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日々粗忽 succession

2012-12-04

宮脇緑化に対するmahoro_sさんの文章が分かりやすいので紹介します

 もう2週間ほどたつけれど,mahoro_sさんが「緑の防潮堤づくり」に対し生態学的視点から問題点を整理した文章をあげておられる(これ → 仕事だけじゃない日誌(2012-11-19)).これはぜひとも紹介せねば.

 mahoro_sさんの指摘はわかりやすくて適確.とくに「1(1)歴史性の軽視」「1(3)現存する生態系の軽視」はまさにそのとおり.また,この文章には「3.では何を植えるべきか」の節があり,ここでは“住民の希望に沿って考えるべきだけど,何を植えてもいいわけじゃなく,様々な観点から望ましいことやすべきでないことはある”といったことが述べられていて,共感できる.

 いわゆる宮脇緑化(ふるさとの森づくり)への批判的意見はこれまでにもいくつかあった.京都での宮脇緑化に対して遺伝的多様性の観点から批判が書かれた文章を読んだことがあるが,何で見たのか失念してしまった.ポット苗の密植のために生じる根張りの悪さや,それに伴う倒木の危険性といった緑化工学からの指摘も読んだことがあるが,これまた出典が思い出せない.(私の記憶力わるすぎ!)

 植生学会の刊行物,植生情報 第5号(2001年3月)には横国大の小池文人氏による「ふるさとの森づくり」への批判的意見と,それに対する宮脇昭氏の反論が載っている.小池氏は,ふるさとの森づくりの問題点をさまざまな観点から指摘し,結びには「今後は目標とする植生の決定を研究者がトップダウンでおこなうのでなく,市民参加にしたり,地域に暮らしてきた人たちの文化を尊重することが望ましいと思われる」と書かれていて,今回のmahoro_sさんの文章とも通じる.

 宮脇氏による反論では,「今はやりの議論としては,遷移途中相の二次林(里山林)や二次草地なども,見かけ上の生物多様性は満足しているように見える.しかし生態学的な生物多様性とは,単なる火事場の群衆的な種群の集まりではない.それぞれの場所の自然環境の総和を具現し,ダイナミックに持続している群落の多様性こそが基本のはずである」との下りがあり,確たる根拠の示されないままに“潜在自然植生が基本”という基本姿勢だけが強調されていて,まさに「歴史性」や「現存する生態系」を軽視した発言が展開されている.

 宮脇氏のふるさとの森づくりは,1970年当初には一定の意義があったが,現在の自然環境・社会環境のもとでは,生態学や植生学の観点から問題が多いといわざるをえない.これは,多くの生態学者・植生学者・生物系技術者の共通する認識であると思う.mahoro_sさんの文章のようにまとまって指摘されることは少なかったかもしれないが,少なくとも僕が建設コンサルで働いていた1990年代後半には研究者だけでなくコンサルの生物系技術者にも,宮脇緑化は問題があるとの認識があった.あれから15年ほどたつというのに,いまだに宮脇緑化は一般の方やマスコミには受けがよい.

Y川Y川 2012/12/12 08:59 >植生情報 第5号
各地図書館にはほとんど普及してない雑誌みたいなんで、植生学会に問い合わせて買ってみました(500円!)。
前から思っていたんですが、「潜在自然植生」のご利益ってなんなんですかね?原植生とも違いますし、ほっておけば潜在自然植生に落ち着いて安定する保障なんてどこにもない。
植生学の古典的概念としてはいいとしても、保全や復元の現場でのご利益はあまりないように思えるのですが…。

sawagani550sawagani550 2012/12/12 21:20 買われましたか.ご連絡いただければお貸ししましたのに.
さて,潜在自然植生のご利益がある場面は,造園・植栽計画の分野だと思います.造園分野では,植栽後に枯死することなくすくすく育つ木を植えたい,できれば植栽後の管理は省力化したい,という要望があります.そのようなニーズに潜在自然植生の概念が役立つとして受け入れられたのではないでしょうか.宮脇緑化は,「潜在自然植生だから地域の気候風土に合っている」とか「極相樹種だからメンテフリー」といった宣伝文句が受け,発電所や工場や道路法面や都市緑地などで多く適用されていたように思います.たしかに潜在自然植生の推定がちゃんとできていれば活着率はよかったでしょう.ただしメンテフリーに関しては,施工から10年20年と時間がたったところでは「そんなうまいこといくもんとちゃうなあ」と気付かれているようです(当初期待されたような自己間引きがおきないのでモヤシ林になる).

sawagani550sawagani550 2012/12/12 21:25 ところで,潜在自然植生が緑化の場面,あるいはマスコミや一般の人に受けたのは「環境によさげな雰囲気」と「わかりやすさ」を備えていたことも要因ではないでしょうか.なくなっていく自然をまもっているという雰囲気は受け良さそうです.また,潜在自然植生図をみればその場所に何を植えるべきかがすぐわかる.これなら,植物のことをよくしらない緑化技術者でも(いるんです,そんな技術者が)簡単に樹種を選べる.潜在自然植生は,本来は気候要因だけでなく土地的な要因(地形・土壌・地質など)も考慮して決定されるものですが,なぜか植栽計画の場面になると気候要因で導かれるタイプの植生ばかり出てくるのも,わかりやすい部分だけ使ったからかなあ,という気がします.

Y川Y川 2012/12/13 14:42 詳細な解説ありがとうございます。前半の話はとても「なるほど」といった感じです。潜在自然植生だから地域の気候風土に合っている」とか「極相樹種だからメンテフリー」という宣伝文句は確かに緑化をする側には受けがよさそうです。個人的には潜在自然植生の推定ってホンマに合ってんの?と思っています(手掛かりと言われる社寺林も数十年レベルで樹種が入れ替わっているわけで)し、そもそも潜在自然植生自体が「亡霊」みたなフワフワしたよくわからないものだと思っています。しかし、密植からの自己間引きはあんまり起こってないんですね。

「環境によさげな雰囲気」と「わかりやすさ」ってのは一般受けした一番の要因ってのは私も前から思っていました。しかし、なんでもそうですが単純でわかりやすい話が正しい保証はどこにもないんですよね〜。樹種選定がやりやすいのも確かにありそうな話です。

長々とすみません。

ilyailya 2013/06/10 14:16 はじめまして。東日本大震災後、「森の防潮堤」構想に疑問を持ち、主唱されている宮脇昭さんに関心を持っています。
エントリー、勉強になりました。(「植生情報」第5号のご紹介、ありがとうございます! ぜひ読んでみたいと思います。)

エントリーの第3パラグラフで言及されている、「ポット苗の密植のために生じる根張りの悪さや,それに伴う倒木の危険性といった緑化工学からの指摘」 についてなのですが、波田善夫さん(岡山理科大学植物生態研究室)のwebサイトに近しい記述があります。出典と関係しているかもしれません。
以下、ご参考までに。

▼自然回復を目指した緑化|地域情報生態学|Y.HADA'S Home Page http://had0.big.ous.ac.jp/gakunai/info-ecology/asessment/asessment2.htm
▼緑化関係|Y.HADA'S Home Page http://had0.big.ous.ac.jp/norimen/norimen.htm
▼ポット苗と実生苗の根系の違い|用語・項目辞典|Y.HADA'S Home Page http://had0.big.ous.ac.jp/ecologicaldic/p/pottonae/pottonae.htm

なお、上掲ページは次のTwitterまとめからリンクしています。
▼宮脇昭理論(「潜在自然植生」)による森づくりをめぐって。(2012年11月6日) - Togetter http://togetter.com/li/403075

sawagani550sawagani550 2013/06/11 12:55 ilya様,はじめまして.ありがとうございます.波田さんのサイトみてみました.宮脇緑化だけでなく,緑化全般を知る上でいい情報源ですね.私が見たのはたぶん今はなきソフトサイエンス社の緑化関係の専門書だったかと思いますが,記憶があいまいです.90年代中頃,当時勤めていた会社の本棚にあった本で見たのだけど,すっかり書名などは忘れてしまいました.波田さんが関係していたかもしれませんね.

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