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2008-07-01

休暇

kyuka公式サイト吉村昭原作、門井肇監督。小林薫西島秀俊大塚寧々大杉漣柏原収史、りりィ。死刑執行の業務の後にその特別休暇を利用して結婚式と新婚旅行をするという奇妙な刑務官の物語。

40過ぎて独身の刑務官の平井は姉(りりィ)の紹介で息子1人いる未亡人美香(大塚寧々)と見合いし早々に結婚を決める。しかし、なぜか美香から亡き夫のことを聞かない。息子は絵を描くのが好きだ。

死刑囚金田真一(西島秀俊)も房内でもっぱら絵を描いている。平井に好意を感じてか、辞世の別れの意味にか、プレゼントした平井の晴れ姿を描いた絵の中の平井と並ぶ女性は、金田の妹というより美香に似ていたように思えた。平井自身は「妹さん?」と聞くが、むしろ妹でない方が自然だ。妹には接見でも互いに一言も口も聞かず、遺書も白紙なのだ。あのスケッチブックに挟まれた数枚の写真は美香の写真じゃないかとさえ思えてくる。

うん? この死刑囚、美香の旦那さん? そんな馬鹿な。とは言え、断末魔の中で落ちてくる死刑囚を支えるという一番きつい仕事した後、結婚式&ハネムーンというのも負けず劣らず「そんな馬鹿な」だ。この平井さん、かなり壊れているように見えるし。

大体、美香の姓は明かされていない。平井は夜中の宿で、美香が寝ている時をはかったかのように息子に半ば唐突に「ごめん」と言う。なんとなく自然と言えば自然だけれど、不自然と言えば不自然だ。彼は一体、何に対して詫びたのだろう。父親を殺したことか? 寝床で美香が「あなた本当は私に興味なんてないんでしょう」と難詰しながら抱き合うのも不自然といえば不自然だ。平井は「過去のことなんてどうでもいい」と言うのだが。

そう考えると、金田が殺したと思われる夫婦も平井の両親なのかと思われ、ゾッとする。彼は親族の葬儀で有給を使い果たしたのだ。

全てが無理矢理で進んでいて、当事者も無理矢理を承知で最初から仮面夫婦を演じているような。お互いにどうしようもなさを抱えた居直りの儀式にも見える。平井はまるで死刑を執行する側に回った「異邦人」のムルソーのようだ。ならば、死刑囚を今際のときに抱きしめるのも、息子や妻を抱きしめるのも、悲しき居直りに見える。

ラストで、誰も座っていない列車の客席と誰もいない独房が描写されている。その空虚さこそがこの映画のキモなのかもしれない。

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