イギリス尊厳死の現在

患者中心医療のイギリスでは、安楽死はまだ違法だが、スイスに行って自殺する分には、お咎めはない。尊厳死(強制的な栄養や水分の補給はしない)は1990年代にすでに合法になっていて、、それで出来た高齢者終末期のガイドラインリバプール・ケア・パスウェイ。みるみる普及し、病院で死ぬ人の3割くらいがこのパスウェイで臨終を迎えるようになった。日本でも素晴らしいパスウェイと称賛され、マネするところも出てきた。でも2010年くらいから雲行きが怪しくなってきて、「患者や家族の同意が曖昧のまま、高齢者が過鎮静され、飢餓と脱水で苦しみながら死んでいる」と内部告発が続き、遂には2014年に使用が禁止されてしまった。で、代わって出たNICEのガイドラインには「終末期でも脱水にならないよう配慮すること」と議論が元に戻ってしまったみたいなのだ。「苦しまずに静かに死を迎えたい・迎えさせてあげたい」と思う気持ちは同じでも、患者が自力で水分を取れなくなった場合、点滴をするかどうか、何時からするか、どの位するか、実際悩ましい。「その死に実際尊厳があったのかどうか」は検証しようがないままのだ。中村仁一先生は、脱水死は苦痛がない、と主張されるが、脱水→せん妄は結構起こり、せん妄では平穏死とは言えないでしょう。家族だけでなく看護師にも「脱水死は虐待だ」、と信じる人も少なくない。同僚の内科医は、点滴1本(皮下注)が最良だ、が持論だけど、まあその辺が現在の病院医療のレベルとも思う。