その木戸を通って

sonokido公式サイト山本周五郎原作、市川崑監督、浅野ゆう子中井貴一フランキー堺、井川比佐志、岸田今日子石坂浩二神山繁榎木孝明。記憶喪失のふさ(浅野ゆう子)がたまたま城勤めの平松正四郎(中井貴一)の屋敷を訪れて展開する幽玄なラブストーリー。
1993年のハイビジョンで撮影された劇場未公開作品だったからこの映画自体、実質15年“記憶喪失”していたようなものだから、今から見ると、浅野も中井も当然ながら今より若く、監督も含めもう鬼籍に入っている名優たちも活躍していて不思議感がいやます。
竹林のそよぎ、驟雨が効果的で現と夢の境目のような映像。幽霊話も本当はこんな具合にまだ精神医学が発達していなかった時代の人々の想像力が作り出したものと思わせる。
正四郎は今風に言えば官僚。刀は差していても一度も抜く場面がない。周囲からは何を考えているのか分からない空想癖があるらしく、世事に億劫で身だしなみも頓着しないタイプ。それでもどこか憎めない正四郎を周りが甲斐甲斐しく世話してとりまとめた出世コースの縁談も断り、ふさと結ばれるのだが、これ自体が現実逃避風だ。なにげにか「たみおのしあわせ」の江戸時代版ではある。
ふさも健気ではあるが時折フラッシュバックに襲われてとっくりを落としたり大豆を散らかしたりする。ふさにとって正四郎は逆にあくまで夢の中の人なのだ。
ラストも現なのか夢なのか定かでなく終り、余韻を持たせている。
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