孤独死寸前

 精神科救急で、「包丁持って何か叫んでいる老人」を受けた。やってきた80歳の老人は、意識はもうろうとし、不潔で異臭を放ち低体温で衰弱していた。某内科に通院中であったが、そこで「精神科に」と言われた、という。付いてきた大家と救急車のスタッフに拝み倒されて、とりあえず入院してもらったが、次の日当院内科先生の診断は、飢餓状態。彼の予想通り点滴で数日後には元気が出てきて、意識も正常化したのは良かったけど、彼は、生活保護を受けているのに3か月電気水道ガスは止められていて、一緒に住んでいた息子は離婚した妻の所へ行ってしまい、1か月前に転んで足を挫いてから、「めんどくさくなって何も食べないでじーっとしていたのだと言う。生保の担当者は、2週間前に本人に会いに行った(ドア越しに会いたくないと言われた)と言うが、本人は覚えていないと言う。何故包丁持って道路にいたかは、結局誰にも分からなかった。なるほどこれが孤独死か、と思った人でした。でも、元気になったら、これが頑固でわがままな人で、退院の時にも感謝の言葉もなく、捨て台詞が、「何で精神科に入れたんだ」。周りの人が彼を敬遠するのが良く分かるような碌でもない人でした。医者が患者のこと「碌でもない」なんて絶対言っちゃいけないんだろうけど、社会的には「セルフネグレクト」の問題になるのでしょうけど、でも、ホント、実際、碌でもない人っているんだよね。