「Half moon」(14)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。
爽子と風早は仙台デートをしていた同じ時、仙台に来ていた光平は久々に
仲間達と飲み会を楽しんでいた。
こちらはHalf moon         10 11 12 13 の続きです。
それではどうぞ↓















爽子と時を同じくして、光平は仙台にいた。

光平が里帰りしたと知った友人たちは早速飲み会を開いていた。この日は久々の

再会を祝してという名目でいつもよりランクアップの店に集まることになった。


「光平〜〜〜痩せたんじゃない?」

「苦労してるからさ〜〜」

「冗談よ!!」


わははは〜〜〜


光平が地元を離れて3ヶ月、たった3ヶ月という短い期間なのに長い期間会って

なかったような懐かしさをお互い感じていた。5人が集まるのは久々だ。

それぞれが今の近況報告をし、話題はやはり仕事の話になる。太陽が仕事の話を

していると、沙穂が周りをキョロキョロと見渡して蓮に言った。


「今日、風早は来れなかったの?」

「用事があるって」

「あ・・・そうなんだ」


明らかに落胆した様子の沙穂を見て、光平は言った。


「皆が言う、”風早”に会いたかったな」

「いい奴なんだよ!!男の俺から見ても爽やかでさ」

「太陽に爽やかって言われてもなぁ〜〜〜」

「コノヤロッー!」


あははは〜〜〜〜〜っ


太陽の言ったことを受ける光平の風景はいつも、この場を明るくしていた。

皆、懐かしい光景に光平が帰ってきたことを実感した。


「・・・やっぱり光平がいないと寂しいよ」


素直な太陽の言葉に、皆、頷いていた。


「おかえり、光平」「「おかえり〜〜」」

「うわあ〜〜〜!!ヤメローッ」


髪をぐしゃぐしゃっとされ、皆の歓迎を受ける。そんな中、光平はちらっと

昌を見た。


「昌も元気か?」


突然、視線を送られた昌は少し躊躇した後、嬉しそうに言った。


「もち元気よ〜〜!どう?さらにファッションセンスが磨かれたと思わない?」

「うん。マジで。男がほっておかないよ」


光平は優しく笑って言った。光平にとって昌はもっとも心許せる女友達だ。

いつも通り自分の言葉を受けて、軽く笑い飛ばしてくれると思った光平は少しの

間を感じた。


(ん?あれ?)


「?」

「・・・まっね〜〜!モッテモテで困るわ」


わははは〜〜〜っ


そう言って、昌はいつも通り大笑いをしていた。


(なんだったんだ?今の間は)


光平はその時、少しの違和感を感じたが特に気にしなかった。人は必ず変わって

いく。会わない期間が長くなればその変化は大きく感じるだろう。自分は変わっ

ているのだろうか?これから変わっていくのだろうか。


光平は今までの3ヶ月を振りかえり、がむしゃらに仕事をしていた自分を頭に

思い浮かべた。すでに自分の居場所は北海道になっていることに気付く。

家族や皆に会えて嬉しい。故郷に帰ってほっとする。でも、帰るところは北海道

だ。まだ3ヶ月なのにどうしてこんな気持ちになるんだろう。


そんな光平の様子を、優しい目で見守っている蓮と目が合った。


「蓮・・・・元気か?」

「ああ。なんとかやってるよ。光平は?」

「うん。上司に怒られながらなんとか」


お互いぷっと笑い合った。


会社の話をしていると、ふっと彼女が頭に浮かんだ。


”今、何をしているんだろう。”


光平は仙台に来てもなお、脳裏に浮かぶ黒沼爽子に驚いた。最近、ふとした瞬間

に思い出しているような気がする。いつの間にか自分の中に住みついている彼女

に戸惑う。光平は思わず俯いた。


そんな光平の様子をじっと見ていた蓮は少し口角を上げて言った。


「・・・なんか、楽しそうだな」

「!」


自分がトリップしていたことに気付いた光平は何もなかったように目の前の

ビールをぐいっと飲んで言った。


「えっなにが?」

「ん〜〜〜なんとなく?」


蓮の鋭い視線に思わず目を逸らす。


(蓮って全て見透かされそうで怖いんだよな・・・・)



「!」


その時だった。光平は店の戸口の方を見て大きく目を見開いた。身動き一つせず

戸口近くを凝視していた。



「光平?」


昌は光平が一点を見つめて動かなくなっているのに気付いて声を掛けた。すると、

光平はいきなり立ちあがり、戸口に向かって歩き始めた。一同はそんな光平の姿

をただ呆然と見送った。

光平は吸い込まれるようにそこに向かって歩いていた。まるで全身の意識がそこ

に注がれるように・・・・。



「― 黒沼さん!?」

「え?」


名前を呼ばれ、後ろを向いていた人物が驚いたように振り返った。黒い長い髪が

さらっと揺れる。そこにいたのは、今、頭に浮かんだ人物・・・。そして最近、

自分の中に住みついては離れない人物・・・・・。そう、黒沼爽子だった。


信じられない。こんな偶然あるのだろうか。

金曜日の昼から会えないと思っていた彼女が今、目の前にいた。


「な、なんで??」

「た・・・田口くん??」


思わず自分の声が上ずっているのが分かった。押さえられないほど興奮していたらしい。

その時、分かった。仲間や家族に会えたことは嬉しい。地元に帰ってほっとする。けど

向こうに帰りたくなるのはなぜか・・・。それは・・・・・。

光平は爽子の顔をじっと見つめた。


その時だった、知らない男の声が背後からした。


「俺の彼女に何か用ですか?」


その男は明らかに敵対心をむき出しにしてこちらを睨んでいた。

え・・・・?彼女??


「あれっ!?風早ー?」


後ろから仲間達が駆け寄ってきた。か・・・ぜはや?え・・・・あの?


「・・・・・」


俺と、彼女と、風早と仲間達はしばらくその場に立ちつくした。







あとがき↓

久々の更新です。爽子と風早のデートの続き。いよいよ全員キャラご対面
でした。さてここから絡み合ってくるのですが、なるべくドロドロにした
くないと思いながらも爽やかにもできないし・・・自然にまかせます(笑)
しばらくこちらを更新予定?それではまた遊びに来てください。

Half moon 15