点滴1本で50日!

 僕の病棟の、認知症のIさん(70歳男)が次第に医局の注目を浴びるようになって、1か月、遂に息を引き取った。Iさんが入院したのは1年前。末期の肝臓癌が見つかって、また、認知症も進行し、寝たきりになったのは去年4月。嚥下困難になって、IVH(点滴治療)始めたのが8月。延命治療はしないことに決まって、点滴量を漸減することにしたのが、10月。で、ついに、点滴1本(500ml)になったのが12月。内科医によるとその後遅くとも2週間位でご臨終になるはずであった。それが、4週間を過ぎても意識は明瞭で、肌つやも変わらない。点滴を中止する勇気もないので、そのまま1本を続けたが、40日過ぎても血圧も下がらず、「密かに起きて何か食べてるに違いない」と思う位元気であった。50日後、遂にご臨終となったが、その前の日まで全くバイタルには問題がなかったのでした。人間の身体の偉大さを改めて感じさせられましたが、治療せずに看取る、というのも言うは易く行うは難しで、結構しんどい毎日で、お見舞いの家族同様僕達もかなりほっとしている事も事実であります。アメリカでは治療しないと決めたら点滴1本しない、という話で、そうなると、数週間でご臨終になるそうですが、日本でも何れそうでもしないと病棟が足りなくなる事は間違いないようですがネ。