「ある夏の日の・・・」Part2


短編です。同じ場面ですが、少し違う風早という2パターンの話。
二人は高校生、電車通学、片想いという設定である一場面の話です。
今度は爽子目線。風早がちょっと黒い感じです。強引な風早のつもりがナゼ!?


それでは以下からどうぞ↓












夏の日差しに照らされて、若い男女は開放的になっていく。男女とも夏服になり

お互い意識しているのが分かる。


「俺、夏好きだなぁ〜〜〜っ!!」


ジョーは周りをきょろきょろさせながら言う。


「だって、女の子の肌の露出が・・・ムフフ」


ジョーを呆れ気味に見ていた風早だが、遠くを歩いている女子達に気付き、そこに視線

が釘付けになった。それは千鶴とあやね、そして爽子の姿だった。


「おっ矢野だぁ!!色っぽいよなぁ〜〜〜っ」

「・・・・・・」


ジョーもクラスメイトを遠目に捉え、浮かれたように叫んだ。

風早はせつなそうな目をして、遠目に爽子を見ていた。


一方爽子も風早に気付き、頬を赤くした。

今日もクラスメイトと楽しそうに笑っている。その爽やかな笑顔を見ているだけで

幸せになれる。


想いは同じだということにまだ気付いてない二人。


***********



この日、花壇の植え替えをしてた爽子は帰りが遅くなり、突然の雨に降られて慌てて

駅に向かった。爽子は電車通学をしていた。

折りたたみ傘を持って来ていたのだが、突然、バケツをひっくり返したような雨が降り、

カバンから出す間にびしょ濡れになってしまった。


(うわ・・・・・どうしよう!!オカルトになっているのでは!?)


爽子は、必死で髪や服を拭いていると、ふっと目線の先にいる人物を見つけ、どくんっと

心臓がとび跳ねた。


(あ・・・・っ)


「く・・・ろぬま?」


風早も爽子を見つけると、爽やかな笑顔でこちらに向かって走ってきた。


「黒沼!!」

「か・・・風早くん!」


爽子は予想していなかった展開に心臓の音はどんどん加速して行った。


「黒沼も雨に降られたんだ?」

「う、うん。風早くんも・・・」

「もう、びっしょびしょ!!」


あはは〜〜〜〜っ


爽子は、相変わらず水に濡れても爽やかな風早をぼーっとした表情で見とれていた。


「・・・・・・・」


ドクンッ


すると、風早もじっとこちらを見ていることに気付いた。また心臓がとび跳ねる。


「これ、掛けて!」


風早はそう言うと、爽子にタオルを掛けた。


「えっ、えっ・・・大丈夫だよ。風早くんも風邪引くから」


必死に抵抗している爽子に、風早はそっと爽子の耳元で呟いた。


「・・・ダメ」


風早はそう言ったかと思うと、もう一度タオルを爽子の胸元で整え、恥ずかしそうに

プイッと横を向いた。

意味が分からない爽子は、キョトンとした表情で自分の胸の部分に目線を落とすと、

”あぁ〜〜〜!!”と訳の分からない声を上げ、固まってしまった。

下着が透けていることに気付いた。


「す、すみません!!お目を汚してしまい・・・・」


爽子は恥ずかしさから風早を見れないでいた。風早はその言葉に対する返事はせず、

”行こ”と前を向いたまま、ホームに向かって歩き出した。


(ど・・・どうしよう。恥ずかしい・・・・)


二人の間に流れる微妙な空気。


**********


雨の影響で電車が遅れていて、二人は満員電車に乗らなければならなかった。

帰る方向が一緒で二人はこうして時々、登下校が一緒になることがあった。


電車は左右に揺れ、まるで押しくらまんじゅうのように人の支えで立っている状態だ。

車内はクーラーがかかっているが、人の多さに空気がじめっとしていて暑い。


「うわっ!!黒沼大丈夫?」


風早は爽子の手を引っ張って、自分の方に寄せた。付き合っていない二人が密着すること

などまずないこと。でも満員電車ではそうも言ってられない。


電車の揺れと共に人の密着度も上がる。風早は他の男に触らせるものかと必死で爽子を角へ

持って行った。背の高い風早は手を扉に付き、その中に爽子を収めることができた。


あまりの近い距離に爽子は顔がどんどん紅潮していった。


(うわっ・・・どうしよう/////)


ドクン


そして、気のせいかもしれないが、風早がこちらを見ている気がした。

爽子がそっと風早を見上げる。


「・・・・・」

「・・・・・」


(あ・・・やっぱり/////)


お互い見つめ合う。


「か、風早くん・・・・//////」

「ん?」

「だ、大丈夫??」

「ん?何が?」

「きついんじゃないかな・・・その場所」


混雑の車内の中、必死でスペースを作ってくれようとしている風早に気付いて、爽子は

申し訳なさそうに言った。近い距離にいる二人は吐息さえ、かかりそうだ。


「・・・黒沼が他の男に触られるよりずっといい」

「・・・え?」


爽子は風早の熱い目から視線を離せなかった。

その時、電車は大きく左右に揺れて、車内でも大きな声が上がった。風早は必死で爽子を守り、

そのため二人の密着度も高まった。二人は抱き合った状態のまま、身動きが取れなくなった。


「・・・・・・」


風早の腕の中で爽子は自分の心臓の音だけがやたらと聞こえ、ものすごく恥ずかしくなった。


ドキン、ドキン


「・・・・目を汚すなんて、そんなことあり得ないよ」

「え・・・」


いきなり耳元で呟くように話し出した風早の言葉に、爽子は意味が分からず聞き返した。


「むしろ、その逆」

「・・・?」


爽子はまだ意味が分からず、きょとんとしていた。そんな爽子を熱い目で見つめる風早。


「・・・俺が隠したいから」


ぎゅっ


そう言って、風早は爽子を隠すように抱きしめた。爽子は初めて密着する男の肌に、ただ

恥ずかしくて、真っ赤になって抱きしめられていた。風早が故意にしているとも気づかずに・・・。


爽子は恥ずかしさのあまり、早く自分の駅に着いて欲しかった。


ドキン、ドキン


(・・・なんか、今日の風早くん、いつもと違うみたい・・・)


爽子はこの時、風早に男性を感じたことに気付いていない。ただ、いつもと違う優しいだけ

ではない風早にドキドキが止まらなかった。

見上げると、真剣な表情の風早がずっと自分を見ていた。


(ぎゃ〜〜〜もう見れない!!////)


爽子が”憧れ”から”恋”を自覚するのは後少し・・・・。


そんな夏のある日の出来事。





<END>








あとがき↓

なんか違うんだな〜〜〜なんて表現したかったことが書けずジレンマでした。まいっか。
ところで・・・昨日の話に感想頂いたA様のコメを読ませて頂いて、ケントバージョンを一気に
書いてしまいました。明日・・・・UPしていいすっか?(いつまで引きずるんだ!!って言われそう)
いやぁ、書きたくなっちゃって。それで書いたらそれがまた違ったものになっちゃって。
すみません、その後本筋に戻りますんで。ところで、アニメ君に届けのDVD特典来ました。
また画像UPしますね。カルピン先生描き下ろし、素敵でした♪

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