軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

軍事と外交は車の両輪

プロイセンの将軍カール・フォン・クラウゼヴィッツは「戦争とは、敵を強制してわれわれの意志を遂行させるために用いられる暴力行為」であり、「その目標は敵の戦闘力の粉砕にあり、敵が戦闘継続の意思を放棄すること」であるとする。


6日、シリア中部のシャイラト空軍基地に対して、トランプ大統領は「巡航ミサイル・トマホーク」の発射を命じ、1発は不良弾だったが、59発が着弾して「20機ほどの航空機を破壊したほか、狙った格納庫を全て破壊または損壊した」。
CNN放送は連日これを報じているが、今朝になると「攻撃は大成功で、国民は卑劣な化学兵器を使用したアサドを非難している」が、「トランプ政権にその後の戦略はあるのか?」と一部の議員らが疑問視しているという。

≪シリアに向けてトマホークを発射する艦艇=ロイター≫


民主主義国・アメリカの政治はいつもこうだ。特に民主党は何時までも選挙で負けたトランプ大統領に不快感を示していて、CNNなども批判的である。
彼らが言う「米国の国益」とは何か? 民主党の“党益”ではないのか?
このような事態を招いたのは一にオバマ前大統領の口先だけの不作為にある。
化学兵器を使用したアサドが、レッドラインを超えていたにもかかわらず、オバマは口先だけで策を講じなかったから、これに味を占めたアサドは、ロシアと手を組んで自己保身に突っ走ったのだ。


これでトランプ大統領の「第一発」は成功し、アメリカは何時でも「正義」を盾に「世界の警察官に戻る決意」を示したから、次はアサドが態度を示す番である。

この一発で日本国民にはよくわかったであろう。国連がいかに無力であるか、リベラルが米国の国益をいかに妨害しているかという事が。
更に“無法者たち”にとっては、「力なき正義は無効であり、正義なき力がいかに圧政を招くか」という事も思い知ったであろう。

今一番困っているのは、アサドはもちろん、プーチンや正恩だろうが、メンツを無視された習近平もそうではないのか?
米中会談が“トマホーク”で吹き飛んだのだから…。

南シナ海での横暴も、いつかはこのように吹き飛ばされるかも?と不安を感じたに違いない…。


それにしても我が国の政治は情けない。安倍首相が、トランプの行動を断固支持したのはいいとして、外務大臣の弱弱しい態度は実に情けない。
もっとも、わが国は憲法上「軍事力(ミリタリー・サービス)」が行使できないのだから、わが「外交担当大臣」は、リップ・サービスしかできないから仕方ないか。
しかし、軍事と外交は密接不利のものであることは、クラウゼヴィッツに言われるまでもなかろう。
だから一日も早く憲法を改正して「国際関係を解決するための手段」を明確にすべきなのだ。
自衛隊はお飾りではない。「日報」問題で犯人探しをしている場合じゃなかろう。
第一「日報」で問題なのは、政治家の都合で「戦闘…」という用語が御法度だと言うだけじゃないか!
戦後70年間、「白を黒と言えば黒くなる」と思ってきた政府のご都合主義の延長線上で、現場で苦労している自衛隊員の行動を「監査」するようじゃ、防衛大臣は「戦闘員」の上に立つ資格はなかろう。それとも自衛隊員は、雪まつりやインフルエンザで死んだ鶏の処理要員だとでも認識しているのか?


さて今回のトマホークミサイル発射事案からは、多くの教訓が得られる。
第一に軍は政府の要求に直ちに応じられねばならないという事だ。
オバマ政権でタガが緩んだといわれている米軍だが、さすがに現場はしっかりしていることが証明された。
60発中1発の不発など誤差の内だ!

第2に、わが国のように有事に使えない軍事力は無意味だという事だ。おもちゃの軍隊…と揶揄されるゆえんである。

第3に重要なことは、矢が放たれた後の構えだ。
トランプ大統領は、今はアサドとプーチンの反応を待っている段階だろうが、長引くと効果が薄れる。(築地市場移転問題のように)
つまり、軍事力が示されたのだから、次は外交力の出番だ。その戦略としては「アサドの国際的孤立化」を狙うことだ。
幸い、一部の国以外は、今回の化学兵器による無差別攻撃はアサドの大失敗だと認識されている。本人も「しまった」と感じているに違いない。
仮にロシア軍事顧問の口車に乗ったにしてもである。もしそうだとしたら米国はプーチンとアサドの仲を離反させるチャンスである。

ティラーソン米国務長官は、12日にモスクワを訪問する計画だが、どんな戦略を立てているか見ものだが、少なくとも米国は、軍事と外交が密接不利の間柄にありよく機能していることは確かのようだから期待できるだろう。


クラウゼヴィッツはこうも言っている。
「戦争は政治の道具であり、政治的交渉は戦争においても継続され、また同時に戦争行動は政治的交渉を構成する」
「戦争とは政治的行為の連続体であり、この政治との関係によって戦争はその大きさや激しさが左右される」と。


情けないのは、“敵性勢力”による妨害で、未だにテロ防止法案も審議できない我が国である。シリア情勢と北朝鮮状況に関しても、「万全の態勢で情報収集」に取り組んで満足している段階なのだろうか?

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≪軍事研究5月号:ジャパン・ミリタリー・レビュー≫
“軍事”忌避のわが政府やメディア、それに学術会議だから、ほとんど「軍事研究」というこの本には目を通していないことだろう。

シリア情勢を機に少しは目を通してみたらいかがだろう?
志方先輩が毎月「巻頭言」を担当しているが、今月は「日本の政治には優先順位の概念はないのか」として「森友学園問題も、豊洲移転問題も大切ではあるのだが…」と現状の政治の停滞を嘆いている。
マ、軍事無視のわが国だから、政治の優先順位は私は1に票、2にも票、3と4はお金であって、国家の危機なんぞ何処にも入っていないと思っているのだが…。


ジャパニズム36号:青林堂

今月も【対談】が読ませる。坂東忠信氏の「左翼政党、NPO民進党人脈のための休眠口座(後篇)」は必読だろう。一般的メディアでは“絶対に”報じられない情報だから…。


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