軍事評論家=佐藤守のブログ日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

■軍事を語らずして、日本を語るなかれ!!■

2006-06-21 本村氏の無念を察する

本村氏の無念を察する

 母子殺人事件の最高裁判決は「差し戻し」であった。つまり高裁で再度裁判せよ、と言うものだが、それは「死刑」を意味する。なぜ「自判」出来なかったのだろうか?

裁判に関しては航空自衛隊も苦い経験を持つ。昭和46年7月30日に、岩手県雫石上空で起きた、F−86Fとボーイング727との接触墜落事故、いわゆる「雫石事故」である。

私はその後の裁判の経過からこれを「事故」とは呼ばず「事件」と呼んできた。

概要はすでにご存知だろうから省略するが、発生直後は「自衛隊機が体当たりした!」とセンセーショナルにマスコミに「喧伝」されて、裁判前からすでに「犯人」は自衛隊だ、とされてしまった。

その後の調査では、民航機のほうが「追突」したことがわかったが「後の祭り」

刑事裁判では、追突された訓練生が「無罪」となり、彼を指導していた教官が有罪とされた。やや遅れて賠償責任を問う「民事」が進行していたが、その場では意外な事実が次々に明らかにされ始めた。「追突」であったことも判明したが、なぜか「刑事裁判」には影響がなかった。その後(と言っても15年後だが)、民航機の乗客が、機内から撮影していた8ミリフィルムが、民航機会社側から民事法廷に提出されたが、それを分析した結果、民航機のほうが空自の臨時訓練空域内に「侵入」していたことが判明した。ところがそれが判明するや、証拠として提出した民航側が、その証拠を取り下げたのである。

最高裁に上がっていた「刑事裁判」は、当然「新証拠」が出てきたのだから、2審差し戻し」になるものと期待されたが、突然「最高裁は自判」して、被告を執行猶予つきの有罪にしたのであった。この事件後、事件発生時に当時自民党幹事長で、首相後継争いをしていた田中角栄氏と当該民航側との「いわゆるロッキード事件」が発覚し、やがて「無事」に首相となっていた田中氏は裁判の場に出ることとなったが、この一例をとっても見ても、「雫石事件」は、佐藤優・元外務省員が言う「国策捜査」と言われるべきものであったと思う。

162名が死んだ大事件だから・・・と言った先輩がいたが、一人死のうと500人死のうと「人の命」に変わりあるまい。ましてや死亡者の数で判決が左右されることがあってはならないはずだ。

この「事件」は、航空自衛隊の歴史に大きなしこりを残したと思う。

今回、本村氏の、最愛の妻と娘さんを殺した犯人に対する裁判も、なんとなく釈然としないところがあるが、われわれが苦汁を飲んだ「雫石事件」に比べると、やや進歩?したのかもしれない。それはやはり「世論の力」だろう。この極悪非道な犯罪を、国民は断じて許しはすまい。

雫石事件当時、自衛隊は「非人扱い」だった。誰も(ごく少数の人を除いて)味方になってくれなかった。マスコミは全員「敵」だった。その中で、防衛庁は孤軍奮闘したが結局は「国策」に封じられてしまった。そして「犯人」とされた隈君は昨年夏、がんで他界した。66歳であった。

世の雰囲気に左右される裁判であれば、庶民は何を信じてよいかわからなくなる。以前書いたがそうなれば「復讐制度復活」以外にはない。力に自信がない人のためには「請負や=つまり助っ人」が出てくるだろう。そうなれば国の「規律」はどうなるか。

本村氏の災難は、明日はわが身である。ここでこのような残虐な事件は封殺しなければならない。天下に正義があることを知らしめる絶好のチャンスであったが、最高裁は「自判」を避けた。そして再び高裁での「長ーい」、検察側と“正常とは思えない”弁護側との、「口論」が繰り返され、その間、本村氏は「針の上のむしろ」に座らされる。裁判官と言えども「人の子」だと言うが、それじゃ困る。日銀総裁といえども「金がほしい」じゃ困るのである。

戦後の食糧難時代に、佐賀の裁判官は「闇米」を拒否して飢え死にした。これを「馬鹿正直だ」と笑うものがいたら、天は決して許さないだろう。

慈善団体に寄付する予定が狂った総裁には気の毒だが、庶民感覚を推察できない「篤志家」からの寄付なんぞ、貰った庶民も戸惑うはずだ。

体調不良で静かにしていたかったが、本村氏の会見を見て黙っていられなかった。つくづく、わが国から「武士は食わねど」の精神が失われたことを痛感した次第。こんなことに憤っていたら、体調が悪くなるはず!と後輩たちからメールが届きそうだが・・・。記憶違いはお許しを。

aichanaichan 2006/06/21 11:02 本村氏の無念は考えるも悔しくご同情申し上げます。
極悪非道な犯人の更正の可能性など議論する必要は全く論外であり、このような事犯を犯した者は一刻も早く死刑にして今後の類似犯を防ぐのが裁判所の役割と思います。何が何でも死刑を避けたい異常な弁護人は即退場願いたいと強く念じております。

鬼作鬼作 2006/06/21 11:35 依頼人の減刑の為なら、『捏造』でも何でもする体質。これでは、元一級建築士姉歯と全く同じレベルの話ではありませんか。市民からは、弁護士という商売が法律を悪用し正義を駆逐して、特定の思想信条を持った悪党を蔓延らせている と受け取られても仕方がないと思います。

kazu4502kazu4502 2006/06/21 18:47 本村さんの心情を思うと胸が張り裂ける思いです
日本の司法は今まで全て判例に基づいて結審をされてきました、最高裁はその判例にこだわらず自判して欲しかったと思います。

ぽんたぽんた 2006/06/21 22:34 佐藤先生
ご無理なさらず、お大事になさってください。
それにしても、世の中道理が通らない事ばかりです。本当に日本はおかしな人間が幅をきかすようになってしまいました。まっとうな日本人の方がはるかに多いのに・・・。

シスコシスコ 2006/06/21 22:41 雫石の件は、認識を改めます。田中角栄のイメージもネット情報に触れてずいぶん変わったなあ。

通りすがり通りすがり 2006/06/22 00:54 某巨大掲示板からの引用です。
> 今日の最高裁の判決は、「高裁の判決は誤っている」ということですから、
> 最高裁はこれを取り消します(破棄)。
> 高裁の判決が破棄されると、地裁の判決だけあって高裁の判決がない
> 宙ぶらりんの状態になりますから、高裁に戻してもう一回判決を
> 出してもらわなければなりません。
> 差し戻された高裁は、最高裁の出した判断に拘束されます。
> すなわち、「広島高裁が認定した事実を基にすると、無期懲役の量刑は
> 軽すぎて不当」というわけですから、他に無期懲役に処すべき
> 特別な事由がない限り、死刑の判決が下されます。
> なんで最高裁が自分で死刑の判決を下さないのかというと、
> 最高裁は法律問題を扱う機関であって、事実認定をする機関ではないからです。
> 死刑の判決を下すには、先に述べたように「他に無期懲役に処すべき
> 特別な事由」がないかどうかを確認しなければなりませんが、
> これは事実認定の問題なので最高裁は行えず、高裁に差し戻して
> 判断させることになります。

小龍景光小龍景光 2006/06/22 14:02 私も犯罪被害者遺族の端くれで、木村氏のご心中はお察し申し上げます。
雫石の件につきましては浅学ながら全く存じ上げませんでした。この件については私なりに消化してから拙ブログでも取り上げたいと思います。

陸上自衛隊のイラクからの撤収が決まったようですね。10次にわたって復興支援業務に邁進されたすべての方々に国民として感謝の気持ちをお伝えしたいと思っております。

元N社のKA元N社のKA 2006/06/22 19:27 佐藤守様、大変ご無沙汰しております。コメント欄を連絡の場としてお借りすることをお許し下さい。お引越しされたとのことで電話が不通の上、メールアドレスも変更になられた由、連絡手段はどのようにすればよろしいでしょうか?携帯でもメールでも構いませんのでご連絡をお待ちしております。

おばさんおばさん 2006/06/22 20:52 悲惨な事件の被害者であるのに、理路整然と冷静に発言される本村さんに感動するばかりです。
意図されたわけではないだろうが、彼のお陰で、日本の司法の異常さ、とくに訳のわからぬ(人権派ではなく非人権派)弁護士の嘘が世間にあきらかになったことの功績も大きい。
広島高裁の差し戻し審は日本人の多くが凝視することになるはず。

ロナロナ 2006/06/23 22:00 佐藤様、お気持ちは分かりますが無理をなさらないように、また体調が悪くなりますよ。
今回の件で司法の異常さが公になましたが、裁判の長さも気になります。もっと時間短縮が出来るようになってほしいものです。

元N社のKA元N社のKA 2006/06/23 23:03 佐藤守様、もう一度だけコメント欄をお借りします。電話有難うございました。ハガキをお待ちしております。私は明日から1週間米国出張です。帰国後に連絡差し上げます。

落太郎/msdf落太郎/msdf 2006/06/24 08:19 お疲れ様です。
初めてコメントさせていただきます。この話題と関係ない質問で恐縮ですが、戦闘機による弾道ミサイルの迎撃は不可能なのでしょうか?
テポドンへの対処方法が、報道によると全て対空弾に頼る記述しか見ないのですが、私は「あれ?空自は?F-15は?」といつも考えてしまいます。
飛行機による対処可能性は、ないのでしょうか?お聞かせ願いたく存じます。

私のブログ http://ameblo.jp/msdf/

落太郎/msdf落太郎/msdf 2006/06/24 10:03 コメントありがとうございます。
・・・・頂いたコメントの返事を考えたのですが、いろいろ抵触しそうなのでここではあえてノーコメントとさせて頂きます(なんじゃそら)
だって海自の(以下略)
戦闘機乗りの貴重なご意見として拝見いたしました!!
がんばれセンサー!、がんばれ迎撃用ミサイル!自衛隊の第一線が活躍しない世の中のために!!

MOTOMOTO 2006/06/24 14:41 本村氏の無念さを共有する者として、今回の最高裁の判断は、ある程度評価できるものと思います。一方で、日本国憲法とそれに基づく60年に及ぶ戦後教育の「負の遺産」、特に偏在した「人権思想」、あるいは「権利のみの主張」が司法、そして日本人をおかしくしているのだと思います。凶悪犯罪の低年齢化の状況を踏まえれば、司法は意識改革を図るべきです。秋田の連続幼児殺人事件、奈良のエリー進学高校生の放火等を見るに付け、「家庭の躾」、「学校教育」、そして子供達を育てようとする「地域社会」のバランスがいびつな形となって現れているのです。加害者の人権より「被害者の人権」が一体どうなるのか、国民的議論が必要です。

totopapatotopapa 2006/06/25 17:26 30年前に、防衛庁・空自御用達の専門紙「WING」を発行する会社におりましたが、空自の幹部を務め上げた木原様(空将か准将だったと思いますが記憶が曖昧です)が、雫石の件では大変怒っていたのを思い出します。「民間機のコックピットにトランプが散乱していた。高度1万メートルで民間機の操縦士は前なんか見ちゃいない、すべて計器だよりだ。すべて自衛隊が悪いとなったが、ありゃ民間機が追突したんだ!」
当時はそれが共通認識だったのかと思いましたが、そうではなかったのですね。

知ったかぶり知ったかぶり 2006/07/18 13:57 知人から、雫石事故で有罪とされた隅氏が福岡で焼き鳥屋を経営されていると聞いて、一度、真の事故原因をお話して激励にうかがおうと思っていました。亡くなられたと聞いて悔やんでいます。もっと科学的な調査が行われていれば、隅氏の無実は証明されたでしょう。人間は脅威を感じれば意識が一点に集中して金縛りにあうという潜在本能をもっています。これがニアミスや空中衝突の原因で、欧米のパイロットはCollision Courseとして教えられています。逆に、意識していれば航空機で航空機に衝突するなどということはできるものではありません。つまり、隅氏の行動には犯罪性はまったくないのです。むしろ、こういうことを知らないわが国の専門家や、教えない組織が糾弾されるべきでしょう。ワールドカップで日本チームが負けたのは、肉体的なスタミナ切れというよりも、むしろ精神j的なタフさに欠けていたからでしょう。これまでの訓練を見直すべきですが、自衛隊はどうなのでしょうか?捨て身でくる仮想敵国軍に勝てますか?軍備に反対する人の多くは「今の自衛隊では勝てない」と思っているのです。「真に強いが無闇に喧嘩はしない」人間こそが怖れられ、尊敬もされるのです。佐藤先生の自衛隊を愛するお気持ちもわかりますが、自衛隊を精神的にも逞しく育ててください。ご奮闘に期待します。

佐藤守佐藤守 2006/07/18 22:01 知ったかぶり様≫雫石の件、良くご存知なのでうれしく思いました。隈君は昨年夏、がんで死去しました。この真相は≪闇≫とされてきましたが、どんどん明るみに出ています。自衛隊の精神的強靭さ、については、下士官、兵よりも、むしろ上級幹部のほうが不安です。政治に直結していますので・・・

知ったかぶり知ったかぶり 2006/07/19 00:31 人間は弱いもので、出世の可能性がある上層部ほど、魂をすててまで上におもねるものです。下士官でも、出世をちらつかされれば尻尾を振るものは少なくありません。本当にタフな人間は幹部になっても誇りをすてないものですが、残念ながら今の日本ではそういう人間は出世できません。それにしても、自衛隊で身をすてても隅氏を守るという人物がいなかったのでしょうか。そういう人物がいれば、国民は自衛隊に頼もしさを感じるでしょう。統幕議長や幕僚長には最初から期待していません。仲間一人を守れない組織に国が守れるでしょうか。「鯛は頭から腐る」という格言は、放っておけば尾まで腐るという意味でもあります。佐藤先生にはブログで書く機会をいただいて有難いと思っています。私は門外漢ですが、真相を知っているだけに、無実の罪を背負って亡くなられた隅氏がお気の毒です。心よりご冥福をお祈りします。合掌。

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