「Half moon」(45)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。

風早が仕事の間、内緒で美穂の見舞いに行った爽子だが・・・・?
こちらはHalf moon         10 11 12 13 14 15 16 17  18  19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29  30 31  32 33 34 35 36 37  38 39 40 41  42 43  44 の続きです。
それではどうぞ↓



















爽子は美穂と一緒に遊んでいると本当に楽しかった。美穂のやることなすことを新鮮に受け

止めては感動していた。そしてなにより目の前の美少女に魅せられていた。沙穂の姉なのだ

から”少女”という年ではないのだが、そこにいるのは”少女”だった。

母はその様子を複雑そうに見ながら、爽子に言った。


「爽子さん、まだ大丈夫なの?」

「あっ・・・もう少し大丈夫です」

「それじゃ、ちょっとだけ買い物行かせてもらっていいかしら?病院内だから私達がいなく

 なっても大丈夫なんですけど、美穂がかわいそうだから・・・」

「はいっ!大丈夫です。美穂さんと遊んでいます!」

「助かります・・・ありがとう」


沙穂の母は嬉しそうに微笑んだ。実際、爽子が”帰る”という言葉に反応して美穂は爽子の

服をぎゅっと掴んで離さなかった。美穂は初めてできた友達におおはしゃぎしていた。爽子

も美穂と遊んでいると楽しくて時間が過ぎていくのに気付かなかった。

その時、爽子の携帯が鳴った。


「さわこちゃん、なんか音がするね」

「あっ・・・うん、ちょっとごめんね。」


慌てて、爽子は携帯を取り出した。


(あっ・・・風早くん!)


爽子の頬がぽっと赤くなった。美穂はその様子を不思議そうに見る。


「か、風早くん!?」

『爽子』

「う、うん」

『・・待たせてごめんなっ。仕事終わったからすぐ帰る!』

「急がなくいいよっ」

『・・・俺が早く会いたいの!』

「///////」

『/////そ、それで今どこ?家?』

「あっその・・・・あのね・・・っ!!」


その時、じっと見ていた美穂がぱっと爽子の携帯を取り上げた。


『――爽子!?』


「えっ??美穂さん、どうしたの!?携帯返して・・・」


爽子は訳が分からず携帯を取り返そうと手を伸ばすと、美穂は携帯を持ったまま、病室の外に

走りだしてしまった。美穂は無意識で携帯の通話OFFボタンを押していた。


必死で後を追いかける爽子。軽やかに走る美穂。全然追いつけなかった。そして前から美穂の

母親が買い物から帰ってきた。


「あぁ〜〜〜〜っ!!すみません!!美穂さんが!」

「―え!?」


慌てて、母は買い物袋を下にバサッと置き、美穂を追いかけた。病院から外に出られるわけが

ないはずなのに、美穂を見失ってしまった。病院内でも放送をかけてもらうが、何の情報も得

られず、真っ青になった母と爽子は一瞬の出来事に、激しく呼吸しながら呆然とその場に立ち

つくした。



***********



「・・・・すみません」


頭を90度に下げたまま顔を上げない爽子に母は何の反応もせず、パニック状態になっていた。


「美穂!美穂!どこ行ったの!?私のところからどうしていなくなるの?」

「・・・・・」

「まだ外に出れる身体じゃないのに・・・・!!きっと倒れてるわ〜」


大声を上げる母を目の前に、爽子はショックを隠せなかった。真っ青になって、ぷるぷる

震えて立っていた。なぜこんなことになったんだろう・・・!?


その時だった。担当看護師がこちらに向かって走ってきた。


「秋山さん!!分かりましたよ!!」

「−えっ!?」


看護師の言葉に二人は目をまん丸くした。

どうも、この病院には抜け穴のような場所があって、ある精神病の患者が作ったということが

患者の情報から分かった。どうも美穂は前回もそこから外へ飛び出したようだ。


「以前もおかしいと思ったんです。どうして抜け出せたのか?すぐに警察に連絡入れます」


看護師の言葉に母は怒りを露わにした。


「・・・どうして!!そんなことが起こるの??また同じことが起こるなんてありえない!!

 病院を訴えますよ!」

「秋山さん、落ち着いて!!それよりはまず、娘さんの行方を・・」


母は発狂寸前だった。爽子は頭に沙穂の言葉が浮かんだ。


”まだ母が受け入れられてなくて” ”世間体を大切にする母だから”  


爽子は拳をぎゅっと握った。


「――とにかく、捜しに行きます!!」


言ったと同時に爽子は走り出していた。


(・・・どうしよう!!どうしよう!!私のせいだ・・・・)


爽子は今にも溢れだしそうになる涙をぎゅっと閉じ込めた。そして頼りたくなる存在を頭から

かき消した。


(しっかりしなきゃ・・・・!!)


爽子は一心不乱に仙台の街を駆け回った。右も左も分からない仙台の街を・・・・。

その時、爽子の頭の中には美穂を捜すことしかなかった。










あとがき↓

はい、ベタな展開ですみません。沙穂の家庭背景が段々出てきます。しかしっ今日は

寒いですねぇ〜〜!皆さま体調を崩したりしませんように!!また明日!それではまた

遊びに来て下さい〜〜〜♪

Half moon 46