フェルドマンの日本絶滅説が面白い

池田信夫blogを通して日本国の研究 不安との訣別/再生のカルテ:「お鉢が回ってきた日本」というモルガンスタンレー証券経済調査部長 ロバート・A・フェルドマン氏の論文を読んだ。けれども、日本語訳? のためもあるのか、なんだかワケが分からない。
フェルドマン氏によると、今の日本(経済)は博物館に置かれている恐竜のようで、すなわち絶滅している。自分は絶滅生物を研究する古生物学者になってしまったという。(ところで、こんなこと言われて誰も怒らないのだろうか。そりゃ、本当に絶滅していたら、怒りようにも怒りようがないが)
しかし、
下り坂の第一歩は、消費者金融の取り組みかたである。最高裁の判決は経済学の常識に違反しただけではない。判決の結果、欲張りの弁護士が動き出し、必要ない裁判が多くなった。
はて、フェルドマン氏は何をもって「必要のない裁判」と断じているのか?
そもそも貸金業法等改正は昨年末に国会を通ったが、2010年6月までに施行予定で、まだグレーゾーン金利は存在する。だから訴訟が増えているのは、もちろんグレーゾーン金利が撤廃されたからではなく、グレーゾーン金利判決を通じて債務者が「訴訟すれば(現行の)超過金利は取り戻せる」と知る人が多くなったからだ。判決前にもこういう訴訟はあったが、ほとんどは勝てないと思い込んでいたのだ。消費者の意識向上の何物でもない。もし、フェルドマン氏が「消費者は無知な方が良い」とでも考えているのなら、これはひどいモノだ。また、
29%に統一すれば「ヤミへ行け!」現象はなかった。
などというのも変な話で、返済能力のない人間に高利で貸せば焦げ付きが増えて、規模こそ違え、サブプライムローンと同じ現象が起きる。
彼は、貸金業法等改正を米国の医療裁判と同じようなものとして、
結果は、医者の保険料も上昇し、全ての国民の医療保険料負担も上昇する。
としている。ところが、例え話に使っているのは、「アンビュランス・チェーサー」と呼ばれる、救急車を追いかけて事故の被害者に賠償訴訟をけしかける弁護士のことだ。医療過誤とは何の関係もなく、医者の保険料上昇とも国民の医療保険料負担上昇とも何の関係もない。彼が自分で書いているように上がるとすれば、損害保険の保険料だろう。もう無茶苦茶だ。
■経済学、ビジネスを知らない裁判官の被害
具体名は出されていないが、ブルドックのことだろうけれど、あの裁判で得したのはブルドックから事実上の手切れ金を渡されたスティール・パートナーズだろう。もっとも、その後、鞘取りがやり辛くなったのは自業自得だが。それにリップルウッドなどが長銀日債銀などで儲けてうまくいった話をスルーされても困る。
大体、司法で日本売りが加速するなら2006年1月のホリエモン事件をピークに日本株が売られているはずだが、実際に日本株がピークを打ったのは昨年7月だ。それまで外国人投資家はずっと買い越し基調だった。そりゃ、ここまで日本買いしていれば反動は必ず来る。日本の政治がスロウなことは今に始まったことでなく、織り込み済みの筈なんだが。
■日本人こそジャパン・パッシングをしている
というのも、最大の原因は日銀の超低金利政策なのだが、そのことは完全スルーなのは、どういう訳だろうか。外国人投資家にとって、投機資金がただ同然の低利で運用できるからじゃないのか。まして博物館のはずの日本株市場のプレーヤーの60%以上が外国人投資家だ。彼らはよほど博物館好きなのだろう。ちなみに「ジャパン・パッシング」なんていう言葉は新しくなく、90年代に盛んに言われていたことの焼き直しだ。いわば日本売りの囃し言葉のようなものだ。
もちろん、
■道路財源の議論が日本売りを加速させた
のようにまともそうなのもある。しかし、これにしても、そもそも90年代に公共投資を無理矢理増やせと言ったのはアメリカなのだから、アンタに言われたくない。
大体、「世界の投資家」というきわめて漠とした日本的な表現はやめてもらいたい。「世界の投資家」とは、日本人がよく言う「世界では」とほぼ同義で、ある意味全知全能の神のように扱われている。しかし、実際にはこの神様は欲深で、儲けるためには、釣りもするし、煽りもする。フェルドマン氏も、自虐的で内向きにもかかわらずやたら外国かぶれの日本人の性格をうまく利用して日本売りを煽っているのだろうか。
それに、日本相撲協会でさえ、東西両横綱を外国人力士に占められても泰然自若としているし、日本の食糧自給率は40%を割り、アメリカの占領政策にこれほどノーテンキな外向きな国も珍しい。ここらへんの理由も聞きたいところだ。
Clickで救えるblogがある⇒人気blogランキングにほんブログ村 経済ブログへ