軍事評論家=佐藤守のブログ日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

■軍事を語らずして、日本を語るなかれ!!■

2006-03-03 それでも世界は激変しつつある

「それでも世界は激変しつつある」

「それでも地球は回っている」と言ったのはガリレオ・ガリレイだが、日本の政局が足踏みしている間にも、世界は急速に転回している。

3月に入ってからの新聞記事を見るだけでも、恐ろしい展開が予測される。勝手に「占って」見ることにしよう。

1、 米印関係

 ブッシュ大統領は、アフガンを電撃訪問し、パキスタン・インドを歴訪、「不安定な弧」のてこ入れに精力的に動き回っている。アフガンでは「アルカイーダ掃討」に自信を示し、インドではNPT未加盟のインドに、民生用の核開発で協力する事を約束した。

昭和50年、外務省軍縮室で、NPT批准問題を担当したときの事が思い出される。若き外交官達の中には、批准すると将来のわが国の手を自ら縛ることになるから慎重に審議するべきだ、という意見もあり、連日連夜、侃々諤々の討論が繰り返された。

あれから30年、ついにNPTは形骸化した。ブッシュ大統領が「今日の合意は歴史的なものだ」と強調したというが、狙いは中国にあることは間違いない。これがパキスタンの反発を買い、この周辺により一層の緊張を生み出すであろうが、中国はどう出るか?

2、 中国国内問題

 中国共産党中央宣伝部から停刊処分を受けていた中国紙「氷点週刊」が一ヶ月ぶりに復刊したが、これは「処分に反抗した広範な知識人らの『勝利』を意味せず、中国共産党がメディア統制を更に強める前兆と見られている」という。しかし、中国国内の言論の自由、民主化を求める運動は、高まりはしても衰えることはあるまい。

1日、幹部や公安の腐敗、土地の強制収用などに抗議して地方から北京に来た農民らが連日、数百人規模で拘束されているという。また、天安門事件で殺害された遺族ら126人が再評価を求めて全国人民代表大会宛の公開書簡を発表した。昨年11月、上海郊外で私もコンテナ基地建設絶対反対を唱える漁民達のピケに遭遇した。

中国共産党の内部腐敗は、予想以上に進んでいるようである。これに経済的「打撃」が加わったらどうなるか? 中国国内情勢は予断を許さない。

3、 台湾問題

 中国に「取り込まれつつある」国民党と、陳水扁総統との軋轢は、1947年2月28日に、大陸から進入してきた外省人と、台湾人との抗争(228事件)で3万人が虐殺された59周年記念日に当たる2月28日に、陳総統が「国家統一委員会」の廃止をめぐって、一段と独立志向を鮮明にしたことによって激化している。対中接近を図る野党・国民党は、陳総統の罷免を視野に、これに対抗しようとしているが、これを機に、台湾海峡を巡る緊張は高まりつつある。万一、国民党が政権を奪取するようなことになれば、尖閣方面は中・台共同で日本に対抗してくることが予想されるから、日本は南西方面の防衛を強化しなければならなくなる。米国も、台湾に供与したF−16戦闘機や艦艇などが、事もあろうに第7艦隊向けの「抵抗勢力」になる事を想定しなければならなくなる。

そこで米国は、陳総統に「現状維持」で冷静に対処するよう希望しているが、それは中近東方面が火急の課題だからであろう。

4、 中近東問題

 イラクは、国内安定が進行しつつあるが、宗派対立が激化している。移行政府が未だ実力をつけていないこの間に、宗派対立で死傷者が増えると、米国民の厭戦気分はいやがうえにも高まるであろう。ブッシュ政権は意地でもイラク安定施策を推進するだろうが、イランの核開発は「秒読み段階」に入りつつある。イランの核武装に対してイスラエルが看過するはずはない。

その昔、イラクの核施設を空爆した、当の編隊長が国防大臣である。既にプランは出来ていると見るべきである。「日本政府は2日、イランの核開発問題で、経済制裁措置の一環として石油禁輸措置が検討されているのを受けて、禁輸措置が発動された場合、石油の国家備蓄を放出する方針を固めた」という。わが国でも官庁の担当者はそれなりに危機感を持って動いている事が窺えるが・・・。

5、 国内問題

 それにしては日本国内の政治の体たらくはどうしたものか。5月にサマワ陸上自衛隊を撤退させ、クエートの空自を延長する、等という重大な課題が残されているのに、「ホリエメール」問題一色で、民主党惨敗、等と次元の低い問題で精力を使い果たしているようだが、論評するのも馬鹿らしい。偽メール一枚に踊らされるような軽佻浮薄、謀略に無知な低レベルの政治家達に、国の安全保障を一任するわけにはいかないと思う。この問題で損したのは民主党だが、「得をした」のは一体誰か?そこにカギがあるように思う。

そんな中、作家の安倍譲二氏がコラム「断」に、「愛想がつきました」と題して次のような文を書いていたが、全く同感なので、産経新聞以外の読者向けに「転載」する。

「僕は国会で偽メールを振りかざして質問した永田寿康衆議院議員と、彼が所属する民主党に愛想をつかしています。28日に謝罪会見をやったのですが、役職を降りたのは野田国対委員長ただ一人、張本人の永田某も党首討論で確証があるとまで言い切った前原代表も責任を取りません。政治家としての誠意も勇気も示せず,気合も気骨も持ち合わせない彼らに、僕は絶望します。今回のことは本当に、罪万死に値します。

耐震強度偽装問題ライブドア事件、米国産牛肉危険部位混入事件、防衛施設庁談合事件と、自公政権の積年の膿が噴出して青くなった政府を、馬鹿な民主党が生き返らせてしまったのです。

野党に今回のような愚かなチョンボがあると、四点セットといわれた怪しい事件が全てウヤムヤになってマスコミも有権者も、政府の責任を追及しようという盛り上がりが吹っ飛んでしまいます。だから僕は、この民主党の議員がやったことは万死に値するというのです。ジャーナリストと称するいかがわしい男が渡したメールのコピーを、真贋も確認せず鬼の首でも獲ったかのように国会で振り回したのですから、この永田という男はカラスよりも、猿よりも軽率で話になりません。

体調が悪いと称して病院に逃げ込んだのも、野党の若手議員のやるようなことではありません。しかし、それにしても、この真に愚か極まる大チョンボが出たタイミングは、絶妙に過ぎるとは思いませんか。僕は前原代表と政府は、グルじゃないかと疑ってしまうのです。(作家・安倍譲二)」

JGSDFJGSDF 2006/03/03 16:29 佐藤様の危惧される「恐ろしい展開」を私も全くもって感じております。仏シンクタンク『EUROPE2020』によると、今月後半に世界システムに激震が走り、国際政治のターニング・ポイントが訪れると警告しています。(URL:http://www.europe2020.org/en/section_global/150206.htm)
 ざっとこの仏シンクタンクの主張を要約すると、「今月末のイランのユーロ建て石油取引開始が、ドルの機軸通貨としての地位を脅かす。ドルはアメリカの巨額財政赤字や住宅バブル崩壊の可能性により信用が墜ちている(何故かFRBは今月末のM3という最も信頼できるドル通貨供給量指標の公表中止を決定している。)ドルへの信用不安が起これば、アメリカの政治支配も経済も崩壊する。これを防ぐ為にイランへの軍事介入が画策される。イランは地政学的な要衝にありイスラム国家であり、周辺諸国の安全保障や宗教感情を巻き込み大きな世界システムの変化へと繋がりうる」という感じになります。
 つまり、経済危機と軍事危機が平行して3月末に向けて収束しているようなのです。現在アメリカはドルへの依存で世界経済を支配していますが、それがなくなれば現在の一極集中は終わるばかりでなく、アメリカ自身の崩壊へと繋がる可能性があるのです。これを防ぐ為なら、米国は唯一圧倒的優越性を持っている軍事力で、なりふり構わない行動を起こすでしょう。最悪の事態は世界規模での戦争状態へと発展することです。
 そのとき日本はどうなるのか?連鎖テロ・エネルギー&食糧危機が訪れるのではないのかと危惧しております。日本政府や自衛隊上層部がどれだけ事態の重大性を分析できているのか、非常に不安です。単なる杞憂であれば、と祈らずにおれません。

satoumamorusatoumamoru 2006/03/03 19:56 JGSDF様≫まさにそうなのです.イラク戦争は大量破壊兵器…ではなく、フセインとフランス、ドイツなどが、ユーロ建てで石油取引を計画したことだといわれています.北朝鮮の偽ドルの影響が甚大で、100ドル札使用にかなり影響が出ているようですから、米国は北に制裁を加えました.3月説は知りませんが、日本は5月に奇妙な事をしでかしそうです.とにかく、国民があっというようなことだそうです.自衛隊上層幹部は、昇進ばかり気にしないで、国家安全保障を真剣に考えて欲しいものです.

JGSDFJGSDF 2006/03/03 21:11 >佐藤様、御返事頂きありがとうございます。3月に何か具体的なことが起こるとは思えませんが、歴史を振り返ってみた時「あの時が転換点だった」と回想する日が来るかも知れません。とにかく巨大な政治的地殻変動が近づいて来ているのは確かなようです。5月は、半島(拉致)とかロシア(北方領土)とか、インターネット上ではいろいろ噂が飛んでおりますね。もし、この地殻変動が事実ならば、日本という要素をめぐり、対立陣営同士の戦略が動き始めるのは確かでしょう。「あっと驚くようなこと」が起きてもおかしくないと思います。
 軍人(元軍人)には立場上歯がゆい状況ですが、地に足をつけた日々の任務遂行を行うしかないのでしょう。上層部の方々はどう認識されているのかは知る由もありませんが、『各指揮レベルにおいて「起こりうる状況」に対して責任を果たすことが出来る努力をしてもらいたい』と願わずにはおれません。

AkiAki 2006/03/03 21:32 市民と自衛隊、自衛隊OB、保守言論人で武装蜂起するのがてっとりばやいのかもしれませんね。みのもんたが「4点セットを追及しなきゃならないこの時期にこんなメール問題で1週間以上も使って...」と批判しながら毎日その問題を自分の番組で取り上げているのを見て、あんたらマスコミも同じじゃないかと、あきれています。

屋根の上のミケ 屋根の上のミケ  2006/03/03 22:12  佐藤様へ 私は約3年間 ブリュッセルのNATO本部に出入りして、米国を含むNATO加盟国の各武官と接触して(もちろん、合法の範囲内で)いた時期がありました。フセインが石油の決済をユーロに切り替えようとした時の米軍の緊張ぶりは、それは大変なものが、ありました。もし、イランが原油取引をユーロ決済に切り替えようとするならば、米国は相当な決意で臨むものと、思われます。ミケ

kiyokiyo 2006/03/03 23:32 耐震強度偽装問題、ライブドア事件、米国産牛肉危険部位混入事件、防衛施設庁談合事件

なんか4点セットといって騒いでいますがなぜこれが民主党の武器になるかがわかりません....民主党が政権をとっていたならこういったことは確実に起こらなかったというもんなのでしょうか?
野党が与党の責任を追及するってのはこんな政府の意思決定とは直接関与しない個々の事件について政府の閣僚の首を狙うのではなく、もっと将来のことを見据えた議論をしてほしいもんだと思います
個人的には4点セットの議論するのも永田議員の問題を議論するのも等しく低レベルな議論だと思います

くーくー 2006/03/04 00:25 兎にも角にも問題なのは、与党にしろ野党にしろ、国内の些細な(とも言い切れませんが)問題に終始して、世界的な視野で長期的な戦略を練ることが出来ていないことでしょう。

momonokitomimomonokitomi 2006/03/04 01:34 要するに,そんな世界の中でもノー天気になれるのが日本の政治家であり,それでも安定しているのが日本なのであります.これはある意味,すごいことだと思いますが,同時に国益を静かにだかが確実に蝕んでいっている.それを何ひとつ語らない第4の権力は,一生懸命,ワイドショーに精をだす.まさに亡国の歩みですね.

hydroponichydroponic 2006/03/04 09:18 愚かな政治家へのお怒りはごもっともと思いますが「低レベルの政治家達に、国の安全保障を一任するわけにはいかない」とのご意見には首肯できません。
安全保障への関与を力ずくで政治家から取り上げたら帝国陸軍の二の舞です。愚かな政治家であっても国民が選んだ者である以上、彼らに国家の命運を委ねざるを得ません。悪法でも法は法である、といって死んだソクラテスと同じです。
日本を守るためには国民が覚醒しなければどうしようもありません。一部の専門家が意気込んで「俺に任せろ」と言ったところで国を守ることはできないと思っています。会社でもそうですが、「専門家」と自負する者だけが集まっても不思議と良い結果が出ないものです。専門外の人々、一見関係ないような分野の人間も含めて組織運営できた会社が勝ちます。専門家だけの集団はどうも視野狭窄に陥る傾向があります。
第二次大戦でも、政治家が安全保障を担っていた国々では、数学者を動員して線形計画法やら統計学を確立してロジスティクスを組み立てたり、心理学、社会学者を動員して対戦国の民族性分析から戦術予想を行ったりしていました。安全保障の専門家ではなくても意外と役に立つものです。
愚かな政治家には国会で馬鹿騒ぎをやらせておいて敵対国の目を欺くという使い方もできます。

JGSDFJGSDF 2006/03/04 11:02 >屋根の上のミケ様 大変興味深い話、聞かせていただきありがとうございます。つまり、この基軸通貨「ドル」問題が米国の軍事行動の核心を突いているのですね。
 それにしても、この石油決済に纏わるドルと米国の振る舞いに関する分析は何故か日本のマスコミではほとんど見られません。分かってて報道しないのか、それともそもそもそういった総合的分析が出来ないほど無能なのか、一体どちらなんでしょう?
 通貨の問題(正確には「通貨による間接支配」の問題)を知らない限り、そもそも「国防」「独立の維持」「安全保障」など考えられないのですが(知れば知るほど恐ろしい深刻な問題で、そこに「戦争」の本質があります。)責任ある上層部の方はどのくらい理解されているのでしょう?

屋根の上のミケ 屋根の上のミケ  2006/03/04 13:40  JGSDF様へ 統一通貨ユーロの発足は、米国に強い危機感を与えました。一時は、フセインのほか、中国などが決済通貨、準備通貨として一定の割合をドルからユーロに切り替えるとの表明をして、米国の危機感を煽りました。イラクについていえば、当時、イラクが石油の決済通貨をドルからユーロに換えれば、アラブ産油国が雪崩を打って、ユーロに変わる恐れがありました。しかし、現在は、イラク戦争でフセインが倒された結果、イラクが大きくユーロ決済に転換する恐れはなくなりました。おそらく、イランがユーロに転換しても、米国が経済制裁を強化すれば、かつてのような雪崩現象は起きないでしょう。米国の危機感も、ユーロ発足当時に比べれば、いまではかなり緩和されていると思います。しかし、二つの赤字を抱えながら世界の基軸通貨ドルを持つが故に軍事・経済ともに大国として米国は君臨することが、できているのですから依然としてユーロに対して米国が神経質かつ敏感であることは、変わりないと思います。ミケ

JGSDFJGSDF 2006/03/04 14:11 >屋根の上のミケ様 コメントありがとうございました。「米国がドル・システムの再構築を図っている」のがというのが大筋でしょうか?事態の推移を見守りたいと思います。

(゜゜)(。 。 )ペこ(゜゜)(。 。 )ペこ 2006/03/04 15:14 今日のコメント欄は何だかたいへんなお話ですね。
私は3月に米軍が北朝鮮へと言うような話ならどこかで読みましたが、きっと皆さんのお話と関係があるのでしょうね。
3点セット4点セットと聞こえ出した頃からバカバカしくて話を聞く気にもなりませんでしたが、結末は更にバカバカしいものでした。私のような一庶民が国会の騒動をバカバカしいと思い、外交を心配してるなんて、どういうことでしょう。これで戦争にでも巻き込まれたら、今の政治家はA級戦犯よりずっと思い刑にしてもらわなくてはなりません。

とおるとおる 2006/03/05 20:24 仏シンクタンク『EUROPE2020』の話、ありがとうございます。

ケンタケンタ 2006/03/10 22:08 はじめてお邪魔します。対イラン戦争について興味深い記事です。ご存知だったら失礼。
http://www.parc-jp.org/main/a_project/theme/kitazawa/kitazawa060109

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