「Oh My Angel」(9)

爽子と市東は噂通り恋人同士だった。いつものデートをしていたある日のこと・・・。
これは「Oh My Angel」         の続きです。
以下からどうぞ↓
























「どうしたの?元気ないね?」

「あ・・・そんなことないよ」


ある日、市東と爽子は忙しい勤務の中、久々にデートをしていた。

実は、市東と爽子は親同士が知り合いということで小さい頃から許婚

同士であった。爽子はそれを当り前だと思って、医者になった市東を

支えようと看護師を目指したのだった。しかし、看護師の仕事をして

いるうちに何でも一生懸命する爽子は、この仕事にやりがいを感じ、

毎日が充実していた。そんなある日のことだった。


「爽子・・・・今日は大切な話があるんだ」

「はい?」


市東は若者の間で人気の店や話題の場所に爽子を連れて行き、爽子に

似合いそうな服やアクセサリーなどあったら、さりげなくプレゼント

するような今風の男だった。

この日も、海沿いの高級レストランで二人は食事をしていた。


食事が一段落した時、市東がカバンの中から、小さな箱を取り出した。

そして、その箱をパカッと開ける。


「これ・・・爽子に」


そこには大きなダイヤの指輪が入っていた。


「こ、こんなもの頂けません〜〜〜!!」


ぶんぶんと手を前で振りまくっている爽子。市東は、爽子にはお金を

惜しまずプレゼントするのだが、いつも異様に遠慮する爽子に満足

にあげられずにいた。


「これは遠慮してもらったら困るんだ」

「?」


市東は一つ咳払いをしてから、言った。


「結婚して欲しいんだ」

「!」


カラ〜ンッ

爽子はびっくりして思わず、フォークを落とした。


「ご、ごめんなさい!!」

「そんなに驚くこと?ずっと分かってたよね。確かに爽子はまだ若い

 けど、俺はもう十分に待ったよ」


小さい頃から聖さんのお嫁さんになるのが夢で、それが当たり前だと

思って今まで生きてきた。夢が叶う時がきたんだ・・・・。

そう、ずっと聖さんの側で生きていくんだ。


「返事は?」


市東は爽子を覗きこんで、優しく微笑んで言った。


「も、もちろん、・・・「はい」です。」


断る理由はなかった。それが当たり前なのだから。爽子はそう自分に

言い聞かせた。心の中に小さく湧きあがった感情の正体は未だに分から

ない。当たり前のことをただ受け入れるだけ。


「良かった!幸せにするから」


その日、市東は上機嫌で普段になく饒舌だった。爽子の表情にも

気づかずに・・・・。



****************


一方、その時翔太も


「お兄ちゃん!最近元気ないね」

「え?・・・そんなことないよ」


翔太は小児科病棟に居た。あれから爽子とは普通に接して

いて、表向きはいつも通りの姿に見えた。しかし、子どもはそんな

翔太を見抜いてしまう。

そんな時、11歳の女の子が翔太に言った。


「お兄ちゃん!私、早く退院してやりたいこといっぱいあるんだ」

「へぇ〜〜何?」

「えと、友達と買い物でしょ、勉強でしょ、それから・・・好きな人に告白したい!」


少女は照れて言った。


「・・・好きな子いるんだ?」

「うん!クラスメイト。すっごく好きなんだ!」


翔太はキラキラしている少女を眩しそうに見つめていた。


「その子・・・他に好きな人がいたら?」

「あ〜〜〜そーだなぁ」


腕を組んでう〜〜んと考えている。でもぱっと顔を上げて、


「好きな人いてもいい!好きなんだからちゃんと言いたい!」


そう言って、白い歯でにかっと少女は笑った。

そっか・・・。ただ「好き」なんだから、それが自然だ。

俺・・・まだ何もやってない。


翔太は無意識に笑みがこぼれていた。


「ありがとう・・・。」

「?」

「ところでさぁ〜お兄ちゃんも早く言った方がいいよ!」

「え?」

「あの看護婦さんに!」

「――――っ!!」(ば、ばれてる〜〜〜!!)


翔太はやっと長いトンネルから出たように、清々しい顔で青い空を見上げた。



******************



それから翔太は、自分のことに必死で彼女のことをちゃんと見れて

なかったことに気がついた。


(何か・・・元気ない?)


「黒沼さん・・・。」


シーツを取り替えてくれている彼女に声を掛ける。


「はい?」

「何か・・・あった?」

「え?」


彼女は俺をじっと見る。何か言いたそうに・・・・。


「い、いえ。何にもないです」

「・・・・・・。」


あれから爽子は心の中に引っ掛かっている何かをずっと探し続けていた。


(自分で自分のことが分からないなんて・・・・)


それもそのはずであった。爽子は”恋”という感情を知らなかった。

市東しか知らなかったからだ。

でも、翔太といる時の胸の高鳴りは、明らかに市東といる時には感じられ

ないものだった。”初めての気持ち”

確実に、爽子の中で新たな感情が芽生え始めていた。









あとがき↓

爽子は市東に小さい時から囲われていた感覚!?な話にしてみました。なので
市東に洗脳されてきたというか、常に爽子の横には市東がいたので恋すること
もなかったのですね。爽子が誰かを好きになる前に結婚して自分のものに!と
考えた市東ですが、時すでに遅かった!(笑)さて、市東とはどんな人間なの
か?それもお話の中に入れていきたいと思います。また遊びに来て下さ〜い♪

「Oh My Angel」 10 へ