軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

中国漫遊記25「帰国」

 
 夜は二派に分かれて行動することになり、私は「上海雑技団」を見学した。
5年前から継続して「観察」しているのだが演技内容は随分変化した。特に今回は「カラフル」で「舞台背景がおしゃれ」で、衣装も「垢抜け」ていて、しかも「恋愛物語」が上演されたのには驚いた。この変化はどうしてだろう、と話題になったが、世代交代の影響だろうという結論になった。メンバーが殆ど入れ替わって若返っているのである。いわゆる今までの「サーカス風」な組み立てではなく、「芸術的」構成になっているのである。中でも最初に見た時は中学生くらいだった子供たちが立派に成長していたし、その顔つき、目の輝きから、きっとリーダーになるだろう、と見ていた少年が、予想通り見事なリーダーに育っていた事が嬉しかった。
一方、ピエロ役として観客を笑いに引き込んでいたベテラン達は引退したらしく勇姿が見られなかったのは寂しかった。多分重労働が祟って「ぎっくり腰」になったのではないか?というのが私と金田君の推測である。
9時に終了、近くの雑居ビルに「日本料理屋」を見つけて遅い夕食をとる。店員達は「日本名」の名札をつけ、日本式にサービスする。彼女達は何の屈託もなく、日本式の接客要領を学び、それを楽しんでいるところがある。料理も日本からの「冷凍空輸」だろうが、味もそこそこで安かった。国内の炉辺店でも従業員は殆ど中国人だから外国の日本料理屋という違和感はない。
夜の通りは薄暗い。煌びやかだった上海も年々薄暗くなった様に感じられたが、電力不足が影響しているのだろう。明日は早朝出発するので朝食が摂れないから露店でバナナを買ったが、3本で3・5元、1本15円は安いのか高いのか。出てきたおばさんが紙碑(紙マージャン)の最中だったらしく左手にカードを持ったままである。仲間を待たせているから気もそぞろらしく応対が悪かった。そこでホテルに戻る途中、明かりがついている店を覗くと、どこでも家人が奥の間で紙碑に夢中だったのが面白かった。
午後10時半にホテルに戻り、思いつくまま一日の感想を書く。今日が最後の夜である。
1、 我々に対応した青年研究者達は、中国の新しい未来を追い求めている。発言も率直で、明るいところがいい。共産党員ではないものが多かったが、何らかの政党に入っているものが多かった。中には両親は「日本語」で会話しているという青年もいた。
2、 北京に帰ったT元海軍大佐は、月給は3000元、息子が外資系の企業に就職したが、既に私の倍の給料を取っているので、複雑な心境だ、と私に語った。
3、 中国人はなりふりかまわず行動する。勿論上層部には上品な人も多いが問題は、我々日本人は「なりふりかまわず行動できるだろうか?」ということである。
最近の日本人の中には、彼らに負けないくらいの者が増えたが、大半の日本人は未だに恥も外聞もない行動はとれないだろう。
4、 国家の活力とは何か?
 人口(数の力)=向上心(より良い生活をGETする!意欲)と目標(中国人の目標は「金」、実に目標がはっきりしている!)
5、 資本主義も共産主義も「人民には無関係」、それが大切なのは「党の要人」だけではないか?若者は着実に資本主義的近代化の道を進んでいるように見える。
6、 軍人も官僚も、勿論研究者達も給料は低そうである。よく分析する必要がある。
7、 上海は歴史的に西欧的であり、北京とははっきり異なる。例えれば、上海=大阪・京都、北京=東京・江戸?
8、 農民は作物を高価なものに限定して栽培して成功しているようである。これは資本主義の走りではないか?上海周辺は豊かである。同時に「戸籍がない」ので、徐々に都会に集中しつつあるという。北京政府はこれをどう裁くか?
9、 若い研究者の中に、会議で私が発言した「盧溝橋事件の犯人」に関心を示し、文献のコピーが欲しいといった者がいた。このような熱心な若者に我々の側の「歴史認識」の根拠を提示する必要がある。
 
22日火曜日、6時に起床、バナナを食べて出発準備をする。スモッグが酷いが天気は晴れ。7時に空港へ出発、順調にチェックインを完了する。ここでホテルでの面白い話を書いておこう。
 1、ホテルの部屋番号が何故か男性は末尾が9、女性は5であった。そして女性の部屋には男性からの電話があり、「ミスター・政司?」と聞くのでS女史は「違います。政司ではありません」と答えたそうだが、何度もかかってきたと不思議そうに私に聞いた。男性陣には女性が同じようにかけてきたという。どうしたものか私にだけは全くなかったので、「絶頂聡明」の私は「賞味期限切れ」だと判断したらしい・・・
 S女史は真面目だから気がつかなかったのだが、「政司」ではなく「マッサージ」、つまり日中間で大きな外交問題になっている「ミスター、マッサージOKよ」なのである。 政府の指定ホテルでこの有様、しかし、気になるのが「男性の声」だったことで、女性を狙ってかけてきたことである。いよいよ日本女性を狙った男性マッサージ師が出来たらしい・・・。日本人をHIVで絶滅する計画があるそうだから用心!用心!
2、昨夜二派に分かれて行動した別動隊の報告。彼らは上海駐在の日本人に招かれて「茸料理」を食しに出かけたのだが、その席で「生卵を食べた日本人3人が死亡している事実」を知らされたという。わが国では全く報道されていないが少なくとも3人以上はいるらしい。マスコミは何をしているのだろう。この国では「生物」を食べることは覚悟がいるが、日本人は「すき焼き」になるとつい生卵を食べる癖がある。用心!用心!

 上海空港の待合室で、私の後の席に座った上海の中年女性と、比較的若い日本人男性との会話。とにかく女性は大声だから耳に入ってくる話は遮断できない・・・。
女性:中国は政府が勝手に規則や法律を決めて人民に示すが、人民は誰も守らない。中国人は自分の事は自分でするのが基本。日本と違って保険が少ないから、自分の老後は自分で見る。
男性:あなたは何時も日本に来て仕事をしている。ご主人と離婚することにならないか?
女性:夫と妻、信じあってそれぞれ働いてそれで離婚になれば仕方ない。主人は信じているから絶対に大丈夫。夫と妻、信じあってそれぞれが働いて稼ぐ事が大事。娘を学校に入れ、仕送りして卒業して結婚して「炊事洗濯」では割りに合わない。
   私も百万、夫も百万、さらに娘も百万稼げばそれぞれ幸せ。最高の幸せ。
男性:中国に進出している日本企業をどう思う?
女性:日本の工場はみんな日本人が上にいる。日本人はコピーコピー、それだけ。中国人はそれから先を考える。日本人は中国に来て買い物買い物。私も私の友人もみんな商売に走り回っている。だから買い物は短時間。でも日本人にも凄いのがいる。和歌山のカレー事件の女、あれは凄い女よ。

  0940、搭乗が始まった。1020離陸、4時間10分かかって1330に成田着、修学旅行で外国に行ったらしい高校生グループの中の一人が「アー日本はきれい。ほっとする」と言ったのが印象的だった。       (続く)