軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

自衛官の給与カット?

津波の損害補填で自衛官の給与10%カット!? / 国民の声「びっくりした。自分の目を疑った」「航空自衛隊松島基地津波被害補填のため、自衛官の給与を10%削減する事がオンラインメディア「JBPRESS」により報じられた。
国家公務員の給与6%削減については5月に公務員労組との協議がされる予定だが、この報道が真実であれば、被災地で日々復興のための活動をしている自衛官の給与を10%も削減するとはおかしな話だ。このような事態を引き起こした原子力安全・保安院を有する経済産業省は一体どうなるのかも疑問点である」≫というメールが届いていた。

とても信じられないが、もともとこの政府は、自衛隊は「暴力装置」と公言してはばからない政府である。国民の知らないところで、何か企んでいるのかもしれない。まさかとは思うが制服トップ組よ、そうなったら部下のために一肌脱いでほしい!


ところで震災発生時の3月11日夜、福島原発が深刻な事態に陥ったため、奈良にいた東電社長が東京に戻るため空自輸送機で名古屋を飛び立った途端、防衛相の判断でUターンさせられて名古屋に戻り、結局初動が遅れたことが話題になっている。

≪現場を知らないお二人=産経から≫

枝野官房長官と北沢防衛相は記者会見で「陸路で帰京できたはずだ」として、政府の対応に問題はなかったと強弁した。この時間帯、陸路はどうなっていたのか知っていたのだろうか?
演習中の部隊で幕僚がそんなことを言ったら、「貴様は全然“状況に入っていない!”」と怒鳴られただろう。現場の状況が推察できていないからである。

パプア・ニューギニア方面に派遣された部隊から、「冬装備を送れ」と電報が届いたとき、大本営幕僚が「赤道直下じゃないか」と放言した例に似ている。
ポートモレスビーを攻撃するためには、4013mのヴィクトリア山に連なる標高3000m以上のオーエンスタンレー山脈を越えねばならない。
幕僚には2次元の世界の「赤道・ライン」は目に入っても、立体的な視野を持たないから、標高は見えなかったのである!


民間人の清水社長がどんな経緯で自衛隊機に搭乗依頼したかは知らないが、多分災害派遣、緊急急患輸送?などの名目で申し込み、C−130の入間展開を計画中だった部隊が便乗という形で受け入れたのだろう。


ところがこれを聞いてUターンさせた防衛相は、原発事故がこれほど重大になるとは考えてもいなかったに違いない。枝野氏は「名古屋―東京間は車を飛ばしても走れる状況だ。なぜ自衛隊に頼んだのか。自衛隊機が飛ばないなら自動車を飛ばすのは当然だ。常識ではないか」と答えたが、「なぜ自衛隊に頼んだのか」はさておき、「自衛隊機が飛ばないなら自動車を飛ばすのは当然だ」というのは間違いである。C-130は2330頃すでに名古屋を離陸していたのだから。それを約20分後にUターンさせた方の常識を疑いたい。あと30分もあればC-130は入間基地に着陸していただろう。まさに「大本営幕僚」的視野である。


また「北沢防衛相は(輸送機について)被災者救援の輸送を最優先すべきだと指示していた。被災者救援に総力を挙げていた状況だったので防衛相の指示は妥当だった」と枝野氏は言ったがこれもおかしい。
おそらく輸送機部隊は、当該C-130を名古屋から入間に増強し、入間を起点に被災者救援活動させる計画だったろうからである。
そうであればそれは「まさに被災者救援のための輸送」だったと言える。
今回のこの事例を報道だけから推察すると、軍事常識が欠落した政治家と役人が、物事の優先順位も検討することなく、いつもの感覚でとった“官僚主義”の典型に思われる。

だから「軍事常識」が欠落した方々に、国家非常事態にかかわる危機管理的判断を任せられないのである。
米倉経団連会長が、原発事故対応で「間違った陣頭指揮が混乱のもと」だと首相と閣僚を批判しているが、最後にいいことを言っている。
「修羅場をくぐってきた人たちはリスクへの対応も機敏かつ果敢にできるが、経験のない人が大きなリスク対応を迫られた時には自信を持って判断ができない」


昨日の産経は≪清水社長が不在の間、第1原発では原子炉内の水が失われ炉心溶融が進む一方、原子炉内部の放射性物質を含む蒸気を外部に逃す「ベント(排気)」と呼ばれる措置も遅れた≫と書いた。

清水社長が現場にいればそれがなかったかどうか私にはわからないが、一旦離陸した輸送機を20分後に呼び戻すという愚かな行為は厳しく問われるべきものだろう。防衛大臣ともなれば、自衛隊機をいとも容易く?“政務”と称して選挙応援や自己の選挙区への里帰りに使う方が昔はいたものだが、それに比べると、今回は放射線被害予防のため、ともいえるものだから、そのまま入間に運んで差し上げてやるべきだったと思う。


これも“馬鹿な大将敵より怖い”という一例だが、この二人の大臣の「判断は適正だった」という「言い訳」のうまさには感心する。しかし、この場合の『適正』は文字にすると『敵性』じゃないのか?
今では航空機の運用に関しては若い航空ファンの判断の方がよほど適正である。大臣と言えども素人、“マニア”の前では見苦しい言い訳は通用しなくなりつつあることをお忘れなく。


加えるに、半径20km圏内内への一時帰宅についても「連休後から…」と“連休後”という言葉を持ち出す首相と言い、政府要人は事の重大性を認識していないように感じられる。被災者には「連休」なんぞ無関係、一日も早くと切望しているのである。「連休」を意識しているのは菅総理ぐらいじゃないか?だからそんな発言になるのである。

自衛官よりも、そんな民意とかけ離れた方々の歳費の方から大幅カットすべきだと私は思うが…

明日28日は仏式でいう「49日」にあたる。29日の昭和の日は、神式でいう「49日」である。非力な私には、祈ることしかできないが、犠牲者のご冥福と、被災者の方々が一日も早く元気を取り戻すよう願っている。

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