「Half moon」(70)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。

風早が蓮と会っている時、北海道の爽子は・・・?

こちらはHalf moon          10 11 12 13 14 15 16 17  18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29  30 31  32 33 34 35 36 37  38 39   40 41  42 43  44 45 46 47 48 49  50 51  52 53  54 55 56 57 58 59  60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 の続きです。
それではどうぞ↓


























*************



北海道――



”『・・・ごめんっ』”


彼のあの言葉を聞いたとき、淡い期待はまるで泡のように消えていった。

振り絞るような声。あの続きを聞く勇気がなかった。弱い自分。


これ以上、彼を苦しめたくなかった。もし、みんなが言う”彼女”という立場が彼を苦しめて

いるとしたら・・・たまらなかった。


”『・・・別れよう』”


精一杯言葉にした。彼が自分の人生からいなくなることが別れだとすると、自分の人生の

半分がなくなったような気がした。


いや・・・違う。苦しめたくなかったなんて言い訳だ・・・。私がこれ以上、傷つきたくなかった

だけ。ただ・・・怖かっただけ。



光平を迎えての同期会の途中にかかってきた電話。爽子は1ヶ月半ぶりに携帯に表示され

た”風早翔太”の文字に動揺した。そして早くなる心拍数と共にどんどん気持ちがネガティブ

になっていくのを感じた。


”上手く話せるだろうか・・・”


そして発してしまった言葉。心に浮かんだこともない、今まで想像したこともない言葉・・・・。


”『・・ごめんね・・・別れよう』”


北海道に帰ってから、ずっと”見ないふり”をしていた感情が思わずあふれ出しそうになった。

でも必死でブレーキをかける。もしその感情を出してしまったら、自分がどうなるのか分から

なかった。あまりにも怖かった。その先の自分を見ることが・・・。



ずっと一緒にいたかった。ただ彼がいるだけで色がついたみたいに輝き出した世界。そして

5年という長い間ずっと褪せない変わらず輝いていた世界。それはお互いが同じ気持ちで

いられたから・・・。



爽子はぽっかりと空いた穴を埋めることはできなかった。毎日自分のなすべきことがあって、

前に進んでいた以前とは違う自分。どうやって進めばいいのかもう、分からなかった。



* * *


月曜日――


光平はあれからずっと爽子を気にしていた。


「ちょっとだぐっちゃん〜またストーキング?」

「え??」


友香の言葉にはっとしたように現実に戻る。今は食事中だった。皆と楽しそうに話してい

る爽子をずっと見ていることに気づいた。


「・・・だってさすがに気になるだろ。あの飲み会の途中でいなくなったら・・・」

「あ〜〜〜そうなんだってねっ!後から聞いた。ごめんねぇ〜またやっちゃって・・・」


友香はそう言うと思いっきり頭を下げた。結局、酔った友香を隣にいた光平が家まで送る

ことになったのだ。


「私も・・・気になるよ。今までずっと気になってたけど、もう明らかに変だよ」

「・・・・」


風早と何かがあったのはもう明らかだった。彼女を救えないのだろうか・・・。



”「でも・・・爽子を傷つけることがあったら・・・」”


光平はあの時の風早の目を思い出した。傷つける?俺じゃない。今、彼女を傷つけている

のは・・・風早だ。


「全部自分で溜め込んでさ・・・どうして何も言ってくれないんだろう。」

「・・・・・・」


光平は真剣に爽子のことを考えている友香をせつなそうに見た後、爽子に視線を向けた。


(あ・・・・)


その時、彼女が立ち上がった。


「たぐちゃん?どうした?」

「・・・・・。」


がたんっ


光平はすくっと立ち上がると爽子を追いかけた。表情が・・・あまりにも・・・!

もう周りなんて関係ない。ただ目の前の彼女を救いたいと思った。光平は一心不乱に

爽子を追いかけた。


「はぁ・・・はぁっ・・黒沼さん」

「!」


給湯室で彼女を捕まえる。振り向いた彼女は目に涙を溜めていた。


「・・・っつ田口くんっ・・・あっ」



どくんっ


彼女は俺の姿を確認すると、目に溜めた涙を見られないようにさっと俯いた。そこにいる

彼女の姿はあまりにも儚げで、今にも消えそうだった。


俺は泣いてる彼女から目を離せなかった。心臓の音がリアルに聞こえてくる。


どくん、どくん


光平はそのまま立ち去ろうと背中を向けた爽子の手首をぎゅっと握った。そして後ろから

思いのまま抱きしめた。


ぎゅっ


「た・・・田口くんっ!?」

「・・・俺じゃだめ?」

「・・・っ!」


爽子の目には必死に堪えていた涙が浮かび上がっては、ぽとぽとっと下に落ちていく。

光平はもう押さえられなかった。これほど華奢な身体で壊れそうな心を必死で保っている

彼女をただ守りたいと思った。


光平は懇願するように目をぎゅっと瞑ったまま手に力を込めた。


「俺なら・・・俺なら絶対泣かせない。こんな風に君を泣かせない」


遠くにいる風早より近くにいる自分が守りたい。心の中でそう呟いていた。


震えていた爽子の体が止まった。光平はそっと爽子から自分の身体を離すとゆっくりと前

を向かせた。爽子は驚いた表情で大きい瞳を揺らしながら光平を見上げた。

光平は吸い込まれるように爽子のきれいな瞳を熱い目で見つめる。二人の間に沈黙が走った。


どくん、どくん


もう後には引けない。・・・引かない。



「・・・好きなんだ。ずっと・・・君に会った時から」



爽子は光平を瞬き一つせず見つめた。



**********




「―爽ちゃん」

「友香ちゃん!!・・・帰ったんじゃなかったの?」


俯いたまま考え込むように会社から出てきた爽子は友香の姿に驚いたように駆け寄った。

先に仕事を終えた友香は外で待ち伏をしていたのだ。もう辺りは真っ暗だった。


「ううん・・・二人になれるの待ってたの」

「友香ちゃん・・・」


爽子は深刻な表情の友香をまじまじと見つめた。


「ちょっと・・・見すぎだから爽ちゃん」

「あっ・・・ご、ごめんなさいぃぃっ!」


爽子はあわあわと友香に頭を下げた。友香が今までと違う雰囲気で自分を待っていること

に焦っていた。自分は何か失礼なことをしたのではないかと・・・・。正直、最近の自分には

自信がない。


(怖がらせてしまった・・・)


そんな表情の冴えない爽子を見ながら、友香はため息をついた。


「・・・結局、何も分かってないのかもね。私。爽ちゃんのこと・・・」

「え・・・?」

「ちょっと今から時間ある?」


友香はそう言うと、爽子を見てにっこりといつもの笑顔で微笑んだ。












あとがき↓

昨日は沢山の拍手をありがとうございます。すごく嬉しかったです〜。これからも頑張ります(* ̄ー ̄*)
(69)のコメ返し、拍手コメントのお返事はもう少し後になりますが、必ずしますのでもうしばらくお待ちく
ださい。いつも一生懸命に気持ちを届けてくださってありがとうございます。
やはり拍手コメントの方が書きやすい方もいらっしゃるみたいなので、その方々にも是非感想を頂けた
らと思いますので、5話間隔で拍手ボタンを入れていこうかと思います。もし、レスの時にHNを隠して
欲しい方がいらっしゃるならその旨をお書きください。このブログはメルフォもないしメンタルな部分が
使えない・・・。そういうわけで75話から入れますね。よろしければ疑問・感想、どんと下さい!!
そしてこの話、仙台、北海道と場面がいろいろ交差しながら進んでいきます。ややこしいですが、同時
進行したいので、分かりにくければ教えてください。今度は光平のジャマしなかったですからね(笑)
しかし抱きつきすぎだ!!光平っ!爽ちゃんに触れるな〜〜〜。なんてね。
それではまた遊びに来てください〜〜!あっアニメ・・・やばいっすね!( ^ω^)

Half moon 71