S嬢 はてな

2011-04-16

[]安全神話

子どもが小さい頃にね、子どもを連れてお散歩していて。建設中のおうちがあったりすると時々夫が言ったの、小さい声で「ああ、危ないなあ」って。

何が?って聞くと、アレは地震で危ないよって。建築設計の仕事をしている彼が、家の構造上こういう風に力が入るとこういう風に強い構造と、こういう風に力が加わったときにここがこう弱くなる構造があって、とか説明してくれる。あそこはあの骨組みがこう弱い構造のまま建設されていくだろうと、だから危ないよって。

そんなことを聞くとわたしはそわそわしてしまって、誰かにそれを言わなくてもいいの?って聞く。いや、あの構造でも商品としては成立するから仕方ないよ、でも自分はアレは地震に危ないと思うけどね、と。

その数年後に自分たちが家を建てることになった。夫は毎日家で自宅になる家の図面を引いてた。工務店と材料から相談してた。予算はぎりぎりだから、どこの材料をどう落とすか、安い材料は何かとか。

ふうん、とか言ってて。わたしはあんまりインテリアとか家とかなんだとかって興味が無いというか、言っちゃなんだがどーでもいい。だから彼が好きなようにやってくれればそれでよかった。ただひとつ、きちんと押さえてくれていれば。

「ねえ。このおうちは地震が来ても倒れないんだよね?」

それはわからないよ、と、夫が言う。え?なんで?だって倒れないように作ってあるんでしょう?と、わたしが聞く。

「計算上はね、倒れないようには作ってあるよ。計算上は要所要所で基準よりずっと太い柱を使ってるし、構造上も強く計算はしてある。でもね」

自然に対しての計算っていうのは、過去のデータを材料にすることしかできないんだよ。自然はいつも新しい驚異をもってくるんだよ。計算ってのはそれを追いかけていくしかできないから、未来の危険に対しての計算には限界がある」

「だからわからないよ」

倒れないよね?と聞くわたしに、夫はいつも「わからないよ」と答える。倒れないよね倒れないよね倒れないよねとしつこく聞くと、「計算上はね、倒れないように作ってあるよ。でも過去のデータの計算でしかないからね」と繰り返し、絶対に「倒れないよ」とは言ってくれない。彼は「わからないよ」としか答えてくれない。

わたしは。子どもたちに言ってしまう「おとうさんが設計したこのおうちは地震では倒れない」。誰もそんなことは言ってないのに。

安全神話って誰が作るんだろう。少なくとも我が家に限ってだけ言えば、安全神話を作っているのはこのわたしだと思う。そしてそこに確固とした根拠なんて無いんだ。わたしがその安全神話が欲しいだけなんだ。そうなんだよね、わたしが欲しいんだ、その安全神話を。

安全神話ってのは、それが無くてはならない方の立場が作るもので、作った人間が用意するものじゃない。作った人間こそ本当は「計算上は」の枕詞を慎重に携えているものなのかもしれないと思った。

simthemadsimthemad 2011/04/16 21:03 おっしゃりたいこと、よく分かります。まさに作り手の誠実、あるべきスタンスはそれだと思う。しかし作り手の意識に、何らかの理由でバイアスがかかっていたら?日本の原発政策では、原発の作り手代表である科学者にご主人のような誠実(=客観事実のみに基づく論理性)が見当たらないような気がします。大切な資質のはずなのに。

にににに 2011/04/16 22:36 今回の震災と原発事故を対岸の火事として見てる人とそうではない人、綺麗に二つに割れてるよね。
311後 色んなブログやツイートを読み、知人や友人と会話し、テレビを観たりしてましたが、これほど綺麗に真っ二つに割れるのは凄いと思いました。恐らく、この現象は加速していくと思われる。
そして別れた人々は二度と相容れないような気がする。

ほりほり 2011/04/16 22:39 >>simthemad様
安全工学という学問では、教科書の1ページ目に「リスクゼロなんてものは存在しないし、達成することもできない。」とあります。
「絶対安全」「リスクゼロ」って単語は理系には存在しないのです。
だから、設計者が絶対安全だなんて言うことはありません。
この条件下なら安全ですとの限定条件が必ず提示されているはずです。

福島原発のスペック書にも、
・加速度○×の揺れ、高さ△mの津波なら耐えられます。
・冗長化(バックアップシステム)の思想はこうです。
とハッキリ書かれていると思います。

設計の仕事をしている私も「あなたの作った電子レンジ(仮)は絶対安全ですか?」と問われれば、
「いいえ。そんなことはありません。必ず説明書にある注意事項をお読みください。それに従わない場合は死亡する可能性もあります。」と正直に答えます。
ただし、そう答えると顔を青くする、または怒りで顔が真っ赤になる人が多いのも事実で、「(普通に使っていれば)安全ですよ。」と答えている無責任な販売員がいるかもしれません。
もしそのような販売員に遭遇した経験ある方がいれば、深くお詫び申し上げます。

774774 2011/04/17 00:22 ところで、
「原発の安全神話が崩れた」のようなヘッドラインを見かけるけど、
そもそもそんな安全神話があったの?
私は知らなかったけど。

774774 2011/04/17 00:27 どれほど安全運転に徹している人でも、
四輪で自賠責保険のみという人はいないだろう。
もし、
「私は自賠責のみです。
なぜなら私は事故を起こさないから。
もし任意保険に加入したら事故を起こす気だと思われてしまう。」
(↑きっと原発担当官庁とか東電ってこんな感じだと思う。)
な人がいたら、
ちょっと友達にはなれない。

事故が起きたときの影響度を考えれば、
・発注側のスペック設定には慎重であるべき
・いわゆる想定外(?)の事象が発生したときの対応手順を準備しておくべき
だと思う。

たとえば原子炉1機当たりに、
(冗長性をもたせて)複数台の非常用ディーゼル発電機を準備していたと思いますが、
その複数台を近くに並べて据え付けていたんじゃないかな?

たとえばstation blackoutの状態で、
手動でベントする訓練なんかなかったんじゃないかな?

satomiessatomies 2011/04/17 16:49 simthemadさま、ににさま、ほりさま、おふたりの774さま、コメントありがとうございました。

何か事件が起きたりした時に。
わたしは自分自身の愚かさを見つけたくなる時があるんです。
ああわたしはなんて愚かなのだろうと。
そしてそこから見えてくるものを見つめたい時がある。
そんな雑文です、お付き合い、ありがとうございました。
いろいろな観点からのコメント、とても興味深く読ませていただきました。
反応、ありがとうございました。

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