鋏で舌を!

 精神病の人はよく自殺を試みる。で、試みた後入院させられる。で、退院するとまた自殺を試みる。以前も書いたけど(私の自殺企図入院者の臨床s3.myopenarchive.org/season1_doc_org/472.doc)、僕の経験では、そうやって企図を平均2.5回繰り返し平均3.9年で自殺完了となってしまう。
 3か月前、自分の舌を鋏で1/4位切った統合失調症者が入院になった。彼は15年で4回の企図歴を持つ。始めは過量服薬、次は飛び降り、3回目は服毒、4回目がリストカットで、今回が5回目。切ったけど痛くて途中で止めて、当院の口腔外科に自分で来院した。僕は、こんな企図を経験したのは初めてで、お陰で焼き肉屋で牛タンが食べれなくなってしまったし、鋏を見ると動悸がするようになってしまった。入院後は大人しく縫合手術も受け、再度の企図もない。毎度そうなんだけど、彼は企図前には全くそのそぶりがない。通院も規則的だし、企図の予測は不可能だ。企図の理由を聞いてもはっきりしないのも今迄と同じだ。彼の舌の回復は順調なのだが、家族は「もう2度と退院はさせない」と言っている。僕は「自殺する気なら院内でも出来る」と反撃はしているが、説得力はいまいちだ。
 「鋏で舌を切れる気合があれば、人生怖いものなしだ」と励ますのはどうかしら…。