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Rays Of Gravity

2013-11-22

【REVIEW】Jensen Sportag『Stealth Of Days』(Cascine)

テクノノワールとでもいえるような、深い霧の中で落ちてくる鳩たちや青い影が横切る、ジェンセン・スポータグの06年以来となる、待望のフル・レングス、セカンド・アルバムが届いた。

ジェンセン・スポータグとは、オースティン・ウィルキンソン、エルヴィス・クレイグの二人からなるアメリカナッシュビルを拠点にしたデュオ。こうしてアルバムを出す前から、アリエル・ピンクが彼らのファースト・アルバムのアート・ワークを手掛け、ブラッド・ダイヤモンズ、メモリーテープス「Wait In The Dark」のリミックスhttp://www.youtube.com/watch?v=MU27uH8F0lo)など多くのワークスでの手堅さ、マックス・ツンドラの彼らの敬愛まで名前を見ることは昨今、増えていた。そういう意味では、その期待値と併せ、今作のタイミングは良かったようには思える。

明確に、彼らの場合は2010年に《Cascine》とサインしてから、分岐がある。《Cascine》はキッシーズ、ウィンターコーツ、デイット・インレなどが所属するNY、ロンドンをベースにしながら、スウェーデンにもネットワークを持つ独自の色を持つレーベルである。そのレーベルに属し、フロアー対応のサウンドから、メロウに舵を切った2011年の『Pure Wet』EPの流れからに今作もある。70代のAOR調の曲から、80年代的なスペーシーでスピリチュアルディスコ、ダヴ、リード曲「Bellz」

D

ではアーバンにかつ柔らかいビートが、この忙しない時代の温度を忘れさせてくれる蠱惑性があったが、総花的にテクノ・ミュージックからIDMの断片を放り込んだ、これらのサウンドはどういった層に希求されるのか分からないところも当初、感じた。

チルウェイヴ以降をアンビエント・ミュージックが下支えし、ポスト・クラシカル的なサウンドはカームできるポップ・ミュージックとしての役割期待を果たそうと変容し、フロアー対応のエレクトロニック・ミュージックではゴルジェや、ジャングル・リヴァイヴァルように硬く、BPMの速いものが求められてきている瀬もある。その点で、水墨画のように淡い音像を描くこの『Stealth Of Days』には、同時代性はないかもしれない。ただ、幾重にも叮嚀に織り込まれた音響、甘美なウィスパーヴォイスの先に感じる何かも視える人もいると思う。たとえば、あのフェネスがこの作品から「Rain Coad」をリミックスしているが、見事な相性と言おうか、サイケデリックユーフォリックな内容になっているのも象徴的だろう。

(注:このリミックスレーベルのサウンド・クラウドからダウンロードできるCascine Sound Cloud https://soundcloud.com/cascine

「Six Senses」ではホール・アンド・オーツ的なブルーアイド・ソウルの要素が色濃くうかがえ、「Under Roses」ではシンプリー・レッドジョージ・マイケルの往年期のようなサウンドが後景に滲む。ただ、人工的にメタにそういった何かを狙ったというあざとさより、シンセから声の配置、加工までかなり緻密にベタにそういったサウンドを作り上げていったというテクスチャーが感じ取れる。音圧が高くなく、アナログで聴いてみたり、フロアーで体感してみると、よりフィットするところもあり、今作はTPOを問わず、多面的に長くじっくり聴ける内容になっている。

プレス・リリースにあった、「ここ20年のエレクトロニック・ミュージックの細かいマイクロジャンルへのトリビュート」というフレーズよりも、エレクトロニック・ミュージックのベースたる美麗さ、ロマンティシズムを今一度、呈示した、そういう言い方が正しい力作だと思う。

Stealth of Days [12 inch Analog]

Stealth of Days [12 inch Analog]

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