ドイツの精神医学学会の謝罪

 ドイツの精神医学精神療法神経学会が、ナチス時代にドイツ精神医学の名のもとに強制的に断種され(去勢)、殺害された大勢の精神病患者に対し、正式に謝罪を表明したという記事と、その謝罪表明の内容が今年の精神神経学雑誌の8月号に載っていました。ナチスに協力した当時の多くの精神科医人間として恥ずべき行為をしたのであり、今後はドイツの精神科医あらゆる人間の尊厳を守ることを誓う、ということでありました。
 しかし、です。ナチス時代には<遺伝病子孫予防法>という法律があり、その法律では、精神科医に治癒不能と判断された精神病者は毒ガスで安楽死させる事になっていたのであります。法律を作った人は大いに反省してもらうにしても、当時の精神科医は法律を守っただけであり、法律を守ったことを反省しろ、というのは何かおかしい気がします。精神科医は法律を超越する存在とでもいうのでしょうか? 確かにヒポクラテスの誓いには、<私は能力と判断の限り患者に利益すると思う養生法をとり、悪くて有害と知る方法を決してとらない>とありますが、これは治療法についてのことであり、法律を破っても良い、ということにはならないんじゃないか、と思うのであります。おまけに戦後70年も経ってから謝罪しても余り意味がないような気がするのですが、どうでしょうか?