「Half moon」(39)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。

今まで知らなかった沙穂の事情や蓮のことを偶然知ってしまった爽子は!?
こちらはHalf moon         10 11 12 13 14 15 16 17  18  19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29  30 31  32 33 34 35 36 37  38 の続きです。
それではどうぞ↓



















しばらく沙穂は爽子を見ていた。何の言葉も交わさず。そしてはっとしたようにベッドの方に

目を向けた。


「あ・・・・・!」

「美穂!」


先ほどまで眠っていた美穂が大きな目をぱちくりとして起き上がった。周りをくるりと見渡す。

蓮は不思議そうな顔をしている美穂の側に行くと、手をぎゅっと握った。


「れん・・・!」


美穂は蓮を見つけると、嬉しそうにふんわりと笑った。まるで少女のように。


「・・・・ごめんな。ずいぶん長いこと会いに行かなくて」


美穂は蓮の目を見つめてにっこりとまた嬉しそうに笑った。


「だから・・・怒ってもいいんだって・・・・」


手を握りながら肩を震わせている蓮を美穂はしばらく不思議そうに見た後、ぎゅっと抱き

しめた。そんな美穂に蓮は声を殺して泣いているように見えた。


沙穂の母は”良かった・・・”と泣き崩れている。かなり探していたのだろうと思われる程、

髪は乱れて、顔はやつれているように見えた。


爽子は蓮の特別な人が美穂だと分かった。こんな蓮を見るのは初めてだったから。


目の前の蓮や母の姿を見て、爽子はあふれてくる涙を必死で押さえた。


(だ・・・だめ、私が泣いちゃ・・・)


「・・・黒沼さん?大丈夫?」


光平が爽子の様子に気づき、声を掛けると、”私の事はお構いなく!”と手をぶんぶんと

振って後ろに下がった。そして、沙穂と目が合った爽子は、身内に全く関係ない自分が

ここに居てはいけないと思い、沙穂に会釈して言った。


「あの・・・それじゃ私、そろそろ・・・」


すると、そんな爽子に気付いた沙穂の母が、涙を拭って言った。


「あ・・・ありがとうございました。改めてお礼をしたいので・・・」

「お母さん!大丈夫・・・この人私の友人なの」

「え!?」


母は驚いた顔をした後、”それじゃ、また改めて”と沙穂に合図を送った。


「あの・・・お構いなく・・・それじゃ」

「・・・どこいくの?」


ドアノブに爽子が手を掛けた時、後ろからかわいい声がした。その声は美穂だった。美穂は

哀しそうな顔をして爽子を見つめた。


「もう、行っちゃうの?わたし・・・遊びたいな」

「え・・・・」


そう言って、美穂は爽子にすがるような目をした。蓮はしばらく呆気に取られた後、美穂に

優しく”彼女はもう帰らないと行けないんだ”と諭した。爽子は残念そうにしている美穂に

後ろ髪を引かれる思いだったが、勢いよく頭をペコっと下げ、病室を後にした。

光平も爽子と一緒に病室を出た。


かちゃ


ドアを閉め、しばらく歩くと、沙穂が病室から出てきて、”待って!”と二人を引きとめた。


「今日は・・・本当にありがとう。長い時間付き合わせたみたいで・・・」

「い、いえ、何のお役にも立てませんで・・・」


沙穂は、病室の前で二人に頭を下げた。そして、哀しそうな目をして病室を見ながら言った。


「事故に遭ってから、あの人、7歳ぐらいの子供に戻ってしまって・・・」


光平は身動き一つせず、沙穂の言葉を聞いていた。


美穂さんはまるで本当にフランス人形のようにきれかった。そして、まるで子供のように・・・・

天使のように・・・笑っていた。さっき感じた違和感はそれだったのだ。


「・・・分かったでしょ。メンタルな部分だから。光平も・・・ごめんね。今まで言えなくて。

 うちの母が受け入れられなくてね。世間体を大事にする人だから」


沙穂はしばらく爽子を見つめた後、意を決したような目で言った。


「こんなに付き合わせて、言いにくいんだけど・・・・この事、風早に言わないでもらって

 いい?」

「・・・・・!」

「まだ・・・私たち家族は受け入れられてないの」


爽子と沙穂は長い間見つめ合った。沙穂の哀しい目が爽子の胸に突き刺さる。爽子は沙穂の

心を思うと、たまらなくなった。


沙穂はしばらく爽子を見た後、光平に視線を移した。


「・・・だから光平も・・・」

「・・・・・・」


そう言って無理に笑顔を作ろうとしている沙穂を見て、爽子と光平は何も言えず俯いた。

そして爽子はぎゅっと拳を握りしめた後、決心したように顔を上げた。


「・・・誰にも言いません」


爽子が真っ直ぐ沙穂を見て言うと、沙穂はほっとした表情をした。そして、光平の方を見ると、

光平も頷いた。


「・・・私達だって分かってるのよ。こんなことしてたらダメだって。でも心のどこかで

 信じてるの。またきっと元に戻るって・・・」


沙穂は軽く会釈して二人を見送った。


病院から脱走したのは初めてだったそうだ。どうして美穂さんは外に出たのだろう。それは

美穂さんの冒険だったのだろうか?塀の外にはきっと新しい世界があるってそう思ったの

かもしれない。


二人は重い足取りで病院を後にした。何も言葉を交わさず、ただ道を歩いていた。










あとがき↓

これからもっと色々明らかになっていく予定!?面白くなかったらスル―して下さいませ(汗)
最近、ある二次サイト様の別マ11月号感想を見ました。もう、感動しちゃって・・・・うるっ
こんなこと書いてもよく分からないですよね。ネタばれとかになるので何も書きませんが、と
にかく君届という作品の深さを改めて感じて、自分がどうしてここまでこの作品にハマったか
分かったような気がしました。いや〜〜〜この漫画に出会ってよかったと改めて思いました。
”萌え”以外に君届に感じることはやっぱりヒューマンドラマだと。そのサイト様の解釈はい
つも私の頭をすっきりさせてくれるのですが、今回は特に衝撃を受けました。わけの分からな
いことを言ってすみませんでした!!それでは多分、また明日に〜〜〜〜!

Half moon 40