軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

大型連休は終わった!

大型連休は終わった。国会も再開する。議員の皆さんも、十分『休養』して、真剣に討論してくれるだろうことを大いに期待したい!
昨日が休刊日だったからか、今朝の産経新聞には眼を見張るような記事が詰まっていた。
簡単に所感を書いておこうと思う。

1、「ハルバ嶺、進まぬ遺棄化学兵器処理」(1面)
 何度も書いたが、「旧日本軍が中国大陸に遺棄したものではない」。「敗戦」に伴い、終戦直後に整然と武装解除に応じて「中国側に引き渡したもの」であり、その処理は「中国側が責任を持つべきもの」なのである。情けない事に、不勉強で奇妙に「贖罪意識が強い」政治家や、外務官僚達の『錯誤』で、こんな結果になったのである。私が知っている限りでは、中国側は『これで金さえ貰えば良い』のである。丁度タイミング良く、雑誌「正論」6月号に、ジャーナリストの水間政憲氏が、「スクープ!“遺棄化学兵器”は中国側に引き渡されていた」という貴重な論文を書いているので、是非御一読願いたい。とりわけこの問題を引き起こした政府関係者は、国民に説明する義務がある。そして直ちにこの問題の「枠組み」を、国会答弁どうりに『変更』または『破棄』して貰いたい。

2、「米露 新たな冷戦」(2面)
 チェイニー米副大統領が、訪問先のリトアニアで演説し、「ロシアが民主主義を後退させ、エネルギー供給を『脅迫の材料』としているなどとして、かってなく強い調子でロシアを痛烈に批判」したが、これに対してプーチン政権も、「米国への対抗措置を検討し始めた」という。
 冷戦終結で浮かれた我国は、その後の貴重な時間を浪費してきた。憲法改正始め、戦後処理の山積した問題を『棚上げ』して、政治ゲームに振りまわされてきたが、些か時間がかかりすぎたと思う。世界はそれより遥かに早いスピードで動いている。ピッチを上げてもらいたいと思う。

3、「英地方選 労働党が大敗」(5面)
 「英南部イングランドの176自治体で4日に実施された地方選挙で、与党・労働党が2004年に続く大敗を喫した」という。英国でも動きが始まっている。世界を牛耳る米英で、何かが始まっている。日米間でも、米軍再編問題で揺れている。少なくとも『自由と民主主義』を信奉して、そのグループの一員を自称している我国に、何らかの備えはあるのか?

4、「“親中派”の実態浮き彫りに【紙面批評】」(7面)
 藤竹暁・学習院大学名誉教授が、4月2日から4日まで産経新聞で連載された「保守新時代、第4部自民党と中国」は、重要な指摘に満ちていたから、「永久保存板の価値があると思う。読み落とした読者は図書館で読んで欲しい。産経はこの記事を別刷りして、希望者に配布したらどうか」と書いたが同感である。つまり、以前私が書いたように、この国をダメにした「張本人達」の名前がぞろぞろと「炙り出されて」いるからである。3月31日に、胡錦涛主席に呼び出されて、「友好訪問」をした7団体の代表者達、とりわけ橋本龍太郎氏について、藤竹教授は「橋本元首相は平成八年に中国のハニートラっプにかかった前歴があった。ハニートラップは、昨年末も在上海総領事館電信官の悲惨な事件で記憶に新しい。この事件に対する外務省の対応がいかにお粗末であり、自殺した電信官たった一人に“国家への忠誠を貫く為の苦悩”を背負わせた事に腹立たしさを感じたばかりである」と憤慨しているが、特に「ノンキャリ外交官は非業の死を遂げても、有力政治家は親中派として安泰な日々が送れるのが、日本の現状である。彼等が日本の命運を背負い続けているのは、何としても不可解である」という部分には全く同感である。
またぞろ、これら親中派メンバーが、マスコミを含めて“勢いを取り戻しつつある?”かのような状況にも納得がいかない。教授は『外交政策にも更造改革を』と結んでいるが、政府の自覚を促したい。

5、「東シナ海の航行禁止措置騒動の真相【正論】」(7面)
 同じページに平松茂雄氏の正論が出ているが、これまた我国外交の問題点を浮き彫りにしている。この「航行禁止措置」騒動は、中国側の単純ミスで発生したもので、「日本政府が断固たる態度をとったから中国側が引っ込んだのではない。中国はもともと日中中間腺を認めるような立場をとることなど、初めからありえない」と平松氏は言うが、同感である。
つまり、我が政府は、この方面での情報収集と分析をどのようにやっているのか?という疑問である。私の在任中にも、政府の各種委員会メンバーが多数沖縄を訪れた。そのたびに「現状報告」するのだが、国会では「現地調査」と称して「旅行記」が報告されるだけである。しかもその殆どは「同行した官僚が、提供を受けた各種資料を引用するだけ」である。勿論日々の報告は、現地から上級司令部、防衛庁へ適時適切に報告されているが、問題は「誰がどのような観点からその情報を取り上げるのか」という点にある。現地で問題が発生してから「慌てて」資料を求めたり、現地に問い合わせる場面が多すぎはしないか?平松論文はこれを指摘しているのである。

6、「『国を愛する』ということ」(23・スポーツ面)
 スポーツ面に目を引く記事があった。清水満編集委員の「スポーツ放談」というコラムに、この記事が出ていた。世界卓球選手権で惜敗した日本女子チームのリーダー・福原愛選手が、敗戦の悔しさをにじませた事に「国の代表としての誇りが、そこに感じられた」とし、「戦っている者も、応援する者も熱くなる。国際試合には必ず日の丸意識が存在する」「3月のWBCでも、日の丸戦士に国中がわいた。だから、2次リーグ韓国戦で守備のミスをしたロッテ・今江敏晃3塁手は『あのまま負けていたら日本に帰れない、帰っても生きていけない』と、言葉を残した。少々大げさながら、純粋で真剣なようである。これこそ日本代表のアイデンティティー(存在証明)の表れではないだろうか」「…一般の人だって一定期間日本を離れて暮らすと、日本への郷愁はある。美しい故郷の山河を思い起すのは自然だろう。『改めて日本を感じる事が出来た』という選手は意外に多い。それが国を愛するってことではないだろうか」と言うのだが、『愛国心』と聞くとすぐに目くじらを立てる人達に、ゆっくり味わって欲しいコラムである。

多くの真摯な「コメント」が寄せられ、真面目な「意見交換」が行われている事に感謝したい。特に日中関係、台湾問題で、危機感をお持ちの方が散見されるが、現状では恐れる事はないと思っている。問題は、この国の政治状況が、果たして“額面通り”の『シビリアンコントロール』を遂行できるのか?という事と、このまま防衛予算を低減して行けば、いずれはミリタリーバランス上、重大な状況になりかねない、という危機感である。つまり、童話の「ウサギとカメ」物語である。それも健康なウサギだったら、気がつけばすぐに追いつき、追い越せるかもしれないが、私が見る限りにおいては、“このウサギ”はかなり「重症の糖尿病」であるから心配なのである。