S嬢 はてな

2018-09-26

[]ゲロ話、再び

なんとなく日記としてゲロの話を書き留めて。まあ単なる日記ではあったのですが、なんだかものすごい反響が当時あったというか、そんなことがあったなあと。振り返ってみれば10年が経っていましたな。

コンビニでゲロ吐いてたの、小さい子が

さて、再びのゲロ話。ゲロ日記。

お彼岸の連休の一日、実家に行こうとしていました。その日の朝、娘が朝食後変なゲップをした。ん?とちょっと気になったのでゲロ対策グッズをかなり久しぶりに用意した。使い古しのハンディタオルを二枚。小さいビニール袋を一枚。それをスーパーの袋に入れてバッグに入れた。

湘南新宿ラインで横浜から新宿へ。娘は特に気分が悪くなることもなく、実に普通。ちょうどよく座っていけたので、わたしはうつらうつらしていた。正面のシートに座っている親子連れがなんとなく目に入ってた。年中かそこらの女の子の幼児と、父親らしき人と母親らしき人。おとうさん、おかあさん、子ども、の順に座っていて、おとうさんとおかあさんがずっと仲良さそうになんだかんだとおしゃべりをしていて、お嬢さんはお行儀が悪くない程度に楽し気にしていた。なんでもない、そんな親子連れの光景。そのこちら側、ダウン症の女性とうつらうつらおばはん。そんな光景。そんな光景のまま、電車は渋谷駅を出た。次は新宿。湘南新宿ラインだから一駅とは言ってもそこそこの距離はある。そろそろ目をちゃんと覚まさなきゃな、と、うつらうつらおばはんは思ってた。ちょうどそのとき。

ちょうどそのとき、正面の女の子が変なゲップをした。ぐ、ぐふ。うつらうつらおばはんがくわっと覚醒した。これはくる!

ぐふ。ぐふぐふ、ぐええ。

女の子が吐いた。吐き始めたときに父親が女の子の口のあたりを手で押さえようとした。しかし女の子のゲロは勢いづいて飛び出し始めた。そのとき。

そのときには、うつらうつらおばはんははっきりと覚醒して、スーパーゲロ対策おばはんに変身していた。スーパーゲロ対策おばはんは、手にハンディタオルをにぎり、対面の席に数歩で走り寄り、父親の手にハンディタオルを即座に渡す。ゲロはハンディタオルが受け止める。しかし勢いのついたゲロはシートと床を汚した。そのとき。

スーパーゲロ対策おばはんは次の手に出る。おばはんはカニ飛びで自分の席に戻り、かばんからポケットティッシュとハンディタオルをもう一枚取り出してまたカニ飛びで戻る。スーパーゲロ対策おばはんは床に這いつくばってティッシュでゲロをふき取っていく。あー。なんでポケットティッシュなのだ。箱ではないのだ。タマが足りないではないか。ぎりぎりではないか。周囲からタマが飛んでこないのは、たぶん季節のせいだ。風邪の時期でもなく、花粉症の時期でもない。人々は鼻水とゲロの危険でもなければ今どきティッシュなど持ち歩かないのかもしれない。しかしスーパーゲロ対策おばはんは無敵だからな。床はきれいにできたわい。

汚れたティッシュをスーパーの袋に入れたら、父親がこれもこれもとゲロにまみれたハンディタオルを入れた。お。躊躇なくゴミと判断したな、それを。いやもちろんそうだ、それはもうゴミだ。しかしそれはうちの歴史が積み重ねられてきたハンディタオルだ。と、思わず思うほどにはスーパーゲロ対策おばはんは俗物だ。

その煩悩を振り払うように、スーパーゲロ対策おばはんは、もう一枚のうちの歴史が積み重ねられてきたハンディタオルでシートの汚れをふきとっていく。ファブリーズが欲しい。申し訳ない。そしてこのタオルもゴミだ。さよなら。うちの歴史が積み重ねられたミニーのタオルよ。

ま、とりあえずなんとかなったなと思うタイミングで新宿だ。カニ飛びではなく普通移動で娘のそばに戻る。さあ降りよう。かーちゃんのおててには触らないでね。駅出たらトイレ飛び込んで手を洗おう。

ホームでさっきの夫婦が追いかけてきた。「ありがとうございました」。いや、なんのなんの。この二人、フィリピンあたりの方かしらという顔貌。在住か訪日か知らんがそんな感じの方々。いや、あのタイミングは驚くだろうと思う。だってこの子元気だったもの。ただ、かなりベタベタしたもの食べてたからかもしれないな。ゲロはバターライスのにおいがした。

床に這いつくばってゲロ片付けながら、10年前のゲロの自分の文章を思い出してた。他人のゲロを素手で触れるなんて、というコメントは多かったな。でもあのときはコンビニで、それはいわゆる「ひとんち」だった。店員という「そこんちの人」もいる。それにそのときは箱ティッシュ雑巾もあった。そこそこ余裕はあった。今はどうだ。誰も助けはない。誰にも頼れない。ティッシュの量もヤバいくらい少なかった。

でも無理。無理だな、と思った。他人のゲロを触るのが無理な人がいるのと同じくらい、わたしは自身がスーパーゲロ対策おばはんへの変身することを止めるのが無理だ。考えるより先に飛んでる。これはたぶん、誰かがわたしにそのスイッチを仕込んでる。

新宿から私鉄に乗り換えた。わたしは娘に言った。「ちぃちゃん、おかあさんのこと、ほめて」「おかあさん、えらい!」「わー、ありがとう!」。私鉄の駅を降りて実家に着いた。「おかーさん、おかーさん、わたし一仕事してきた。ビールちょうだい!」一仕事終えたあとのビールは最高だね。

ははは、ゲロ話の続き。もう10年もたった。あの時のようなアクセス嵐は来ないだろう。これは書き留めておく日記よ。

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