軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

中国:バブル崩壊と軍の混乱

EUの経済危機は、全世界に影響しつつある。歴史的に見て昔から犬猿の仲だった各国が、それぞれの思惑を隠して『結合』したのだから、早晩解体の運命にあるように見える。せめてその影響は欧州だけにとどめてほしいものだが、今や地球規模の伝達網が完備しているので、回避は無理だろう。


ところがアジアでも、それに劣らない混乱の兆しが見えている。お隣の世界第2の経済大国を標榜する「発展途上国」だが、今やバブル崩壊は加速しつつあり、日本に帰化した中国ウォッチャー、石平氏さえも「中国金融革命が始まった(産経24日)」として、次の様に断じている。

≪「社会主義国家」の中央銀行が、「悪しき資本主義の権化」とされてきた民間金融の合法性と存在意義を公認したのは、中華人民共和国始まって以来、初めてのこと≫であり、≪金融資本の成立は確実に、中国共産党の絶対的支配体制の終焉を意味する革命的変化を起こすものとなる。今年の11月を持って、金融領域から発した「中国革命」がすでにスタートを切った、と言えるであろう≫


ある中国ウォッチャーによれば、中国国内の不動産バブルの崩壊は、わが国が体験した程度の規模ではなく、すでに2億軒以上の空き部屋が崩壊を待っているというから凄まじい。つまり、日本の総人口の約2倍近くを収容できる不良不動産が存在しているというのである。しかもオカラ工事の物件が…
しかしそんな経済問題は専門家にお任せするとして、私が気にしているのは、巨大な人民解放軍の去就である。


≪倒産、廃業が続く中国=産経から≫


≪連日の座り込み=インターネットから≫


今月9日に、枕陽軍区で発生した若い武装兵士4人の脱走事件がその象徴だが、彼らは中央軍事委員会副主席の徐才厚が率いる“精鋭部隊”所属である。4人は自動歩兵銃と実弾795発を持って脱走し、23歳の班長・揚帆の実家が強制取り壊しされた報復に向かった。しかし軍と対立している特殊武装警察によって3人が射殺され彼は捕まった。周辺住民は「彼らが銃を使用する対象は軍内にはいなかったことになる」と語っている。当局が射殺した3人は、遼寧省湖南省出身の19歳、黒竜江省出身の18歳だという。


彼らが所属した枕陽軍区の司令・張又侠は、7月に胡錦濤習近平から上将に昇進させられたばかりであり、第16集団第46師団装甲団は、この10年間に3回も全軍師団級訓練考査で最優秀に輝いた部隊である。
第16軍軍長・高光輝(48)は、ロシアで教育を受けた「全軍最優秀指揮官」であり、規律厳正な部隊として知られていた。そんな規律厳正な部隊で、銃と多量の実弾が持ち出されたのだから、この“不祥事事件”は、軍はもとより党全体に大きな衝撃を与えているという。


更に人民解放軍は、毎年年末に退役シーズンを迎えるが、処遇に不満を持つ軍人が多発し、最近では退役軍人によるデモが多発している。その中には、給料に対する不満はもとより、軍人の人権侵犯があり、とりわけ1964年から41回も継続された核実験による被曝軍人、数万人の姿もあるというが、被曝者に対する賠償は全く無視されているという。

≪多数の退役軍人が混じったデモ風景。「独裁反対:人権擁護:腐敗征伐…」などの文字が見える=インターネットから≫


軍の規律の乱れの代表的なものは、1989年の天安門広場事件で≪学生たちを銃殺せよ≫との命令を拒否した北京軍区第38軍の政治委員が、中央軍事委員会から解任された例や、1994年9月、2番目の子供を妊娠していた妻が「一人っ子政策」の責任者たちに連行され堕胎させられ、堕胎手術で危篤に陥った知らせを受けた北京軍区の中隊長・田明健が激怒してAK47と大量の実弾を持ち出した例がある。
この時彼は部隊で朝礼中の政治委員や軍幹部らを射殺した後、報復のために北京城に乗り込み、追跡した軍や警官と銃撃戦になり、24人(民間人17人、軍と警官は7人)が死亡し、多数が負傷する事件を起こした。
北京建国門で包囲されたが彼は狙撃の名手だったから長安街に逃げ込み、さらに雅宝路の空き地で応戦したが、背後のビルに潜んでいた彼の部下の狙撃手に射殺された。
この事件の死亡者の中にイランの外交官やその9歳の子供も含まれていたからカナダのテレビで放映されたがわが国のメディアが報じたという記憶はない。


昨年尖閣に侵入した中国人工作員船長は、日本政府の“人道的親切心に基づく”処置で釈放されて無事帰国したが、中国人民解放軍では、同じ人民、同じ軍人を即時射殺するのが通例だという。“南京大虐殺”の伝統を維持する軍隊だけのことはあるが、今や党のための軍隊の規律は弛緩していて党は苦慮しているようだ。


更に海軍では、試航海を終えた空母ヴァリヤークの推進機関を「原子力」に改造し始めたという。高速鉄道も満足に運行できない有様なのに、南シナ海東シナ海を遊弋させる空母を原子力空母に改造するというのだから、厚顔無恥も甚だしい。
今から手を打っておかなければ、将来大変な事態がわが国周辺で起きることが予想され、福島原発どころの騒ぎじゃなくなるのに…。
民主党政府は知っているのだろうか?と気にかかるが、そうなれば日本の“市民団体”か、世田谷区長に「放射能漏れ」を厳重に監視してもらうほかはあるまい?!
数千万円の国費を使って訪中した外務大臣が、しっかりと釘を刺してくれたことを期待したい!


≪試験航海から戻ったヴァリヤーク号。旅順号と改名して2014〜5年に中国初の原子力空母として東シナ海にお目見えする予定?≫


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