軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

米朝会談に浮かれるな!


米朝会談で握手する34歳の首脳!:AP≫

 シンガポールで行われた米朝会談は、ほとんど一日中“実況放送”されその関心の高さを伺わせたが、どうも我が国のメディアのほとんどは、正恩委員長の靴の上げ底や、北のカメラマンの必死の形相などに捉われていて、枝葉末節に関心が向いている。

 成果の方も『口約束』だと、トランプ大統領の“軽挙妄動”を非難するものもいる。
産経の乾正人編集局長も、
≪「北朝鮮朝鮮半島の完全な非核化を約束した」と言っても、約束は破られるためにある。第一、日本人拉致問題解決への道筋は一向に見えなかった。このまま事態が推移すれば、金正恩体制を維持するためのツケが日本にまわりかねない≫
と危惧しているが、氏が書いているように、首脳会談は“政治ショウー”以外の何物でもないのだ。成果は“実務交渉”で得られる。
ただ今回は、事務レベルで得られた成果を首脳が認める、と言う従来の首脳会談的手法ではないことが異色なのだ。しかしこれでトップダウンになったのだから事務レベルもやりやすいのではないか?

≪記者会見するトランプ大統領:AP≫


 3等空佐の頃、外務省に出向していた私は「米ソ間の戦略兵器制限交渉(SALT)」を担当していたが、あのころからSALTは米ソ間の盛大な政治ショーだった。
 気が付いていなかった?のは我が国のメディアくらいで、SALT−1合意で両首脳が握手する姿を見て、「緊張緩和だ」「デタントだ」と喜び、わが政府は「米ソ間の信頼感の確認」だと見て、これまでの「北からの脅威」を前提とした日本防衛計画の根本的練り直しに踏み切り、読売は「この練り直し構想は、米ソ両大国の全面軍縮への進度如何でさらに進展する」と煽ったから、「軍縮」=「軍備撤廃」だと勘違いしている証拠であり、国際的な「軍縮」の理解は単なる「軍備管理」に過ぎないことを知らなかったのだ。


 退官後「国際軍事関係論」にSALT交渉を集約して上梓したが、今読んで見ても、軍備管理交渉の神髄はいささかも変わっていないことが判る。
当事者同士は「食うか食われるか」の瀬戸際に立っているのであり、傍観者とは決定的に違うからだ。


 今回の会議も昨日行われたばかりだから、成果を求めるのは土台無理な話である。金委員長は帰国後「トリマキ」と充分分析検討し、事前に「妥協するな!」と助言してくれた習近平親分と連絡を取りあうだろう。専用機のお礼もあるだろうから…


 勿論米国政府はただちに分析に入り、専門家会議の立ち上げに動くだろう。いや既に事前交渉の過程で何らかの合意文書が交わされていることもあり得る。SALTでもそうであった。
 あのころはキッシンジャーと言う目立ちたがり屋が事務レベルの反感を買って纏まらなかったものだが、トランプ陣営はどうだろうか?
 細かい取り決めはいずれ公表されるだろうが、心配なのは米国は民主主義国であり選挙結果に支配されることだ。トランプ大統領の交代もあり得るから、そうなれば元の木阿弥になりかねない。

 ただ、昨日の実況中継を見た限りにおいての印象は、トランプ大統領がイニシアチブを最後まで握っていてたことは明白であり、やはり年齢差(人生経験)は如何ともなしがたく、まるで「師団長と小隊長との会話」に見えた。

 ところでこの会談の成果に気をもんでいるのはシナと露西亜だろう。
 金日成の頃から、北朝鮮は「親米」であり、米国にあこがれていたのだから、水面下の世界では、北と米国には結構太いつながりもある。
 いうなれば、ワシントンにミサイルを撃つと騒ぐ姿は、親に振り向かせるための駄々っ子の脅しだったということが判る時が来るのかもしれない。


 そうなれば面白い。朝鮮半島の勢力図が根本から変わり、他方シナにとっては“核心的”問題になりかねないからだ。
 まさか…とは思うが、それを表すかのように同日、台湾に米国大使館がリニューアルオープンした。
“商売上の通念”からして、次期商売敵になるシナに向けて、台湾と「北朝鮮」を米国の前進基地化する第一歩だったとしたら、トランプ流の大戦略と言え、終にジョーカーを切ったのだとはいえまいか。
恐らく過去の民主党政権では想像できなかった戦略だと思われる。


台北でのAIT開所式:インターネットから≫


 処で拉致問題だが、ようやくまっとうな考え方が出てきたようだ。社会部編集委員の加藤達也記者は「日本自身の力で早期救出を」と書いている。

 自分の息子がさらわれたのに、お隣さんに救助を頼むことなんぞあり得ない。自分の国は自分で守るのと同様、同胞を助けるべきなのは自国政府である。米国は3人を救出したではないか!


 期待外れを口に出すコメンテーターもいるが、トランプ大統領が「口添え」してくれただけでも感謝すべきなのだ。後は日本の出番だ。安倍総理が言った様に、日朝首脳会談で取り返すのみだ。


 それにしても情けなかったのは、2002年9月17日の日朝首脳会談で、金正日が“謝罪”した時が絶好の機会だったのだが、時の首相はまったく拉致問題には無関心で理解していなかったからタダ“ダンマリ”を決め込み、首脳会談が流れることを焦った日本の外務官僚がこの機会をつぶしてしまったことだ。

 因果は巡る、この時随行していた官房副長官安倍総理が、最後の賭けに出る。とにかく、歴代首相には「仕事しない人物」等があまりにも多かった。
それに比べて今回の両首脳は、半島の安定のために「仕事をしようとしている」よう私には見えるのだが…

これからの“続報”に注意しておきたい。


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