:satochan8:20160816211321j:image:medium:left 老人の個性というか病状というか、10年前とは大分変わって来たように思う。とにかく皆ワガママで、子供っぽいというか、我慢が足りず、自己主張ばっかり強い割にノミの心臓で、痛みや悩みにはカラッキシ弱い(2013.8.13参照)。そう思ってたのは僕だけでなくて、医局の同僚は殆ど同意見だ。で、世代の話になって、つまり団塊の世代が続々と入院してきていて、彼らが若い頃大学で好き勝手な事をして先生達を困らせた事(安保反対等)と同じ事が、半世紀後の現在の病院で起こっているのだ、という結論に達した。現状の問題は、血糖や血圧や記憶力の問題ではなくて、彼ら団塊世代のイージーで安易な人生にあったのだ!で、彼らの後始末ばかりをさせられてきた我らポスト団塊としては、一致団結して、一切の妥協をせず、彼らがベット冊や点滴台で武装して攻撃してこようとも、怯まず脅えず、拘束も辞さない断固たる態度で、医師としての職責を全うするぞ、と皆で、左手を腰にあて、右手の拳を突き上げたのでありました。で、その話を団塊ジュニア世代看護師にしたら、彼らも同意見で、「あのワガママぶりは、自分の親たちと全く同じだ」と賛同の拍手でありました。

2016-08-09

暴力は減っている

f:id:satochan8:20160804213712j:image:w360:left 世界には、犯罪、テロ、戦争、内戦、紛争レイプジェノサイドなどの暴力事件が溢れている(様な気がする)。世界で毎年160万人以上の人が暴力被害で死んでいるらしい。アウシュビッツ収容所での犠牲者数が150万であることを考えるとこの数字がいかに凄いかが理解される。生物は総じて、「内部の者には親切に、外部の者は攻撃し、自分の遺伝子繁殖の為なら何をしても良い」というルールに従って生きているのであり、人間もその例外ではない。生物の遺伝子がすでに利己的なのだ、というのが最新の理論であるようだ。しかし、ハーバード大学心理学の教授のスティーブンピンカー氏によれば、統計的データによれば、人間の暴力による死亡率は、古代から中世近世になって行くにつれ、ヨーロッパだけでなく世界中で、減り続けているらしい。それは9.11以後もそうなのだ、と2014年に追加発表があった(←グラフ参照:赤棒は初出時)。彼によると狩猟時代の人類は2割位の暴力死亡率であったのが、農業革命で1/5になり、そして近世啓蒙主義の文明の広がるなかで、1/10-50になったのだ。人々はいつも統計データでなく、記憶に残った特定例をもとに判断するので、「世界の暴力が増えている」と錯覚するらしい。例えば教科書が最近の紛争を頻回に取り上げるなど、歴史的な近視眼に陥っているし、また、大量破壊兵器が広まって、1回の暴力での殺傷力が増大し、また規模が増大し、1回の暴力の被害がけた外れに大きくなっているから錯覚するのであろうという。ちなみに、歴史上の暴力死亡率のダントツNo1の事件は8世紀の中国の安録山・史明の乱で、当時の中国人の2/3がこの乱で死んだらしい。No2は13世紀ジンギスカンの世界制覇、No3は中東奴隷貿易関連死、と続いて、第2次世界大戦は9位。そして、暴力死だけでなく、暴力犯罪も、レイプも、虐待も、統計的には減っているのだと彼は断言している。つまり、現代は歴史時代よりましな時代なのらしいのだけど、それは、彼によれば人類の進化であるらしい。本当なのかしらん?

2016-08-02

レロス島の現在

f:id:satochan8:20160708212948j:image:w360:left ギリシアエーゲ海に浮かぶレロス島。元イタリア海軍の施設があった。それがギリシア返還後の軍事政権時に政治犯収容所になり、浮浪者の収容所になり、いつの間にか精神病院になっていて、1980年台に、精神障害者鎖に繋がれて裸で収容れているのがバレてスキャンダルになった。島ぐるみの患者虐待が、これが本当にヨーロッパなのか、と衝撃的であった。その後は「EUの後援でイタリアのバザーリア一派が病院の改革解放を進め、ソーシャルファームなどの手法で患者が地域に溶け込んでいった」ハズであったが、実は財政難などで改革開放は挫折し、残された重症患者数百人(最盛期は3300人)の医療品どころか食料も慢性的に欠乏していた、とニュースで知ったのが、4年前。で、去年のパリの自爆テロ犯のウチ2人がレロス島経由でヨーロッパに入っていた事が判明したと知って、またビックリ。この7年間で九千人もの難民がこの島を経由していたのだ。10年位前より行き場のない難民が島のあちこちで生活しだすようになり、元精神病院にも住みつく様になっていたが、ついに今年の2月に、正式に精神病院の施設の一部を難民収容に充てることにした、という。遠くの日本で正しい情報は良く分からないけど、元政治犯収容所だった所が精神病院になり、今度は難民収容所になるらしい。患者と難民が同じ施設に入ってもいるらしい。ヨーロッパ難民に対する本音が良く分かる話ではナイカ。メルケルさん、危うし?