「荻上チキの実名は乙川知紀」と「現在、インターネット上で一般に公開されている情報の引用」をスル

荻上チキの本名は乙川知紀である。
荻上チキの実名は乙川知紀である。

引用元
ネット群集の暴走の専門家 荻上チキさんが本名を晒されて涙目になってます!(2ch/涙目ニュース速報のスレッドのミラーサイト)
http://www.heiwaboke.net/2ch/unkar02.php/namidame.2ch.net/news/1198858152
荻上チキ(2ch/社会学板のスレッドの Google キャッシュ)
http://www.google.com/search?num=50&hl=ja&q=%22%E8%8D%BB%E4%B8%8A%E3%83%81%E3%82%AD%E3%81%AE%E5%AE%9F%E5%90%8D%E3%81%AF%E4%B9%99%E5%B7%9D%E7%9F%A5%E7%B4%80%22&lr=lang_ja
それぞれ、元のスレッドは、いわゆる「dat落ち」という状況にあるが、公開されていることには変わりない。さて、今回このような引用をするに至るには、はてなのルール運用における前例がある。

あるはてなユーザーが、はてなのサービス内で2ちゃんねるからの引用形式で実名を書かれた際に、はてなの運営側から

現在、インターネット上で一般に公開されている情報の引用であり、
さらに、元データとなる情報の削除がなされていないことから、
現状では削除対象としておりません。

という対応を受けていることが分かった。乙川(荻上)氏の件が明らかになる少し前のことのようだ。詳細を検討するに、この件は完全な私人のプライベート情報であり、削除されてしかるべき件であるように思われるが、現状はてなの運用ではそうはならないようだ。
http://hatena.g.hatena.ne.jp/keyword/%e3%81%af%e3%81%a6%e3%81%aa%e6%83%85%e5%a0%b1%e5%89%8a%e9%99%a4%e3%82%ac%e3%82%a4%e3%83%89%e3%83%a9%e3%82%a4%e3%83%b3

一般私人の場合
インターネット上に公表されていない氏名・勤務先・自宅の住所・電話番号・メールアドレスが記載されている場合、原則として削除を行う

はてな情報削除ガイドラインの反対の解釈としては、これはこれで正しいのだろう。しかし、それならば、何故今回の乙川氏の場合はそのような判断とならなかったのか。それが問題となる。

はてな情報削除ガイドラインの運用は正しくなされているか?

このたび、id:satosei様にご投稿いただいている、はてなダイアリー
記事がプライバシーを侵害しているとして、荻上チキ(乙川知紀)様より削除の申し立てが
参っております。

はてなにおきましては、筆名やハンドルネームで活動されていて一般に本名を
公開しておられない方の氏名については個人情報であるため、開示あるいは
推定できる形でのほのめかしを行うことは、プライバシーの侵害に当たる
可能性があると考えております。

つきましては、情報の削除をご検討いただくか、あるいは、これらの記述が
権利侵害にあたらず違法性が阻却されるとお考えの場合には、詳細な理由を
ご説明いただければと思います。

先々月に受け取った照会メールの一部内容である。私が書いた文章はネットから引用というわけではないが、既に引用元のような乙川知紀という単語は2ちゃんねる上には書き込まれている。はてなの運営側がそのことを知らなかったという可能性は低い。何故なら、以下のような削除ルールについての説明をはてなダイアリー内部で行っているからだ。

なお、当該の情報がすでに広く公開されている場合や、容易に検索が可能な場合においては、その公開の態様や元情報に対する削除依頼の有無などの状態を考慮し、別途検討を行います。

著名人の公開されていない本名の掲載に関して - はてなダイアリー日記
http://d.hatena.ne.jp/hatenadiary/20071226/1198648008

タイミングからして乙川氏の件を念頭においた説明である。しかし、ここでの『削除依頼の有無などの状態を考慮』というのは全くのルールを無視した運用説明である。一見して

既にそのウェブサイトが存在せず、GoogleキャッシュページあるいはInternet Archiveページにのみその情報があり、GoogleあるいはInternet Archiveに対して既に削除申請が行われている場合

というガイドラインの条項をスライドさせた適用のようにも考えられるが、2ちゃんねるは、キャッシュやミラーサイトではない。『その公開の態様や元情報に対する削除依頼の有無』という説明は、『元情報』が『既にそのウェブサイトが存在せず』というガイドラインに完全に矛盾するし、先に挙げた事例でも『元データとなる情報の削除』が必要であると、はてな運営自身が説明している。2ちゃんねるにしろ、何にしろ、実際に削除された後に残るキャッシュやミラーサイトの問題を処理する条項として理解するのが通常である。であるにも関わらず、削除依頼すれば良いというような、ルール無視の運用説明は完全な特別扱いである。

一般私人の極々プライベートな情報は放置する。一方、著作活動などを行う有名人の名前はルールを曲げてまで、削除すべしと言う。公人として性質が強い程、認められるプライバシーの範囲は狭くなるのは、昔の判例を引かずとも、最早当たり前の社会常識である。しかしながら、はてなの削除基準の運用はこれに逆行するやり方のようである。コンプライアンスなどと難しいことは言うつもりは無いが、全く以って不思議な運用である。アクセス数が稼げる人達を特別扱いしているかのようなことは止めて欲しいものだ。

そして、このような、削除基準の捻じ曲げには、声の大きい「気持ち悪い人たち」が関わっている。

後だし「非公開要望」を受容することの弊害

そもそも、事の発端は乙川氏が小谷野氏に献本した際に、自分で本名を記したことに始まる。当然ながら、「荻上」と名乗ることは十分可能だった。非公開を望むなら、普通そうするだろう。なんでも乙川氏自身が本の中で

――「炎上」に関して、こういうことだけはやっちゃいけないような、まずいことってありますか?

インターネットというのは「つながる」ものなのだということを忘れてはいけないということでしょうか。違うコミュニケーションに接続されることがあるのだから、手紙の宛先に注意をしすぎるということはない。

と、書いているのだから、余程の間抜けで無い限り、自ら望んで本名を明かしたということだろう。もしギャグのような恥ずかしい失敗であるとしても、非公開を望むならば、この件について、ちゃんと説明をすべきと思うが、乙川氏は何も説明していない。名前を明かし、小谷野氏との、学術的もしくは学閥的な関係構築を目的としたものの、そういう関係構築に失敗したのだろうか。ともかく、小谷野氏は名前と所属を事実上公表したし、これは有名人としての荻上チキ氏の活動をトレースする上でも非常に貴重な公益に適う情報である。

乙川氏は、発端を説明せずに、非公開を望むとだけ言っていてるが、このような後出し非公開要望を受け入れると様々な弊害が出てしまう。例えば、高校歴史教科書の文部省の検定意見の変遷に付きid:lovelovedog細田均氏)が村瀬信一氏の経歴を書いていたりする。村瀬氏が『経歴・史学の師弟関係に付きネット公表を望まない』とか『沖縄タイムスの記事と自分を結びつけるエントリを削除せよ』とか言うような無茶な主張をしだしたら、乙川氏や、彼の言い分を支持する人たちも同意するのだろうか?
http://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/20070621/murase

はてなムラの一角を占める気持ち悪い面々

今回、はてなムラ内部では、小谷野氏の行為に対し、感情的な批判が起こった。とりわけ、元々乙川氏と親しいと思われる面々の中にはヒステリー気味な批判もあった。「はてなの母?はてなのヒスおばさんに改称したらどうだろう?」とか。この面々は元々はてなムラ内部では声の大きい人たちのようで、今回のはてな情報削除ガイドラインの捻じ曲げにも大きく影響したのだろう。更に言えば、この面々は、はてなムラの中で人権を非常に重視する層とも重なるところがある。時に、はてなムラ外部から、「はてなサヨク」と揶揄されることもある。

ところが、そのような人々も乙川氏の重大な人権侵害助長行為である違法プライバシー暴露行為について、ほとんど咎めることが無かった。このような黙認は、非常に興味深い。人権も仲間内を庇う為にならば軽視されてしまうのであろう。このような集団の性質は過去に暴走した左翼団体的でもある。はてなムラには、どこかに、はてなサヨク団体があるのだろう。暴走しないことを願いたい。

ちなみに、小谷野氏批判で染まった、はてブのエントリも沢山あって、そういうのには、反対の意見は全然見られないらしい。そういう現象をサイバーカスなんとか、っていうらしい。以上、物の本に書いてある受け売り。いつかの研究の好材料と為らんことを。